さよなら、美麗

俺は、ハリーさんと別れて歩いていた。


「ああ、見つけた飴ちゃん」


俺の前に恋が、現れた。


「日曜日だよ」


「知ってる。だから、探してた。いつにするの?」


「いつが、雨だったっけ?」


俺は、恋に尋ねる。


「水曜日の夜中には降るはずだよ」


恋の言葉に俺は、「その日にするよ」と言った。


「何で、雨の日?」


恋は、不思議そうな顔をして俺を見つめていた。


「飴ちゃんだから」


そう言うと恋は、笑いだした。


「飴に雨かけてんの?クダラナイ」


そう言いながら恋は「フフフ」と笑っていた。


「それと、雨って綺麗にしてくれるイメージあるだろ?だから、だよ」


俺は、笑ってる恋を見つめながらそう言った。


「じゃあ、これから先。飴ちゃんが何か嫌な事をする時の一日目は、雨の日に決定だね」


そう言って、恋は笑ってくれる。


「そうだな!これからはそうするよ」


俺も一緒に笑った。


「じゃあ、飴ちゃんまた仕事でね」


「ああ、気をつけて」


俺と恋は、別れた。


次の日も、次の日も、ルージュが終われば風鈴に足を運んだ。


京君には、水曜日は早くあがって欲しい事を頼んだ。


美麗には、メールで、水曜日の夜中に鍵を開けてるからはいってきてほしいと伝えた。



水曜日ー


予報通り、夜中に雨が降りだした。

俺は、京君とタクシーで家に帰ってきた。

帰宅して、お風呂を入れた。


「京君、お風呂はいろうか?」


「はい」


俺は、雰囲気を作るためにスタンド型のランプのみをつけた。


お風呂場に行くと、京君は真っ赤に耳まで染めながら服を脱ぐ。


京君の身体中に傷や煙草の痕があるのがわかる。


「先輩にやられたのか?」


俺の言葉に京君は、その後を触りながら話した。


「そうですね。先輩と母です」


そう言って、京君は、お風呂場に入って行く。


この家のお風呂は、男二人はいっても狭くない場所を選んだ。


俺は、京君と湯船に浸かり丁寧に京君の体を洗った。


バスタオルで、互いの体を拭いた。先に京君が上がっていった。


俺は、裸の体にバスタオルをかけて 水を手に取り、京君に「おいで」と言ってベッドに連れて行く。


照明は、暗いけど、少し目がなれさえすれば二人の体は浮かび上がる。


俺は、サイドテーブルの時計を見た2時55分。


始めておけば、美麗は、現れる。


外の雨は強くなっている音が響く。


俺は、水を飲んだ。


その水を口に含んで、京君にも飲ませた。


「準備はいい?」


「はい」


そう言うと俺は、京君の唇に唇を重ねた。


ガチャ…。玄関が開いたのがわかった。


俺は、舌をゆっくり絡ませる。


「はぁ」


京君の息が漏れるのを感じる。


背中に指を這わせながら、抱き寄せる。


そして、ゆっくりと唇を離した。


「飴さん、これ」


座ってるけど、腰の力が抜けたようで京君は倒れそうになっていた。


「飴さん」


京君は怖いのか、怯えた目で俺を見つめた。


「しー。任せて、大丈夫だから」


俺が、京君に言うと京君は柔らかく微笑んだ。


俺は、京君がどうしたいかどうして欲しいかを考えながらする。


「んんっ」


気持ちよさそうな声を出してくれて、ホッとする。


俺と京君の行為は、終わった。


「飴さん、こんなの初めてです」


京君は、さっきからその言葉を繰り返していた。


「何度も言わなくていいよ。照れるから」


俺は、京君の髪を優しく撫でる。


気づくと美麗は、いなかった。


「でも、僕。ずっと怖かったから…。あの感覚に支配されてて、怖かったから」


「そうだよな」


俺は、泣いてる京君の涙を拭った。


「今日は、凄く幸せでした。体を貫くだけの快感に支配されただけじゃなかった。心も体も溶けてしまいそうな感覚だった。飴さん、一回だけと言わずに僕を抱いて欲しいです?」


「どうして、それを望むの?」


「忘れたい。あの感覚を、体の中から消してしまいたい」


京君は、そう言いながら傷跡を擦っている。


「わかった」


俺は、京君を抱き締めた。


昔、京君に似た女の人を仕事で抱いた事があった。


彼女は、忘れたいと言った。あの感覚がやってくると気持ち悪いと彼女は薬物ではないが、前の彼氏に変なお香をたかれていたと俺に話した。


どんな恥ずかしい事も痛い事も、それを嗅ぐと快感にかわるのだと話した。


それが、堪らなく気持ち悪いのだと…。


その人は、夏生さんの指導を受けた俺が三年目に出会ったお客さんだった。


彼女は、俺との日々を重ねた半年後、結婚した。


ありがとうと喜んでくれた。


「京君が、望むならするよ」


俺は、京君の髪を撫でながら話す。


「飴さんが、誰を好きでも構わないから…。また、僕とこうして。忘れさせて」


俺にしがみついて京君は泣いていた。









*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*

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