金森との時間

夏生さんの病室から、追い出された俺は、家に帰っていた。

夏生さんとハリーさんが俺の為に何かしようとしてる事も俺は気づいていなかった。


「飴ちゃん、暗いね?」


「恋に会うと思わなかったよ」


しばらく歩いてると俺は、恋に会った。


「近くで、女の子と遊んでた。ねぇ、飴ちゃん。美麗の色気凄かったね」


「気づいてたか」


「どうやったの?」


俺は、恋に美麗とのキスを話した。


「へぇー。私も出来るかな」


「あの子には出来るって言ってただろう?やってみたらどうだ?」


「また、今度会えたらしてみようかなー。傷つけるだけが選択肢じゃなかったんだね」


そう言って、恋は悲しそうに目を伏せていた。


「会えないのか?」


「うん、今はね」


そう言って恋は、寂しそうに笑った。


「いつか、会ってやれよ」


「わかってるよ」


「じゃあ、後でな」


「うん、じゃあね」


俺は、恋と別れた。


家に帰って、シャワーに入って用意をする。


今日は、金森が来る予定だ。


俺は、店にやってきた。


片付けをして、開店準備をする。


「おはよう、飴ちゃん」


「おはようって、さっき会ったよな」


「そうだよね!ってか、今日は金森が来るんでしょ?」


「ああ、そうなってる」


「飴ちゃん、何か…。しんどいね」


「確かにな!でも、ほら仕方ないだろ」


「美麗としちゃえばいいのに…」


「それは、何か違うからさ」


そう笑った俺に、恋も笑っていた。


「おはよう、飴ちゃん」


「ママ、おはようございます」


暫くするとママもやってきた。


あっという間に、今日一日が終わった。


「飴ちゃん、お疲れ様」


「お疲れ様です」


みんなが、いなくなったと思ったら俺は声をかけられる。


「飴ちゃん」


「恋」


「今日は、あいつがくるんだろ?」


「ああ、来る」


「飴ちゃん、苦しまないでよ」


「ありがとう」


「いつか、終わるよ!飴ちゃん」


「うん、そうだな!いつかな」


俺は、恋にそう言って笑った。


恋は、「お疲れ」と言って帰ってしまった。


俺は、片付けをして、店を後にする。


正直、気が重い。


足取りは、重く…。


一歩、一歩を踏み出すのがしんどかった。


家の近くにやってくると、金森が待っていた。


「飴ちゃん」


「お疲れ様」


俺は、金森を部屋に入れた。


「シャワー浴びたい」


「わかってるよ!一緒に浴びる?」


「遠慮しとく」


俺は、ネクタイをはずしながら玄関を上がる。


「飴ちゃん、冷たいよね。相変わらず…」


「嫌なら、やめたらどうだ」


「嫌だよ!やめないよ」


「先に、シャワー入ってきてくれ」


「じゃあ、そうする」


金森は、そう言ってシャワーを浴びに行った。


俺は、金森の姿を見つめていた。


いつまでも、いつまでも、俺は、あいつのセフレか…。


はぁー。仕方ないか…。


暫くは、このままかな…。


「飴ちゃんも、入ってきなよ」


「ああ、入ってくる」


俺は、シャワーを浴びる。


いつまでも、この関係を続けたくない。


でも、仕方ないよな。


俺は、このまま金森のいいなりのままでいるしかないんだよな。


どうにか、終わらせないといけないよな…。


シャワーを浴びて上がると金森は、ニコニコ嬉しそうに俺を待っていた。


「じゃあ、始めるか」


義務的な気持ちをぶら下げて俺は、金森を抱いた。


怒り、悲しみ、憎しみをぶつけまくってやった。


「今日の飴ちゃん、何かいつもと違ったよ」


金森は、そう言いながら喜んでいた。


だろうな。


金森への怒りや、神楽への怒りや、宗方への怒りを全部金森にぶつけてやったから…。


「飴ちゃんが、嫌がるから今日は帰ってあげるよ」


金森は、そう言って俺に笑いかけて立ち上がると服を着出した。


「俺をまだ利用するつもりか…」


「利用?人聞き悪いねー。Win-Winの関係だよね?飴ちゃん」


俺は、頷けなかった。


「じゃあ、また来るね」


そう言って、金森は嬉しそうに部屋を出て行った。


人生の終わりってのなのかな…。


俺は、鍵を閉めてからシャワーを浴びにいく。体を洗っても、洗っても、汚れがとれない気がしていた。


お風呂からあがって、俺は水を飲んでから、冷蔵庫をあける。


ビールを胃袋に流し込んで、横になった。


もうすぐ、京君が来る!


少しだけ、目を閉じた。

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