第26話 干物を食べたよ!
食後の紅茶を飲みながら、今日の侯爵邸での出来事を母に話す。
特に伯父のアハンなお店の事で祖母とのやり取りに、父まで疑われかけたりしたけど楽しく語らったよ。
父は今日は遅くなるらしいから、帰った時に誤解されない事を祈りながら、おやすみなさいを言って、お風呂に入って寝た。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
おはようございます。
今日も良い天気だよ。
さて父は帰ったのかな?
顔を洗って着替えたら、食堂に向かう。
「おはようございます、お母様。お父様は帰って来たのですか?」
「おはよう、ヴィンセント。お父様は昨夜は宮殿にお泊まりすると連絡がありました」
少しピリッとする空気を感じたが、気のせい気のせい。
「では今日はそのままお仕事ですか?」
「いいえ、お昼までには帰ってくる予定だそうです」
「なら、お昼はご一緒出来ますね!」
無邪気に喜ぶ息子を演じる。
その内に演技スキルが生えるかもね。
昨日のお土産の、何の魚かは判らない干物が出された。
おおう、米が食べたい。
干物とパンは微妙過ぎる。
香ばしく焼かれた干物は、この世界で初めて食べるのに感動が減る。
ふむ。ナイフとフォークで身を解して、レモンとオリーブ油のサラダに混ぜてパンと食べれば意外といけるな。
「ヴィンセント、その食べ方は一体?」
ハッ、思わず干物を美味しく食べる事に集中して、マナー違反だったかも!?
「その、マナーが悪かったですね。申し訳ございません」
「そうではないの。何だか美味しそうね?」
「はい。この方がパンに合いますよ」
すると母も真似して同じようにパンに挟む。
僕なんかより余程キレイに解してるよ。
「まぁ、本当にこの方が美味しいわ」
母もお気に召して良かったよ。
マシューにも干物の食べ方を教えておけばよかったね。
川魚は干物にしないから、塩焼きが主流だものね。
何とかキレイに食べ終えて、今日はオリバー先生が来るから部屋に戻る。
やって来た先生は、随分と窶れてるね。
「おはようございます、オリバー先生」
「おはようございます、ヴィンセント様。うう」
「先生、どうしたんですか?」
如何にも聞いて欲しそうな感じなので、とりあえず乗ってあげよう。
「カレンが怒って口を聞いてくれないんですぅ」
「それは前にもありましたよね?」
「今回は、それだけじゃなくて寝室まで別なんです!」
あ~それは僕にもどうする事も出来ないな。
「謝るしかないですね」
「謝りました!何度も懇願しました!」
「なら、もう時間が解決するまで待つしかないですね」
「そんなぁ~」
情けない声でしくしくしないで。
「ほら、先生。早く授業を始めないと、余計にカレンが怒りますよ」
「ううう。わかりましたよ」
「後で僕からもカレンに、許してあげてと頼んでおきますから」
「本当ですか!?絶対ですよ!」
必死過ぎるよ先生…
それから魔法の基礎知識を勉強して休憩時間になり、呼び鈴を鳴らす。
カレンが無表情でお茶を入れてくれたが、先生の方を一切見ないけど凄く意識してると言ってるようなものだよね。
「カレン」
僕が呼ぶとピクリと手が震えるのが見えた。
「ハイ、ヴィンセント様」
返事が固いなぁ。
「いつも美味しい紅茶をありがとう」
「…いえ、お誉め頂きありがとうございます」
思わぬ事を言われたような反応だね。
どうやらカレンも引っ込みがつかなくて、ツンが出たままなんだろう。
僕が取りなすのを待っているのかも?
「それでは失礼致します」
先生が未練たらしくカレンを見てるけど、ツンが出てる時は思った事と反対の事を言ってしまうから、そっとデレを待つしかないよ。
休憩の後は魔法の実践だ。
と言っても誰でも使える生活魔法だけど。
この世界では誰もが魔力を持っていて、生活魔法は練習すれば誰でも使える。
魔法にはイメージが大事で、詠唱はその補助が主な役目だから、自分がイメージ出来ればどんな言葉でもOK。
魔力は使いすぎると疲れるから、自分の限界を知る事が大事。
魔法の使えるクラスの場合は、スキルを覚えるまで練習したら、後はスキルがイメージの補助をするため、無詠唱も可能になる。
魔法の使えないクラスの場合は、生活魔法以外のスキルを覚えるのに凄く時間がかかる。
さっき習った基礎知識は、こんな感じだったよ。
最後の魔法の使えないクラス云々は、過去の文献で見ただけなので、本当に覚えるのか、どれくらい時間がかかるのかは不明との事。
自分のクラスに合ったスキルを覚える方が早いし、そこまでして覚えても結局、専門のクラスには勝てないから誰もやらないそうだよ。
努力が無駄になると思われてるのか…
あれ?でも違うクラスのスキルを覚えると、他のクラスに進めるみたいな感じのイメージがあるけど…
例えば騎士が、司祭の魔法を覚えたら聖騎士になる…みたいな事はないのかなぁ?
やはりゲームとは違うんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます