さようなら、飴ちゃん【美麗】
雨が降りしきる中、俺は飴ちゃんの家に向かっていた。
キャンディの
飴ちゃんの家の玄関を開けた。
二つのシルエット
ジッーと見つめてると、飴ちゃんと飴ちゃんに抱かれてる人が浮かび上がった。
馬鹿馬鹿しい事を頼んだと俺は、心底、後悔していた。
飴ちゃんから連絡がきても、飴ちゃんは俺の前でそんな事をしないと勝手に思い込んでいた。
飴ちゃんのキスで、とろけたのがすぐにわかった。
そのキスをされるのは、自分以外はないと信じていたのに…。
ギリギリと胸に刃物が突き刺さっていく感覚がする。
飴ちゃんの手が、彼の体を撫でる。
飴ちゃんに、抱かれながら彼は「初めて」と繰り返した。
ああ、飴ちゃんは彼に寄り添った事をしてるんだね。
彼が、望むことを汲み取ってしてるのがわかる。
それは、飴ちゃんが心から幸せにしてあげたいと望んだ時にする事
俺は、飴ちゃんの事、わかってる。
飴ちゃんが、三年目を過ぎた辺りに一度だけ俺への興味をなくした時があった。
その時、重ねた体は、何の心地よさも幸せもなく、ただ欲望をぶつけ合っただけに過ぎなかった。
飴ちゃんは、暫くすると俺にまた興味をもってくれた。
倦怠期だったのだとわかった。
その時、またこの日が初めてと感じれる程の、体の交わりを感じたのだ。
だから、彼があの言葉を口にしてると言うことは飴ちゃんは彼を幸せにしてあげたいのだ。
急に吐き気がして、俺は部屋を出た。
キャンディの傘を、忘れたのに気づいたけれど取りに行きたくなかった。
俺は、パーカーの帽子を目深に被った。
ザァーって、雨が全身を濡らす。
さよなら、飴ちゃん。
雨の中、歩いてる。
うッ…。時々、吐き気がやってきた。
「風邪、ひくよ」
赤信号で止まった、俺に傘が差し出された。
「あめ…誰?」
「初めまして、風邪ひくよ」
「大丈夫です」
「ずぶ濡れの人は、ほっておけないんだ」
「間に合ってます」
「こっちに、ついてきて」
俺は、その人に腕を掴まれて、ついてきてしまう。
マンションの一室についた。
「シャワー浴びなよ。風邪引くから」
そう言われて、名も知らぬ人の家のシャワーを俺は借りた。
シャワーからあがると、タオルと大きなシャツとパンツが置いてあった。
俺は、着替えてリビングに行く
「はい、お水」
「ありがとう」
差し出されたお水を飲んだ。
「明日は、何時に起きる?」
明日は、夕方からの生放送に出るだけだった。
「8時かな?」
「では、一杯は飲めるね」
そう言って、男はウィスキーを差し出しだしてくる。
何となくだけど、悪い人ではなさそうな気がする。
真面目そうな気がする。
俺は、疑うことなく差し出された、ウィスキーを飲んだ。
甘くて、不思議な味がする。
酒に弱くないはずなのに、すぐに酔いが回った。
度数が高いのかな?
「大丈夫?」
「はい」
.
.
.
.
.
妙に気だるい気分と頭の痛さが酷くて、俺は目が覚めた。
「誰?」
俺は、上半身裸の男に、水を差し出されてる。
「昨日、あんなに愛し合ったのに忘れちゃった?」
「えっ?」
男は、スマホの動画を俺に見せながら再生した。
「飴ちゃん、駄目だよ。んんっ」
なにこれ?
「あんまり見せたら可哀想だからここまでにしとくね」
そう言って、男は笑う。
「脅すつもり?」
「まさか、そんな事はしないよ」
「それは、なに?」
「これは、コレクションなだけ。趣味だよ。一人で楽しむだけ」
男は、眼鏡をあげながら笑った。
悪趣味だ。
「私の玩具になりたいなら、また連絡してきてくれるか?」
そう言って、男は電話番号の紙を俺に握らせた。
「忘れられてしまうのは、楽しくない。知らない奴の名を呼ぶのはもっと論外だ。みれさん」
そう言って、眼鏡をあげながら男は微笑んだ。
「お迎え呼んだらどう?」
そう言われて、俺は針山さんに連絡をした。
気だるい、辛くて、しんどい。なのに、フワフワする。頭が痛い。何だろう?変な感じだ。
「飴ちゃんって、そんなにいいんだ。イク時に叫んでたけど」
そう耳元で囁かれた。
ピンポーン
「きたよ」
俺は、服を渡されて着替えた。
「すみませんね」
針山さんが、男に頭を下げた。
「大丈夫ですよ。お気になさらず」
男は、針山さんにそう答えた。
「ありがとうございました」
俺は、針山さんに玄関から出される。
「さようなら」
男は、そう言ってパタンと玄関の扉を閉めた。
*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*
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