恋に相談

俺は、いつものようにルージュに出勤してきた。


また、慌ただしい一日が始まり終わった。


そして、仕事終わりに風鈴に行く。


マスターが、恋の隣の席を案内してくれた。


京君は、いつものようにビールをくれた。


「うまく、いったんだね」


恋は、隣に座った俺にそう言って、ニコニコと俺と京君を交互に見た。


「ああ、うまくいった」


俺は、恋にそう言ってビールを飲んだ。


「美麗君とは、した?」


「なんで?」


「生放送見てたら、なんかしたのかなーって思ったから」


やっぱり、恋も何かに気づいていたようだった。


「俺は、誰かとそうなったと思ってる」


「まさか、そんなはずないよね」


恋は、驚いた顔で俺を見つめる。


「いや、そんな気がしてるんだ。あの、絶望と失望。絶望だけならわかるけど、自分にたいして失望してるような気がした」


恋は、何かを考えている。


「美麗君は、飴ちゃん以外に、そんな事出来るのかな?」


「さあ、わからない」


「飲み過ぎたとか、睡眠薬飲んだとかじゃないの?不本意だったんじゃないのかな?」


そう言って、恋はカクテルのオリーブをくるくる回している。


「そうだろうか?そう信じたいけれど俺は、絶望を与えた人間だから…。向こうが、誰かとそうなっても仕方ないと思うしかない」


俺は、恋にそう言っておでこを擦った。


「飴ちゃんは、許せるの?」


恋は、チーズを口にいれながら俺を見つめる。


「許せると思っていたけれど、許せない。自分が、こんな嫉妬深いとは気づかなかった」


俺は、ビールを飲んだ。


「ただ、上にあがってもらいたいだけなのにね」


「そうだな」


俺は、自分がこんなにも嫉妬深いとは思わなかった。


恋は、またオリーブをクルクル回してる。


「今日も、あの子か?」


「飴ちゃん、女性は最後まで出来ないから罪悪感ないって思ってる?」


「いや、思ってないよ」


「言われたんだよ。あの子に、最後まで出来ないから罪悪感ないでしょ?って」


「最低な言い方だな」


「だよね。あの子、彼氏が居て。最後までしてないから、罪悪感なかったらしいよ。言われて、ムカついたんだけど。それって、男じゃないと駄目って意味じゃない?」


「そうなのか」


「アレじゃないとって話でしょ?」


「でも、そうじゃないだろ?」


恋は、彼女を見ながら不適な笑みを浮かべてる。


「男の人が女の子みたいになれるように、私はそんなのしなくてもここ深くにダイレクトに刺激おくれちゃうんだよね。」


そう言って、恋は自分のお臍の辺りをさわった。


「それは、すごいな」


俺は、何故か、恋の話しに興味がわいた。


「でしょ?女の子はね。それ使わなくても、快感をえられるの。自分の体で何度も試してから、紗綾にもやった。後、男好きな子にも試したけど、そしたら、二度とそれが欲しいなんて言わなくなるんだよ」


「今回は、失敗したのか?」


「失敗してないよ。しなかっただけ」


「なぜ?」


「紗綾以外にもうそれをしたくないってだけ、だから、今、私がしてるのは普通の行為です。それでも、誰よりも努力はしてるけどね」


そう言って、恋は俺の耳元で話した。


「キスだけで、いかせられるでしょ?美麗君だけは…」


そう言って、恋は、俺から離れた。


なぜ、わかるのだ?


「ハハハ、その顔は、図星だった?」


恋は、楽しそうに笑っている。


「そんなテクニックは、俺にはないよ」


俺は、そう言ってビールを飲んだ。


「それってテクニックなのかな?愛じゃないの?私も紗綾をそう出来る。ただ、あんまりそれを使うと悪いからしないだけで」


そう言って、嬉しそうに恋はオリーブを食べてる。


確かに、俺もそうかも知れない。


「飴ちゃん、今日は帰っていいよ」


突然、恋にそう言われた。


「釣れたのか?」


「魚みたいだけど?今日はね、京君にソフレしてもらうの!」


「なら、安心だな」


俺は、ビールをいっきに飲み干した。


「恋を頼みます」


俺は、京君に深々と頭を下げる。


「はい、大丈夫です」


「では、失礼します」


俺は、お金を払って店を出た。出た瞬間だった。


「こんばんは、飴ちゃん」


「西城さん、こんばんは」


「最近忙しくて行けなくて、ごめんね」


「いえ、またいつでも来てくださいね」


「ありがとう」


そう言いながら西城さんは、笑った。


「飴ちゃん、じゃあね。また、いつか」


西城さんはタクシーに乗り込む時に、そう言った。


また、いつか?もう、永遠のお別れみたいな言い方をするんだな。


俺は、不思議に思いながら歩いて家に帰って行く。



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