第25話 ミミズは虫じゃないよ!

 さて、カレンに付き添われて庭に来ました。


 トム爺が手入れをしてるから、バッタやカブトムシみたいな虫はいない可能性に今更気付いた。


 いや、奴らはどこからでも湧いて来るから、1匹や2匹なら見つかるはずだ。


 とりあえずハードルが低そうな、蟻がいないか探してみる。


「おや、坊っちゃん何かお探しですかな?」

「あ、トム爺。実は虫がいないか探してたんだけど、怖くない虫が欲しいんだ」

「ほほほ、怖くない虫ですか…ふむ、確かこの辺に巣があったはず」


 おお、流石はトム爺。

 庭の事ならトム爺に任せれば大丈夫だね。


「おお、いましたぞ。これは如何ですかな?」


 トム爺の掌にいたのは…


「うぎゃー!ミミズー!」


 ニョロニョロしてるのは駄目なんだよ~。


「おやおや、これは怖くない虫だと思ったのですが。ほほほ」


 ほほほじゃないよ!ミミズは虫じゃないだろ!

 虫って頭、胸、腹に別れてて足が6本のヤツだろ!


 僕が涙目で叫ぶと、トム爺もカレンもキョトンとしている。

 どうやらこの世界ではミミズは虫扱いらしい。


 カルチャーショックだよ。


 兎に角、足が6本の小さめの虫を所望します。


 で、ようやく蟻をゲットしたよ。

 日本で見る蟻より若干大きいけど…

 蟻は咬むから子供には怖い虫だと思ったらしい…怖いの認識が違い過ぎる。


 確かに地球でも毒がある蟻とかいたけどさ。

 毒がないなら、少々咬まれても構わないよ。


 宝物入れのビンに蟻を入れる。

 宝物と言っても子供らしさをアピールするために拾った、キレイな石を入れてるだけだからね。


 ついでに雑草をむしって入れておく。


「トム爺ありがとう」

「いえいえ、お役に立てたようで、良かったですわい。ほほほ」


 また部屋に戻って実験の続きだ。


 結果は、生きてる虫も草もお財布に入る事がわかった。

 まずは宝物入れのまま入れた後、蟻と草を小銭入れに入れてみたら、単体でも表示されたよ。


 虫は入ったけど人間で試すのは怖いよね。

 息が出来るのかとか、意識はあるのかとかが判らないもんなぁ。


 取り出した蟻は元気だけど。

 う~ん。とりあえず1日入れっぱなしにしてみようか。


 宝物入れのフタを開けたまま、念のため水とキャンディを一緒に入れておこうか。


 それからカレンに入れて貰った、熱い紅茶もお財布に入れておこう。

 時間停止かどうかの実験だよ。


 もう一度ステータスを確認してみたら、経験値がレベルは2、クラスも2、スキルは4上がったよ。


 色んな物を出し入れするのが経験値が良いのかな?


 この辺で眠くなったので、少しお昼寝する事にする。


 夕食の前に起こされて、コシコシ目を擦りながら紅茶を出してみると、熱いままだった。


 どうやら時間停止機能付きっぽい。

 なら蟻も草も入れた時のままなのか。

 とりあえず明日まで入れておこう。


 ベッドを出て伸びをすると、カレンが服のシワを伸ばしながら整えてくれる。


 今日の夕食も父は不在だね。

 まぁ王族の警護は、相手の予定次第なとこもあるからね。


 労働基準法なんてないブラックが当たり前な世界だよ。


 カレンだって僕が子供で比較的早く寝るから、労働時間が短い方だよね。

 結婚するまでは住み込みだったけど、結婚して通いになったんだ。


 セルバスは住み込みだから、いつ寝てるのか判らないくらい、いつも見かける気がする。


 我が家は住み込みと通いが、だいたい半々くらいだよ。

 侍女や執事は元々が貴族だから、本館にある従業員用の部屋に住んでる。


 平民の庭師や料理人や掃除等の下働きは、別棟の従業員宿舎に住んでるよ。


 警備の騎士と兵士に通いが多いのは、気楽に飲みに行きたいからだろう。


 貴族家で働く人には身分証が発行されるから、内壁の出入りも簡単なチェックだけだよ。


 貴族だからと言っても、内壁の内側に全員が住んでる訳じゃないしね。


 それから我が伯爵家の正騎士は父を除くと2人しかいなくて、基本的に城壁内にある騎士宿舎で生活してる。


 父の従者として宮殿で働いてるから、送り迎えに来た時くらいしか見ないよ。


 父も騎士宿舎に部屋があるから、泊まり込みで警護する時は、そちらで寝ているらしい。


 馬は馬車用の4頭と父の愛馬が1頭いるよ。

 馬丁は厩舎の側の専用宿舎で、家族が住み込みで働いてる。


 夫婦と息子2人に娘が1人いて、たまに馬を見せてもらいに行くよ。


 息子は12歳と8歳で娘は6歳だったかな?

 一応、当家では学校に通える様に対応しているよ。


 初等部は8歳から12歳までの子供に読み書き計算と、目指す分野ごとに基本的な知識を教えているよ。


 貴族と平民では違う学校だけど、僕もいずれ行く事になるから、機会があれば学校について聞いてみたいな。


 僕が従業員の雇用条件に想いを馳せている間に、食事が終わったよ。

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