嘘つきな飴ちゃん【美麗】

飴ちゃんはどしゃ降りの雨にうたれながら俺の大嫌いなやつとキスをしていた。


飴ちゃん、なんで?


「寺ちゃん」


傘をさして、俺の隣に立ってくれる寺ちゃんを見つめていた。


寺ちゃんも、俺と一緒に飴ちゃんを見つめてる。


「だから、言ったじゃないですか、もう会いに行くのは、昨日で終わりにしましょうって…」


俺は、寺ちゃんにそう言われていた。


降りしきる雨の中、いったん離れた飴ちゃんは、再びそいつを抱き寄せて、俺に見せつけるようにもっと濃厚なキスをした。



「寺ちゃん、車だして」


俺は、吐き気がして寺ちゃんにそう言った。


あの日、あの光景を見た時以上の吐き気がしていた。


寺ちゃんと一緒に車に乗り込んだ。


「美麗君、大丈夫?」


寺ちゃんは、俺を心配そうにミラー越しに見てそう言った。


「全然、平気」


涙が頬を流れる感覚を味わいながら、俺は窓の外を流れる景色を見ていた。


昨日ー


事務所に呼ばれた俺に、針山さんは言った。


「美麗、飴からの伝言を預かった。もう二度と美麗には会えない。だから、家に来るなってな。美麗の知ってる俺はもういないって言ってたぞ」


「家に見に行ってるのバラしたの?針山さん」


「バラしたのは、俺じゃないよ。寺が、詰め寄られたんだ」


「すみません。一週間前に、バレてしまったんです」


「コンビニで待ってもらってた時?」


「はい、すみませんでした」


「いいよ。バレたなら仕方ないよ」


俺は、俯いた。


「後、飴からのもう一つの伝言だ。飴と別れて辛いからって薬に手をだすなって、知らないやつにだされたものを口にするなってよ」


「針山さん、俺。薬物なんかしないよ」


「わかってる。でも、こんな商売だ。どこで、いれられるかわかんないだろ?二週間前、美麗。フワフワして頭が痛いって言ってただろ?」


「うん、言った」


「確かに、飴のを見せられて落ちて飲み過ぎたのはわかるけど…。長い間、抜けてなかったろ。アレが薬物だったかも知れないだろ?今になっては、わからないが…」


俺は、驚いた顔をして針山さんを見ていた。


「佐古が話してたけどよ。ラムネって薬物が若者の間で流行ってるらしいんだわ。飲み物にすぐに溶けてなくなるらしくて、ほのかにチョコみたいな甘い香りがしてるって。だから、美麗も気をつけろよ」


「わかった。」


針山さんの言葉に俺は、あの日ベッドに一緒に寝ていた男が差し出してくれた酒がチョコみたいな匂いがして甘かったのを思い出していた。


「あの日、一緒にいた男が飲ませたかも知れないだろ?気を付けろよ、美麗。どこで、足救われるかわからないんだぞ」


「わかってるよ。針山さん」


「飲むなら、寺と飲め。後、飴に会いたいなら寺とここに行け」


「社長、いいんですか?」


「変な薬やるより、飴ちゃん食ってる方がいいな。ハハハ」


「針山さん」


「ま、今は会うな。時間が経てば飴も会ってくれるさ。美麗わかったな」


現在ー


「ついたよ」


俺は、一人になりたくなかった。


「寺ちゃん、ちょっと一杯付き合ってくれない?コーヒーだすから」


「構わないよ」


「そこの駐車場停めれるから」


「ああ」


そう言って、寺ちゃんは車を停めた。


オートロックを抜けて、家に入る。


「コーヒーで、いい?」


「ああ」


「そこ座って待ってて」


俺は、寺ちゃんをソファーに案内した。


コーヒーをドリップする。


「はい、寺ちゃん」


俺は、ビールとコーヒーを持ってきて寺ちゃんにコーヒーを渡した。


「ありがとう」


寺ちゃんは、コーヒーを飲んだ。


俺は、ビールを飲む。


「飴ちゃんの事、許せないよね?」


「許したくない。でも、俺はどうしようもなくらい飴ちゃんが好きなんだ」


「もし、やり直せても彼との事実を許せるの?」


「わからない。多分、いや、絶対。許せないよ。俺、嫉妬深いの」


そう言って、俺は寺ちゃんに笑った。


「じゃあ、もう飴ちゃんを彼にあげるしかないね」


寺ちゃんは、コーヒーを飲む。


俺は、煙草に火をつけた。


許せないなら、飴ちゃんをあいつに渡さなければいけない。


「無理だよ。俺の5年より長くあいつと飴ちゃんがいるのは嫌だよ」


「だったら、社長のいうように時間を置いてから飴ちゃんに会いに行ってみようか」


「うん、行くよ」


「今回のドラマ、落ち着いたらな」


「わかった」


寺ちゃんは、コーヒーを飲んで帰っていった。


俺は、やっぱり飴ちゃんが、好きだよ。






*この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません*

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