第55話 滅ぼすよ!
「まぁ、私としてはヴィンセント様が転生者でも転生者じゃなくても構いませんが、他の人には知られない様にして下さいね」
「先生…やっぱり知られたら監禁されて、知識を絞り取られるだけの奴隷にされるんですか?」
「なんですかそれは!ルーベン様やシャガーリオ侯爵がそんな事をなさるはずがありませんよ!それに我が国では正当な理由もなく奴隷にしたり、奴隷であっても不当に虐げる事は禁止されています」
ラノベ的な悪者のやりそうな事を心配してたけど、どうやら杞憂だったみたい。
しかも奴隷にも人権があるタイプの制度のようで良かったよ。
「しかし、転生者の知識を得ようと群がってくる者はいると思いますし、余計な事を考える者は何処にでもいますから、知られないに越したことはありません」
「そうですよね。と言っても、僕の記憶は曖昧で、役に立ちそうな知識もないと思いますけど」
他にも転生者がいるなら、僕の知識なんて特別な物にならないと思う。
「まぁ、本人は役に立たないと思っていても、周りにとってはそうでない場合もありますから、前世の知識は迂闊に喋らないようにお願いします。まずは私やシャガーリオ侯爵に相談するようにして下さいね」
「わかりました」
「話しが逸れてしまいましたが、エルフと転生者の関連があると言う事でしたが、それがあの2人のエルフと言う事ですか?」
「そうです。正確には子どもの方が転生者で、連れ出した男がいると言う事です。私も詳しくはないのですが、エルフは排他的な考えをする者が大多数で、転生者を異分子として排除しようとして、それに反発した者が少女を逃がしたそうです」
やっぱりエルフ怖い!
エルフに生まれなくて良かった。
「人の多い街なら紛れ込むには都合が良いですし、幻惑のスキルが使えるなら簡単ですからね。逆にエルフにとっては人間の街は鬼門ですから、追手は入り難いです。エルフと言う事が発覚しないよう掟に縛られていますから、人間の街で騒ぎを起こす事は、自分達の首を締めるようなものなんですよ」
なるほどね。
それでリスクはあるけど王都で暮らしているのか。
幻惑スキルで見た目を変えられるのは大きいよね。
「あれ?そう言えば何で僕には幻惑スキルが効かないんだろう?」
「ああ、ヴィンセント様は魔道具をお持ちですから」
ん?鑑定をされない魔道具と、攻撃から身を守る魔道具じゃなかったっけ?
「鑑定をされないのは、持ち主に対する干渉を阻害しているからです。ですから精神攻撃や状態異常等も阻害します。もちろん魔道具の性能によりますが、ヴィンセント様の物はかなり高性能ですね」
なんでも干渉を阻害すると言う事は、通常なら回復系も阻害するのに、セイクリッドヒールは阻害しなかったので、攻撃と回復を判別出来る機能がある高級品だとか。
大金貨5百枚はするかもって…あわわわ…5千万円以上の価値って事!?
5歳児に渡すような金額じゃないよ!
絶対に持ってる事は内緒にしなきゃ!
「ちなみに、そのブローチも同じですよ。攻撃だけを判別して弾く結界を張るんですから、それなりの価格になりますよ」
ひぃ~小市民な僕の中のアラフォー魂が悲鳴を上げているよ!
僕が魔道具の価値に戦慄していると、セルバスが何事もなかったように話しを続ける。
エルフと言うのは前世の物語でも定番の、自然と共に生き魔法や狩猟に長けていて超絶美形が多い種族と言うのはイメージ通りで、だからこそ人間に奴隷にされていた歴史があるのもテンプレだった。
もちろん仲良く共存する人間の国もあったのだが、ある時エルフの王族…所謂ハイエルフのお姫様が奴隷にされた事で、エルフと人間の戦争になったそうだ。
しかもドワーフや獣人の中にも奴隷にされた者がいて、人間に反発する勢力がエルフに加担した結果、人間の国を1つ滅ぼしてしまったんだとか。
もしエルフを奴隷にする国が現れたら、同じように滅ぼしてやると言う言葉に、人間の国の為政者達はエルフと関わらないようにすると約束し、エルフはお伽噺の存在とする事で余計な事をする人間を無くそうと努力したんだって。
その努力が実り数百年経った現在では、人間にとってエルフはお伽噺になったと言う事だ。
…やっぱり怖いよエルフ!
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