第57話 boy meets boyだよ!

「ヴィンセント様、何やら難しい顔をされてましたけど、何かございましたか?」


「ちょっと思い出した記憶に引きずられてました」


「あぁ、もしや先程の過去の自分が恥ずかしいとか言っていたのも、前世の記憶のせいですか?」


 うっ。何で忘れたい事を掘り返すの。


「そうです。何か急に記憶が鮮明になる事があって、感情までつられてしまうみたいなんです」


「それは興味深いです。前世の記憶は曖昧とか仰られてましたよね。全てを思い出した訳ではないのですか?」


「いえ。ほとんどは曖昧で他人事みたいな気持ちなんです。確かに違う世界で生きていた記憶はあるんですが、個人的な事になると思い出せないので、余計に物語を読んでいるような第三者目線とでも言いますか…」


「なるほど、転生者と言うのも難儀なものですね。まぁ、今回の事でヴィンセント様の奇行は前世の記憶のせいと判明したので、今後は治療院に駆け込む事にならないように気を付けますよ」


「お、オリバー先生!僕だって好きで前世の記憶を思い出してる訳ではないんですよ!それを奇行だとか酷いです!」


「では可愛い仕草と言っておきましょうか?」


「…もういいです。カレンにオリバー先生が意地悪をすると言っておきます」


「ヴィンセント様、それはないですよ!もう揶揄ったりしませんから!」


「さっきも揶揄わないって言っていたのに、同じ事を繰り返す先生が悪いんですよ」


「ふふふ。ヴィンセント様はオリバー先生と仲良しですね」


 ほら、セルバスに笑われたじゃないか。


「仲良しなのでカレンには言わないで下さい~」


「もう、わかりましたよ。本当に僕を揶揄うのは止めて下さいね」


「ありがとうございます!やはりヴィンセント様は優しいですね」


 本当に調子が良いんだから。


「それでは、私の話しは終わりましたので、この後はお好きに話して下さい」


 ああ、女神様に誓った話しは終わりって事ね。


「ねえ、結局セルバスって何歳なの?」


「実はエドヴァルド様と同じ52歳なんです」


「お祖父様と同じ歳って、学校が同じだったの?」


「同じ歳だったのは偶然で、初めはダンジョンで出会ったんです」


 お~何だかドラマチックな出会いの予感だね。


「それで?何でお祖父様に仕える事になったの?」


「それはエドヴァルド様の名誉のために内緒にしておきます。どうしてもお聞きになりたいのでしたら、エドヴァルド様に了承を得て下さい」


 何それ!余計に気になるよ。


「え~凄く気になる。セルバスは冒険者だったんだよね?」


「はい。依頼を受けてダンジョンに潜っている時に、学校の課題で探索をしていたエドヴァルド様のパーティーに出会ったんです。詳細は省きますが、それ以来たまにパーティーを組む事になりまして、その縁でお仕えさせて頂く事になりました」


「う~ん。その詳細が知りたいのに。セルバスは口が固いから、お祖父様にお聞きするしかないか」


 セルバスは焦らし上手だな。


「エドヴァルド様とセルバスの冒険譚も面白そうですね。噂で少しだけ聞いた事がありますから、内緒にしていてもいつかは知られるんじゃありませんか?」


「エドヴァルド様との約束ですから、私の口からは申せません」


「それじゃあ、先生が知ってる噂話でいいので教えて下さい」


「残念ながら時間切れですね。ギルドに到着したようですよ」


 話しに夢中で気付かなかったが、いつの間にか到着していたよ。


 先にセルバスと先生が降りて、僕はセルバスに降ろされる。


 僕的には抱っこで降りる方が恥ずかしいが、貴族的には飛び降りたり手をついて降りる方がアウトらしい。


 受付でカードと受領証を渡して、依頼の完了手続きをする。


 依頼料は現金かカードに入れるか聞かれたので、悩んだけどカードに入れて貰った。

 魔道具にカードを差し込んで操作すると返してくれた。


 ポイントは1になってるね。

 新たに残高の項目が増えて、300ゲルトと表示されている。


 銅貨何枚とかじゃないんだ?

 先生がこの国の通貨の単位だと教えてくれた。


 銅貨1枚は100ゲルトなんだって。

 昔は銅貨と銀貨と金貨しかなかったから、銅貨1枚が1ゲルトだったとか。


 物価が上がって、銅貨の下に鉄貨が作られたけど、更に下の硬貨は作られなかったそうだ。


 だから、鉄貨より価値の低い物は数量で調整するんだって。


 ギルドを出て馬車に乗り込む。


 もうお昼寝から卒業する年齢だと思うのだが、今日は沢山活動したから、ギルドに着く前に聞こうとしてた噂話を聞く前に寝落ちしてた。

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