恋の思い出
オリーブを食べながら恋が、俺に話し出す。
「紗綾が、何度も来た話しはしたよね?」
「ああ」
そう言って、恋は寂しそうに目を伏せる。
「来る度に、抱いてってせがむの」
「うん」
「私は、絶対に家にいれないって決めてた」
「うん」
「なのにね、昨日みたいな雨の日に紗綾が、また現れたの」
「うん」
そう言って、恋はあの日を思い出しながら話し出す。俺は、目を閉じて、それを想像しながら聞いた。
恋の話ー
ザアー、降りしきる雨が強くなってるのを感じていた。
家に帰ると、ずぶ濡れの人がしゃがんでいた。
気にせずに鍵をあける。
ヒールの中の濡れたストッキングを一刻も早く私は、脱ぎたかったのだ。
「いれて」
そう言って、ヒヤッとした手に掴まれた。
「無理」
「明日、熱出て仕事出来なくてもいいって意味?」
その言葉に、逆らえずに私は部屋にいれてしまった。
入った瞬間に、この一週間を埋めるようなキスをされた。
唇が氷のように冷たい。
「やめて」
私は、どうにか振り払った。
玄関に鞄を投げ捨てて、洗面所に行く。
ストッキングを脱ぎ、お風呂のスイッチを押した。
タオルを持って、玄関のその人に渡した。
「はい、お風呂はいって。仕事いけないとか、面倒だから」
冷たくいい放ったの私の腕を引き寄せてくる。
玄関の靴箱に体を押し付けられる。
棚の上のものが、暴れた拍子に床に落ちていく。
「やめて」
「やめない」
そう言って、彼女に首筋を舐められた。
「ヤッ」
冷たい体に温かい舌をつけられて思わず私は声をあげた。
「恋の好きなとこは、全部知ってる」
そう言って、コートのボタンをはずされる。
「やめて」
(お風呂が沸きました)とアナウンスが聞こえて彼女から離れる。
ダウンジャケットの中に着ているパーカーを目深にかぶった隙間から見える目に、愛しさが
洗面所に向かった彼女を見て、玄関に膝から崩れ落ちた。
ああ、私はどうしようもないぐらい
玄関の鞄をとって、私は、部屋に入った。
ベッドの下に、座り込んでコートを脱いだ。
さっきの紗綾にされたキスと首筋の舌を思い出したら、涙が止まらなくなった。
紗綾とずっと一緒にいたい。
愛してるや好きなんて言葉じゃ足りない。どう表現したらいいか、足りない頭ではよくわからなかった。
止めたくても止められない涙。
真っ暗な部屋で、一人泣いていた。
ガチャ…
部屋の扉が開いた。
「恋」
バスタオル一枚に身を包んだ紗綾が現れた。
紗綾が電気をつけるのを止める。
「やめて、こないで」
私の部屋のドアを閉めてくれた。
紗綾は、手探りで私に近づいて、頬に触れてくる。
「恋、泣いてるの?」
「泣いていない」
「嘘」
そう言って、唇を重ねられた。
もう、止めようがなかった。
愛してるから、拒めなかった。
唇を吸われ、舌をいれられただけで私の下半身が濡れていくのがわかった。
「んんっ」
ブラウスのボタンをはずされていく。
重なりあった掌も唇も足も胸も、愛しさで張り裂けそうだった。
「私は、どうしようもないぐらい紗綾が大好き」
全てが終わった私は、紗綾にそう話してしまっていた。
現在ー
恋の話が終わり、俺はゆっくりと目を開ける。
「だから、雨の日の一人はもっと嫌なの」
恋が、俺を見て笑った。
同じ傷がついてるのがわかった。
「女の子を好きになったのは、いつ?」
「気づいたのは、16歳の時。ほら、みんなでそういうDVDを見てたの。目を奪われるのが、女性だと気づいた。後、当時付き合ってる人がいたんだけど、やってる途中で吐いたんだよね。ハハハ。汚いってふられた。飴ちゃんは、いつ気づいたの?」
そう言って、恋は苦笑いを浮かべていた。
「17の終わりに、当時20の俳優さんが俺を家に呼んで誘ってきた。なんとなく流れでキスして、なんとなく先に進めた。当時彼女がいたんだけど、彼女とするより正直よくて。両方いけるんだなって気づいた。男の方が好きな両方いけるやつになった…」
「そうなんだね」
恋は、ニコニコしながらカクテルを飲んでる。
「今日は、相手見つけなかったのか?」
「見つけてるよ」
「誰?どの人?」
「昨日の子だよー」
そう言って、恋はニコニコ笑っていた。
「お気に入りになったのか?」
「そうなの、あの子といると癒される。デリヘル嬢だって。あー、きたきた」
「じゃあ、またね」
そう言って、恋は、嬉しそうに帰って行った。
「飴さん、今日早く上がるので飲みませんか?」
顔を真っ赤に染めた京君に誘われた。
「ああ、構わないよ」
俺は、そう言って京君が終わるのを待っていた。
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