美麗からの電話

俺は、京君を、ソファーに寝かせた。


俺のせいで、京君を巻き込んでしまったよな。


ごめんな。


眠る京君の髪を、優しく撫でる。


いつも、俺に優しくしてくれてありがとう。


ブー、ブー


スマホが鳴った。


俺は、立ち上がって寝室に向かった。


「はい」


『飴ちゃん、元気にしてる?』


キラキラ輝く声で、電話をしてきた。


「美麗か…。元気だよ」


『飴ちゃん、冷たいね。俺は、今一生懸命映画の撮影をしているのに…。生放送見た?』


「見たよ」


『ちゃんと出来てた?ずっと、飴ちゃんに抱いてってカメラ見てたんだけどな』


「出来てたよ。ハリーさんも色気でてたってよ。まさか、一人でやってないよな?」


『やりたくても、してないよ。我慢してる。ずっと…』


美麗は、そう言った。


「我慢しろ。欲望は、我慢すればする程に美しいエロスになると俺は思ってるよ」


『飴ちゃん、それは俺も感じたよ。我慢すればする程、飴ちゃんに抱かれたくなる。抱いて欲しくなる。そしたら、どんどん表情がかわるのを感じた。今日の雑誌の撮影は、かなり褒められたんだ。見てよね。NEXTって雑誌』


「わかった。必ず、見るよ」


俺は、美麗との電話で美麗を感じていた。


美麗と話せるだけで、嬉しかった。


『飴ちゃん、俺、飴ちゃんを愛してる。だから、映画の撮影終わったらまたキスしてよ』


「構わないよ」


『なら、頑張るよ。飴ちゃんに会ってあのキスしてもらう為に、俺頑張るよ』


「わかった」


『飴ちゃん、明日は何をするの?』


急に美麗は、不安そうな声を出した。


「金森を抱く」


『やっぱりね。二日に一回ぐらいで会ってるの?』


「それぐらいかな?」


『俺を抱くみたいにしてるの?』


美麗の焼き餅が、今は素直に嬉しい。


「そんなわけない。誰を抱いたって、美麗と同じ事などしない」


『そんな事言って、俺以外を感じさせてるんでしょ?飴ちゃん。俺は、ずっとオアズケなんでしょ?飴ちゃんに抱かれたい。飴ちゃんの指を舌を感じたいよ。俺の全てを愛して欲しいよ』


酔っぱらってきているのだろうか?美麗は本音を爆発させてる。


「俺だって、美麗を抱いてやりたい。でも、美麗は第二の佐古十龍になるんだ。ハリーさんの夢を叶えてやってくれよ。俺には、できなかったから…。いつか、美麗を全身全霊で愛するから信じて待っていてくれよ」 


『じゃあ、約束して。金森を抱いても、俺を思い出して。金森にキスしてもいいから…。同じようにしないで。金森を抱いた日は、俺に愛してるって言って。抱きたいのは、俺だって言って』


美麗が、そう言いながら泣いているのがわかる。


「わかった。泣いたら、明日に支障でるだろ?ちゃんとしろよ」


『わかってるよ。飴ちゃん、俺を愛してる?』


「愛してるよ」


『俺が、欲しい?』


「当たり前だ。俺は、どうしようもないぐらい美麗を愛してる。今だって、美麗を抱きたいよ。俺の腕の中で感じさせたい。美麗の目には、俺だけを焼き付けさせたい」


『飴ちゃん』


「自分でしたくなったか?」


『うん。でも、我慢するよ』


「美麗は、いい子だな。愛してる」


『飴ちゃん、愛してるよ』


俺は、チュッと聞こえる音で、スマホにキスをした。


『飴ちゃん…。それ、ヤバい』


「あの日を想像してみてくれよ。俺が美麗に、極上のキスをした日。ハァ…ハァ…」


俺は、美麗にあの日した吐息をわざと捧げた。


『飴ちゃん、どうしよう?』


「果てただろ?」


『うん。でも、何で?』


「愛の力かな?これから、もっとそうなれるようにするから、美麗にしか使わないから…。信じてくれるか?」


『信じるよ。飴ちゃん、終わったら必ず会いに行くから』


「ああ、待ってるよ」


『おやすみ、飴ちゃん』


「おやすみ、美麗」


そう言って、電話が切れた。


美麗は、最後には安心した声を出していた。


大丈夫。


電話でだって、俺は美麗なら満足させられるから…。


あの日、俺は、それを、夏生さんに、教えてもらった。


忘れもしない。


あれは、働き始めて、二年目の冬の出来事だった。


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