生放送

俺と京君は、気づいたら寝ていた。


スマホにハリーさんからのメッセージがはいっていた。


今日の17時からの生放送を見てくれとだけはいっていた。


俺と京君は、昼過ぎに起きた。


コーヒーをいれて、京君に渡した。


「大丈夫だった?フラッシュバックとか」


「はい、大丈夫でした」


京君は、ニコニコ微笑んでくれる。


「その…」


「全然違いました」


「本当に?」


「はい、こんな幸せな気持ちは初めてでした」


「そう言ってもらえて、よかった」


俺は、笑いながらコーヒーを飲んだ。


「飴さん、やっぱり僕が思った通りの人でした」


「褒めすぎだよ」


「本当です。僕、飴さんのお陰で前に進めそうです」


そう言って、京君が笑ってくれた。


「京君が、また誰かを好きになれるのなら俺はお手伝いをしてあげたいよ」


「飴さん」


「随分、苦しめられているのが昨日わかったから…」


俺は、京君の頬を撫でる。


「僕は、また誰かを好きになれるのでしょうか?」


「なれるよ」


「自分の体が怖いんです。あの、快楽をまた求めないだろうかって思ってしまいます」


「大丈夫。それは、体だけの快楽に過ぎないのだから…。」


俺は、京君を抱き締めた。


京君は、ずっと傷だらけで、震えていたんだ。


心も体も…。


ずっと、誰かと肌を重ねる事に、恐怖しかなかったんだ。


京君は、彼女のように、克服できるのではないだろうか?


夏生さんが、昔、俺に話してくれた事がある。


「飴君、肌を重ねる事を若い時にする人々は自らの快楽だけを追求していると私はずっと思っていたんだ」


「俺自身もそうでした」


「私はね、男女の営みは結婚を誓い合った二人がする行為だと信じて疑わなかったんだよ。それ程、神聖で美しいものだと感じていた。でもね、私は男の人が好きだ。私に結婚は出来ない気がした。それならば、誰かを幸せにしたり、救う事の出来る交わりをしたいと思ったんだよ」


「夏生さん、俺にも出来ますか?」


「出来るよ。相手の事を思い、相手の幸せを願い、相手がして欲しい事を汲み取る。それが、できれば相手に幸せや救いを与えてあげれると私は信じてる」


夏生さんが教えてくれた通りにした。力でねじ伏せられた事しかなかった人、痛みしかなかった人…。沢山の人を相手にした。それでも、最後は幸せだったと言ってもらえた。


肌を重ねるのは、安心感、幸福感、癒しなのだと俺は、初めて知った。


「京君、少しずつ前に進めるといいね」


俺は、笑って京君の頭を撫でた。気づくと夕方になっていた。


「少しTVを見てもいいかな?」


「はい」


俺は、TVをつける。


美麗みれです。よろしくお願いします。今回のドラマは…」


美麗は、絶望と失望が混ざり合った目をしていた。


色気というよりは、ダークな闇を背負っているのを感じた。


その危うさが、怖くてゾクゾクする反面、堪らないぐらい目を奪われる。


「飴さんの彼氏は、美麗みれ君ですか?」


京君が、俺の様子を見て驚いていた。


「ああ、そうだ」


俺は、TVを消した。


「最後まで見ないのですか?」


「録画した。リアルタイムで、見る必要はないから…」


と言うよりも、俺は怖かったのだ。


美麗が、誰かに抱かれた気がしたから…。


「そうですか。僕は、美麗みれ君に見せつけたのですね」


京君は、そう言って悲しそうに俯いた。


「もしかして、ファンだった?」


「いえ、ただ。申し訳なかっただけです」


「大丈夫だよ。京君の顔は、見えていなかったから…」


俺は、京君の髪を撫でる。


「ありがとう、俺の我儘に付き合ってくれて」


「いえ、僕は飴さんに協力出来てよかったですよ」


京君は、そう言って笑ってくれた。


可愛らしい笑顔だった。


「ありがとう。そろそろ、用意しないといけないね」


「僕は、10時出勤なので飴さんが出る時に帰りますよ」


「わかった」


俺は、シャワーを浴びて服を着替えた。


用意をして、京君と二人で部屋を出た。


玄関を出て、外に出るとキャンディの柄の傘が置いてあった。


美麗が来たのが、それでハッキリとわかった。


俺は、鍵を閉めた。


京君と並んで歩き出す。









*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*

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