第53話 衝撃的だよ!

 聖魔法の効果か、帰りの馬車では落ち着く事が出来た。


「ヴィンセント様にお聞きしたい事があります」


「何かな?」


「あの雑貨屋で会った2人についてです」


「え?」


 何で今更?

 と言うか、セルバスは雑貨屋にいた時から全く興味もなさそうだったよね?


「どうやら我々は精神に干渉するスキルを使われていたようです。先ほどのセイクリッドヒールの効果範囲に居たことで、私達にかけられた効果が解除された事で気付きました」


 なんだって!?


「そうですね。幻惑系のスキルが使われたようです。私の予想では、姿を偽る事と存在を曖昧にする効果に、声も聞こえなくする効果のようですね」


「1つのスキルでそんなに沢山の効果があるのですか?」


「1つのスキルではなく、いくつかを組み合わせているのだと思います。存在を曖昧にする事で、ぼやけた姿に別の容姿を刷り込むのは、簡単とは言いませんが、そこそこ出来る人はいます。ただ、自分が聞かせたい人以外には声を聞こえなくする…もしくは記憶に残らなくするのは、かなり希少なスキルだと思われます。むしろ全員に聞こえない様にするなら簡単なんです。このスキルを同時に展開するのは、かなり習熟した使い手でしょうね。それに、私はヴィンセント様から2人の事を聞かれたはずなのに、全くそれがおかしいと感じなかったので、判断力を下げる精神干渉も受けていた様に思います」


「ヴィンセント様には、あの2人は私達が見ていた姿とは違って見えたのですね?」


 どうしようか…エルフの事情は結局わからないから、正直に伝えて良いものなのか。


「セルバスにはどんな2人に見えていたの?」


 ここは質問で返すと言う反則技で誤魔化そう。


「茶色の髪と瞳で、平民の一般的な容姿に見えました」


 先生と同じか。


「ルーカスさんには聞いてみたの?」


「ええ。彼も私達と同じく茶色の髪と瞳に見えていました」


「どうして僕には違う姿に見えていたと思ったの?」


「それは、オリバー様との会話でですね。ただ、聞いた時は特におかしいとは思わなかったのですが、セイクリッドヒールで状態異常が解けてから気付いたのですが…ヴィンセント様は彼らの容姿が目立つと仰っていましたよね」


 常に冷静なセルバスにしては、凄く焦っているように見えるな。


「えーっと、2人とも金髪に緑眼だったよ」


「他に特徴はありませんでしたか?」


 エルフ耳は内緒にしておこうと思ったけど、どうやらセルバスも先生も深刻な事態だと思っているみたいだし、素直に伝えた方が良いかな。


 2人ならエルフを奴隷とかにしないと思うし、ちゃんと対応してくれるだろう。


「その、信じられないかもしれないけど、よ…女の子の方はエルフみたいに耳が尖ってたよ」


 危ない、危ない。もう少しで幼女って言うところだった。


「エルフみたいな耳ですか…それは興味深いですね!お伽噺は事実を元に作られる事は多々ありますから、エルフが実在していてもおかしくありません」


 先生は黙ってて欲しいかも。


「……他には特徴はございませんか?顔とか声とか覚えている事で構いません」


 やっぱりセルバスは何か知ってるの?

 普通はエルフ耳の特徴だけで充分じゃない?


「え~と、女の子の眼の色は緑色なんだけど、キラキラした金色の光が散りばめられた様な感じで、凄い美少女だったよ。男の人もお父様と同じくらい格好良くて、声はオリバー先生より少し高いくらいかな」


「…はぁ。どうやらこれは、まずい事になりそうです」


「セルバスは何か知ってるの?やっぱりエルフって実在してるの?」


「ヴィンセント様、オリバー様、これからお話しする事を他言しないと女神様に誓って頂けますか?」


 思わず先生と顔を見合わせる。

 女神様に誓わないといけない程の情報って…


「オリバー・ウィル・シスレーは、これからセルバスが話す事を他言しない事を女神ルミナマイア様に誓います」


 あ~先生がキラキラした眼をしてる。

 こうなったら止められないな…


「ヴィンセント・ダン・セザーニアは、これからセルバスが話す事を他言しないと女神ルミナマイア様に誓います」


「ありがとうございます。私セルバス・ブリューゲルは、私の話しによってお二人の不利益になるような事はしないと女神ルミナマイア様に誓います」


 今更だけどセルバスのフルネームを初めて聞いたよ。


 そしてセルバスが話してくれたのは、驚く事ばかりだったよ。

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