見つめる男【???】
俺は、丸い棒つきキャンディを、口にいれて転がしていた。
「へぇー。やっと見つけたか…」
「何、あんなのが趣味か?」
「うん、あいつは俺の実験台だった。マウスが、俺をいらないとか言いやがって」
「お前から、捨てたんじゃないのか?」
「捨てたよ。だけど、あいつからも言ってきた」
ガリッ…ガリッ…。
飴を噛み砕いた。
「俺は、あいつだな」
「利用するか?」
「ああ、その価値はあるだろ?売れっ子だった」
「いいねー」
俺達は、ニタニタ笑い合う。
「また、ここだったのか二人とも行くよ」
そう言われて、そいつについていく。
「あんまり、うろつかないでよ。やりにくくなる。ただでさえ、見つかりそうなんだから」
「はい、はい。兄ちゃんが、悪かったよ」
「本気で、思ってないだろ?」
看板のないビルの中に入った。
「いらっしゃいませ」
「ビールを3で」
「かしこまりました」
マスターにそう言って、俺達はソファーに座った。
「まだ、それ使ってるの?」
「文句あるのか?」
俺は、ガリガリと飴を噛み砕いてから、煙草に火をつけた。
「俺に、文句言ってるの?
「いや、僕はそんなつもりじゃないよ」
弟じゃなかったら、こいつは大嫌いだ。
だって、こいつは俺が作る、作品を否定しやがる。
「ビールです」
そう言って、お酒がやってきた。
「
「いや、遠慮しとくよ」
「そう」
俺は、煙草を灰皿に押しつけた。
「人、一人の人生を潰すなんて簡単な事だよ。俺に逆らうなら真の人生もどうなるかな?」
「真をいじめないでくれよ。ちゃんと俺から教育しとくから」
「お前が、そう言うなら今回は許してやるよ」
俺は、また煙草に火をつけた。
「暫くは、大人しくしとくよ。そっちもだろ?」
「ああ、そうだな。犬が嗅ぎ回ってるって話だしな」
「俺も、親の力借りる為にも、今は休憩だな」
真は、不服そうな顔をしている。
俺は、こいつを本気で嫌いだ。
三年前、突然俺達の関係に入り込んできやがった。
それまで、兄貴は俺に心酔しきっていたのにこいつがやってきてから揺らぎ始めた。
その危うさが足を引っ張る。
俺は、煙草の火を消した。
「犬に見つかっても、俺を売るなよ」
真を見つめて言った。
「言わないよ」
そう言って、真はビールを飲んでる。
「信じてやってくれよ。頼むよ」
兄貴は、煙草に火をつけながら言った。
「まあ、サツがやってきたら捕まるのは俺じゃなくて兄貴だからよ。わかってるか?真」
「わかってるよ」
兄貴を大好きな真は、兄貴を盾にすると俺を守ろうとしてくれる。
それだけは、信じられる。
「暫くは、俺も大人しくしてるから…。その間に、あいつに接触したいかな」
「俺も、あいつに近づいてみようかな」
やっぱり、こいつとは馬が合う。
最初から、そうだった。
俺は、ビールを飲み干した。
「もう、帰るのか?」
「ああ、暫く作品作りに没頭したいから」
「そうか、またいいのできたら教えてよ」
「ああ、わかった」
お金を置いて、店を出た。
ポケットから、棒つきキャンディを取り出す。
この丸いフォルムが好きだ。
味なんて、どうでもよかった。
暫く、誰も抱いてないな。
今は、犬がうろついてるからやめとくか。
俺は、作品に興味が会って、体の交わりには興味がない。
だから、平気で人を壊せる
だから、平気で人を追い詰めれる
そいつの人生にも、何の興味もない
それに、快楽主義者でもない。
俺の作品がどんな風になるのかを知りたいだけだ。
それを使った人間が、快楽主義者になっていくだけだ。
ガリガリと飴を砕く。
脳内にダイレクトに響くこの音が心地いい。
生きてるって実感して、ゾクゾクする。
だから俺は、肉についてる骨も噛み砕く。
食わないけど、吐き出すけどガリガリって脳内を響きわたる音が幸せなんだ。
ガリガリ…。
キャンディを食い終わった。
はぁー。暫くつまらないな。
*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*
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