体のだるさと針山さん【美麗】
俺は、針山さんに連れて行かれて車に乗った。
「針山さん、頭がいたくてフワフワして気だるいんだ」
「熱があるか?」
針山さんは、俺のおでこに手をつけた。
「大丈夫だぞ」
そう言って、針山さんは、笑った。
「昨日、一杯しか飲んでないのに記憶なくしちゃった」
「疲れてたのか?それとも、飴となんかあったか?」
ジッーと俺の顔を針山さんは覗き込んだ。
「飴になんかされたな!」
針山さんは、煙草に火をつけて窓を開けた。
「お願いしたのは、俺だよ」
俺も煙草に火をつける。
「そうか」
「うん、飴ちゃんは俺以外を抱かないって信じてたのにな」
そう言うと、俺の目から涙が流れてくる。
それと同時に、さっきの自分を思い出した。
名も知らぬ男と肌を重ねてた。
そう思った瞬間、急にお尻に違和感を覚えた。
したんだ。
飴ちゃん以外に抱かれないし抱かれたくないと決めていた自分が、名も知らぬ男に抱かれたのがわかった。
「さっきのとなんかあったか?」
針山さんは、煙草を消してまた新しい煙草に火をつけた。
「ないよ、何も…」
俺は、嘘をついた。
「失望を感じてるぞ。何にかは知らないけどな」
針山さんに、そう言われた。
ああ俺は、今の自分に失望してる。
誰とでも出来た自分に…。
「絶望と失望。両方もったか」
針山さんは、俺の髪を撫でてくれた。
「しんどいのは、ましか?」
「いや、死にたいぐらいダルいよ」
「俺の家に寄ってくれ」
「わかりました」
針山さんは、俺を自分の家に連れてきた。
「風呂頼むわ」
お願いされて、早川さんがお風呂を用意した。
「ゆっくり浸かってこい」
そう言って、お風呂に入る。
まだ、頭が痛い、フワフワする。
何故かわからないけど、死にたいぐらいに心がしんどい。
地面にめり込んでいきたいぐらいの気持ちだ。
お風呂からあがると、パジャマと水が用意されていた。
「美麗は、初めてだな。ここ来るの」
「うん、寮だったから」
「じゃあ、お前が休める素敵な場所をあげるよ」
「何、それ?」
そう言って針山さんは、部屋を開けた。
「ここで、休め」
ベッドと本棚と机が置かれてる。
「誰の部屋?」
「20歳まで、飴が住んでた部屋だ。飴が置いてった物がそのまま残ってる」
「取りにこないの?」
「実家に取りにくるやつはいないだろ?ここは、飴の実家だ」
そう言って、ハリーさんは笑った。
「14時半には連れてくから休んどけ」
パタンと扉が閉められた。
本棚にある本を指でなぞる。
飴ちゃんの使ってた部屋
机を指でなぞる。
飴ちゃん
俺は、ベッドに横になった。
いなくなってからも、洗濯をされているようで布団がフカフカだった。
20歳までの飴ちゃんが、寝てた布団
飴ちゃんが、好き
唇に手を当てる
飴ちゃんを思い出して、触る。
さっきの人には、もう二度と会わない。
だから、いつか飴ちゃんが全部忘れさせてよ。
気持ち悪い
頭もフワフワして、気持ち悪い
何で死にたいなんて思ってないのに、こんなに死にたいんだろう?
飴ちゃん、怖いよ。
助けてよ
飴ちゃんに、抱かれたい
俺は、布団にくるまった。
泣きながら、目を閉じた。
夢ー
「美麗、なんかあったか?」
「今日、キスシーンの撮影だった。飴ちゃん以外とは嫌だ」
「そんな事言ってたら佐古さんみたいになれないぞ」
「いつか、嫌じゃなくなる?」
「もっと、役にのめり込めばいいんだよ」
そう言って、飴ちゃんはキスをしてくれた。
甘くて、とろけるようなキス
「飴ちゃん、大好きだよ」
「俺もだよ。美麗」
そう言って、飴ちゃんは俺を抱き締めてくれた。
「美麗、時間だ」
針山さんの声で、目が覚めた。
「はい」
「頭痛いのは、大丈夫か?」
「はい、ましになりました。」
「いい夢、見れたか?」
「はい」
俺は、針山さんに笑った。
針山さんは、机の引き出しを開けた。
「飴には、内緒だぞ」
そう言って、俺の掌に置いてくれた。
「これは?」
「飴が、大事にしてたキーホルダーだ。この部屋の物も、いらないって言われたんだけどよ。俺が、捨てられなくてな」
針山さんは、頭を掻いて笑った。
「行くぞ、生放送だ」
「はい」
俺は、笑いながら飴ちゃんの部屋を出た。
*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*
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