条件

「それは、何だ?」


宗方は、眼鏡をあげながらおかしそうに笑っている。


「安心しなよ。美麗が、口にしたのは合法の薬物だから!」


「それで、そんな風になるのか」


「なるよ。ほうが調合する。うまく掛け合わせれば、違法薬物なんかよりも飛べるのさ。だけど、俺は作り方を知らないし。法は、誰にも教えない」


「キャラメルの効果は、どれだけあるんだ」


「そうだな。10時間は、キマってたんじゃないかな?そもそも、俺は薬物を使用しない。法も同じだ。ただ、実験はしてるよ。どれぐらい効果が持続するかどんな作用をもたらすかはね。きちんと証明してから客に売り捌く」


宗方は、また煙草に火をつけた。


「雨宮さん、俺なんか神楽法かぐらほうの足元にも及ばないよ。法の作る薬は、まさに芸術作品だよ。イチゴ食べたやつなんて、幸せで中毒さ。あらゆる五感が刺激される。アケミって歌手知ってるか?」


「今、若者に人気な歌手だろ?」


「そうそう。あいつが、生み出す音楽は中毒性があるって話。何でかわかる?イチゴやってるからだよ。アケミ」


そう言って、宗方は、煙草の煙を窓に向かって吐きながら笑っている。



「それから、最近若者から絶大な人気を手に入れ始めた美吉俊太みよししゅんた知ってるか?」


「ああ、今度美麗とドラマに出るやつだな。二十歳だったか」


「ハハハ、御愁傷様だな。あいつは、ラムネをもっと強力にしたやつにドハマりしてる。あいつは、ヤバいよ。関わるやつに売りつけて、金作ってる」


「恐ろしいもんが蔓延してるんだな。」


「持続時間は、最大でも24時間、薬物検査には引っ掛からない。それが、神楽法かぐらほうの作品だ。誰にも作れない。警察にも捕まえられない。雨宮さん、どうする?美麗をまた薬に溺れさせる?」


宗方は、心酔しきった顔をしながら、煙草を灰皿に押し付けて消している。


「どういう意味だ?」


「さっきも言ったけど、美吉に関わるなら薬させられちゃうよ。俺の条件を飲むなら、美吉に美麗を誘わせないようにできるって話」


「逮捕させるのか?」


「チッチッチッ」


右手の人差し指を左右に振ってきた。


「それは、無理。法の作品は捕まらないし、例え捕まっても法の両親がすぐに釈放しちゃうよ」


宗方は、嬉しそうに笑いながら、煙草に火をつける。ヘビースモーカーってやつなのがわかる。


「どうするんだ?」


「簡単な話だよ。美麗を誘うなって、釘をさすだけで充分。それぐらい、美吉はラムネに夢中だから…」


「ラムネを若者に流行らせてるのは、美吉か?」


「うん、あいつは売ってるんだよ。名もなき俳優達にね」


「イチゴも流行ってんのか?」


「イチゴは、流行ってないよ。あれは、五感を刺激されすぎるから、自分を持っていないないやつはイチゴに殺される」


そう言って、宗方はまた窓の外に煙をはいてる。


「条件は、3つ。一つ目は、Sの店で、働く事。二つ目は、三億稼ぐ事。三つ目は、ラムネを売る事。その三つを守らないなら、この話はなし。美麗が、ドラマにはいるまでに返事をちょうだいよ」


そう言って、宗方は灰皿に煙草を押し付けて消す。


「あー、そうそう!雨宮さんに、NOという権利はないって事は覚えておいてね」


そう言って、ニコって笑った宗方の目の奥は、一つも笑っていなかった。


「雨宮さん、俺はずっとあなたに会いたかったよ。噂は、ずっと聞いていたから。思った通りの人で、嬉しいよ」


「何で、神楽法かぐらほうに出会ったんだ?」


「いつだったかな?板チョコを持って立っていたのが神楽法だった。そのチョコレート何って聞いたら、これは作品って笑った。その笑顔にゾクゾクしたんだよ。だから、俺は法の傍にいる。お付きになったのさ」


神楽の話をするだけで、宗方の目の色が変わる。神楽に心酔しきってるのがわかる。


「お前と思考が似ていたか?」


「そうだね。レールを外れる事の出来ない感じや破滅させようとする感じが、そっくりだったよ」


そう言って笑いながら、俺に宗方は何かを渡す。


「何だ、これ?」


「作品だよ。あげる。チョコ、ラムネ、イチゴ、キャラメル、試作品のキャンディ。会った記念にあげるよ。雨宮さん」


そう言って、宗方は車から降りる。


「もう、待ち合わせ場所にもどらないと」


「わかった」


俺は、車から降りてさっきのものをポケットにしまった。


「ラムネっていくら分、売るんだ?」


「5億は、売りたいな。雨宮さんの力で。ハハハ」


冷ややかな笑みを浮かべながら、棒つきキャンディを宗方は、口にいれた。


神楽法かぐらほうは、宗方道理むなかたどおりの神様ってわけか…。


俺は、宗方と並んで、歩く。


気づいてないだけで、宗方こいつも、被害者だったのがわかった。








*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*



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