まだ、いたか…

俺は、一時間半程で目が覚めてしまった。


朝飯買いに行ってやるかな。


昼までには、恋も起きるだろう。


コンビニぐらいしかないな。


時計を見るとまだ、5時半だった。


美麗は、6時にはいつも出て行ってたな。


俺は、鍵と財布を持って玄関を出た。


「飴ちゃん」


扉開けた瞬間、床に座ってた美麗を気にせずに鍵を閉めた。


「迷惑だわ、そこ座られてると」


美麗は、パーカーを目深に被って、体育座りしている。


俺はそれを無視するように歩き出す。


歩き出すと犬みたいにくっついて美麗は、歩いてくる。


5年前もそうだった。


5年前ー


「飴ちゃんってあんた?」


「誰?」


インターホンが鳴って

部屋のドアを開けたら、キラキラした笑顔を浮かべた美麗が立っていた。


「飴ー。誰?」


「知らないやつ」


「コーヒー買ってきてよ。外行くなら」


「ああ、ちょっと出るわ」


俺は、鍵を閉めて家を出た。


「邪魔」


そう言った俺の後ろを犬みたいに美麗はついてきた。


「飴ちゃん、今の彼女?」


「あっ、セフレ」


「じゃあ、恋人いないの?」


「いない」


「じゃあ、俺がなるよ」


「誰だ、お前?」


怪訝な眼差しを浮かべる俺を気にする事なく美麗は、「飴ちゃん、よろしく」と言って抱きついてきた。


それから強引に付き合いが始まった。


そして、現在ー


「ついてくんなよ、野良犬」


「飴ちゃん、何で?」


「ヒデーつらしてると、ハリーさんに怒られるぞ」


「飴ちゃん、何で?」


「お前、どんだけいるつもりストーカーか」


「飴ちゃん、何で?」


美麗は、同じ言葉を繰り返しながらついてくる。引き離すように、階段を使ってるのに必死でついてくる。


一筋縄じゃいかないか…。


「何で、何でってうざいんだけど…」


やっと、一階について俺は美麗にそう言った。


何も答えない美麗を無視して、俺は、公園の方に歩き出した。


この公園を抜けた先に、コンビニがある。


公園に入った瞬間、美麗は、俺の腕を掴んできた。


「飴ちゃん、待って」


「なんだよ、うぜーな」


「昨日の女、抱いたのか?」


「ああ」


嘘ついてたら、どっか行ってくれるかな?俺は、そう思って答えた。


「だったら、飴ちゃん。俺を抱けよ。俺の中に出せよ。俺を飴ちゃんの女にしろよ」


「朝っぱらから、何言ってんだテメーは」


俺は、はぁ?って顔をして美麗を見つめる。


「飴ちゃん、俺の中大好きだろ。いつも、褒めてくれただろ。気持ちいいって」


「気色悪いな。お前のなんかに、もう興味ねーわ」


俺の言葉に、美麗は手を離した。


「飴ちゃん、嫌だ。飴ちゃん、嫌だよ」


俺の言葉に、泣きながら崩れ落ちた美麗の顔を覗き込んで言う。


「どうしたら、諦めてくれんの?」


「飴ちゃん」


「やめろ」


キスして、こられそうになった。


俺は、美麗のキスに凄く弱い。


だから、いつもキスシーンに嫉妬してた。


だって、キスだけでそこが膨らむ事なんて初めてだったから…。


「だったら、見せてよ」


「はぁ?」


「飴ちゃんが、抱いてるの見せてくれたら諦めるよ」


「意味わかんねーよ。立て、帰れ。週刊誌に撮られると厄介だ」


俺は、美麗を無理矢理立たせて、くるりと反転させて背中を押した。


抱いてるの見せたらって、恋の話と一緒じゃないか…。


俺は、美麗を無視して歩き出した。美麗は、相変わらず俺に必死でついてくる。


公園を抜けた先のコンビニに入った。


俺は、かごを取って、美麗を無視して商品を入れていく。おにぎりと味噌汁もいるだろ、お茶とコーヒーに、サンドウィッチは食いたいから買おう。サンドウィッチを入れようとした手が止まった。辛味噌ラーメンが、何ではいってんだよ。


俺は、ラーメンを棚に戻した。


美麗は、相変わらずついてきていて、俺の持ってるかごに、また、ラーメンを入れてきた。


めんどくさいな!


俺は、お会計をして、外に出た。美麗は、先に出ていた。


「食べたいなら、やるよ」


美麗にラーメンを握りしめさせて、俺は歩いていく。


「飴ちゃん、俺以外を抱いてるとこ見せてよ」


「今日は、無理だ」


「いつならいいの?」


「また、連絡する」


「それは、いつ?」


「心の準備できたらな」


「女抱くの?」


「あの子としてるとこは、無理。昨日も言ったけど、俺は真剣なんだ。ってか、ドラマ撮影、朝からだろ?そこ座れ」


俺は、ハリーさんに連絡した。


「こっちいるんだよ。わかった。よろしく」


ハリーさんが向かうと言ってくれた。俺は、仕方ないから美麗と公園でハリーさんを待つ事にした。


京君に、頼んでみるかな


闇に落ちてると輝けるか、皮肉な仕事だな。


「飴ちゃん、最後にキスさせてくれよ」


美麗は、潤んだ目で俺を見つめて言った。


「無理だ」


「飴ちゃんが、キスで大きくならなかったらもうしないから」


「無理だ。別れて二日ならそうなるから無理」


俺は、そう言って美麗の申し出を断った。


しばらくして、ハリーさんが車から降りてくる。


「美麗、帰るぞ。ドラマだ。悪いな、飴」


「はいよ、じゃあ」


ハリーさんのは、美麗を連れて行く。美麗は項垂れて車に乗っていった。



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