第9話 大発見したよ!

 ちょっとしんみりしちゃったけど、先生がサッと切り替えてステータスを確認しているのを眺める。


 先生のステータスにも、同じように表示が出た。

 と言う事は、これは転生者特典ではないのか…


「これは凄い発見ですよ!褒賞が出るかもしれません」


 先生の興奮が止まらない。


 なんでも女神ルミナマイアの祝福として、信仰はステータスにも及ぶため、新しいクラスやスキルの情報も女神のお言葉として、教会が常に求めているんだって。


 教会は個人のクラスやスキルの情報は決して口外しないが、これ程の情報であれば公表され、国が認めれば褒賞として受爵や陞爵もあり得るらしい。


「先生落ち着いて下さい。まだ続きがあるんです」

「なんですって!?では早く教えて下さい!」


 流石は知識欲を満たす為に、家庭教師になったと言うだけはある。


 裕福でない男爵家では高価な本は滅多に手に入らないから、我が家の家庭教師になれば、教える為に父の伝で侯爵家の本を読めると思ったとか。


 学校の図書室の本は、全部読んだと豪語する程の本好きなんだよね。


 残念ながら、王都の図書館は読むために紹介状と保証金が必要なんだとか。


 その保証金の他に入場料まで取られるから、そんなお金を出すくらいなら、無料で読める本を読んで、欲しい本を買う方が良いと言う理論で、我が家の本も読みあさっている。


 それに新しい事も好きみたいで、新作の魔道具やら劇場の出し物なんかも教えてくれる。


 その先生も知らないって事は、やはり転生者じゃないと、クリックの概念がないのかもね。


 本みたいに捲る概念ならあるのに…あれ?

 そう言えばフリックは試してなかったね。


 それに右クリックや長押しとかも出来るのかな?

 どちらかと言うとPCよりタブレットみたいだから、ピンチアウト等も試してみるか。


 とりあえず試してみて出来たのは、フリックと長押しだった。


 もうオリバー先生の興奮が止まらない。

 カレンが部屋に入って来て一喝したら治まったけど。


「オリバー様?部屋の外まで声が聞こえておりましたが、それは家庭教師として相応しい態度でしょうか?」


「大変申し訳ございません。私の不徳の致すところです」


 土下座文化がないから、貴族の謝罪は片膝を着いて頭を下げるだけなんだけど、プロポーズしてるみたいに見えるよ。


「ヴィンセント様、本当に申し訳ございません。オリバー様にお困りでしたら、直ぐに呼んで下さい」


「大丈夫だよカレン。それにオリバー先生が興奮したのは、僕のせいでもあるから、気にしないで」


「かしこまりました。それでは失礼致します」


 カレンが退室して、オリバー先生が顔を上げる。


「怒ったカレンも美しい」


 駄目だこの人。ボソリと言ってるが聞こえてるよ。


「先生、カレンを呼びましょうか?もう一度怒った美しいカレンが見られますよ」


 勘弁してと、めちゃくちゃ頭を下げてる。

 どうやら本気で怒らせると、家で喋ってくれなくなるらしい。


 もはや謝り慣れてしまって、誠意が感じられないからじゃない?


「このままだと、話しが進まないので、もういいです」


「コホン。ありがとうございます。さて、この大発見をどうするかですね」

「大発見ですか?」


「そうです。今まで聞いた事もない現象です。いや、誰もがステータスとは見えている物が全てだと思って、調べる事など思い付かなかったのです」


 まぁ実際に触れる事も出来ないステータスを、頭の中で触ってみようなんて発想は、前世の記憶がなければ出来なかっただろうね。


 それで長押しで出来たのは、その項目の表示の切り替えだった。


 ベーシックなステータスの項目と、クリックした後の項目にダブルクリックした後の項目を選べるのだが、なぜか非表示も出来る。


 元々本人しか見えないのに、非表示にする意味があるのかな?


 そしてフリックをすると次のページが出て来たんだけど、これは先生のステータスでは出なかったんだ。


 僕のステータスでは、お財布の中身が表示されるみたい。


【お財布】と書いてある画面は真ん中で区切られて、左側に僕の名前が書かれていて、右側にお使いと書かれている。


 今は何もお使いを受けてないからか、枠の中には何もない。


 アイテムボックスとかストレージと言われる、異世界転生ものでお馴染みの便利機能なら良いのになぁ。


 なんとなく机の上にあった羽根ペンを、画面に入れるようにしてみる。


 ……入ったよ。

 え?マジ!?


 お財布の僕の枠に"羽根ペン1"と書かれてる。


 先生も目を見開いて固まっているから、僕の妄想ではないみたいだ。

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