第56話 戦争反対だよ!

 エルフに滅ぼされた国は奴隷の扱いが酷い国で、消耗品のように使い潰し、足りなくなれば他国から拐って奴隷にするような国だった。


 人間の国でも問題視されていたから、滅ぼされた事には文句は出なかったが、違法奴隷が見つかってエルフに滅ぼされては敵わないと、周辺国では一致団結して違法奴隷の摘発をした。


 更に奴隷の取り扱いも法律で定めて、ほとんどの国が犯罪奴隷と借金奴隷しか認めないとなったそうだ。


 違法奴隷や人身売買が発覚したら、逆にそいつらが犯罪奴隷になるとか。


 犯罪奴隷は最低限の命の保障をすれば構わないので、主に鉱山や危険度の高い魔物の討伐で囮等をさせる使い捨てで、何をしても良い扱いらしい。


 その他の刑罰は軽いものなら禁固刑や罰金刑から、ムチ打ちや引き回しや石投げ、死刑に至っては首吊りに火炙りやギロチンなど多岐に渡るそうな…


 基本は公開処刑だそう。

 そう言えば、昔は処刑を見るのが庶民の娯楽だったってヤツか…


 ああはなりたくないと言う心理をついた犯罪抑止と、アイツより自分はマシな人間だと優越感を持たせる事で、現状の不満を抑える効果を狙っているんだろう。


 借金奴隷は給料を前借りした労働者と言う感じだね。

 労働条件を契約で交わし、借金を返し終えたら解放される。


 クラスやスキルによって労働条件が有利になるから、積極的にステータスを公開する人が多いみたい。


 後は戦争があった場合に捕虜奴隷が出る事があるが、これは敵国が身代金を払わなかった人がなるそうだ。


 借金奴隷と犯罪奴隷の中間のような扱いで、命と最低限の衣食住の保障はされるが、労働条件は選べないんだって。


 敵国の捕虜だから逃がしたら主人の責任になるため、国の方で確認も行うから酷い扱いだと罰則もあるので、そんなに悪い環境でもないらしい。


 そんなこんなで人間の国に多大な影響を与えたエルフだが、現在ではお伽噺の存在なのでエルフの恐ろしさも薄れてしまっている。


 そして、ごく一部とは言えエルフは人間の国で住んでいたりする。


 そのエルフを見つけた人間が奴隷にせずとも、捕獲したり見せ物にするような事があれば戦争が起こる可能性がある。


 つまり、あの2人がエルフである事は、絶対に知られてはならないのだ。


「それじゃあ、僕達は彼らを見なかった事にすれば良いのかな?」


「基本はそれで良いかと。もしも彼ら以外のエルフを見かけた場合も、決して近付かず気付かぬフリをして下さい。もしもエルフだと気付いた事を知られれば、命の危険があります。出来れば外でエルフの話もしないようにして下さい」


 そうだった!エルフは皆殺しがデフォなんだから気をつけなきゃ。


「歴史に埋もれた真実ですか…今の王族は知ってるんでしょうかね?」


「王族には代々伝えられているはずです。もちろん、あの時代から存在する国に限られるでしょうが。私の予想では、新興の小国などでもエルフに滅ぼされた国はあると思います。どこにあるとは言えませんが、エルフの里に近いと、どうしても発見される確率が高いですから」


「思い出しました。何年か前に隣国でエルフを見たとか言う噂が流れた後に、ドワーフの耳と間違えたバカが騒いだと言うオチが流れた事がありましたね。なるほど、真実を隠すために火消しの噂を流しているのですね。完全に否定すると逆に信憑性が増してしまうから、見間違いや勘違いにする方が噂が消えるのは早いですから」


 隠密的な人が、情報収集と情報操作をするんだね。

 シビリアンコントロールは情報操作からだよ。


 まぁ前世ではインターネットが普及して、色んな情報があり過ぎて大多数が1つの情報を信じるなんて事が少なくなったから、コントロールが難しくなってたけど。


 独裁者が牛耳るような国は、政府が流したフェイクニュースを信じてる人も大勢いるらしい。


 近代社会で戦争をするような国は、テロリストと同じだよ全く。

 それか前時代的な戦争屋ウォーモンガーだよ。


 あ~この世界は前時代の更に前時代くらいだから、独裁者もテロリストもわんさか居そうだ。


 この国のトップがまともな人でありますようにと祈ろう。


 だいたい戦争をしたがるのは権力者だけだよ。

 それで戦争になって困るのは、結局は末端の弱い一般人だよ。


 日本なんか犯罪者引き渡し条約すら、先進国では2ヵ国しか交わしていないとか、あり得ない事だぞ。


 他国では100ヵ国以上とかもあるのに、どんだけ外交能力低いんだよ。

 本気で国民を守るつもりがあるのか?


 戦争を心配して増税するくらいなら、外交に力を入れて戦争が起きない努力をしろよと思う。


 僕が戦争を嘆いている内に、セルバスと先生は情報交換の約束などを交わしていたみたい。


 うん。何かまた前世の記憶がクッキリ出て、興奮しちゃってたよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る