第10話 秘密にしたよ!

「ヴィンセント様…これは暫く誰にも言わないように致しましょう」


 さっきまで大発見だ褒賞だと騒いでいたのに、なんで?


「私にも全く同じものが出たならば、問題はなかったのですが、ヴィンセント様のステータスに、このような能力があると知られたら、教会に拘束される可能性があります。私も決して他言しないと、女神ルミナマイア様に誓います」


 教会が拘束するって異端審問とか?

 僕が怯えたのがわかったのか、先生が安心させるように笑う。


「教会に拘束されるとは言いましたが、新しい能力を調べるためですから、酷い事をされたりしませんよ。もしそんな事をしたら、女神様の御意向に逆らう事になりますからね」


 最悪バレても酷い事にはならないなら良かった。


 なんでも、個人のクラスやスキルの事で教会が干渉する事は出来ないけど、ステータスは全ての人に関係すると言う理屈で、干渉してくる可能性があるんだとか。


 だからステータス画面の事さえ、知られないようにすれば大丈夫らしい。


「ヴィンセント様が教会に行ってしまうと、私がセザーニア家に来れなくなるので、カレンの働く姿が見られなくなるし、本も読めなくなるから、絶対に知られないようにしましょう!」


 全部アンタの都合だよ!?

 いや、教会に行きたくはないけど、何か納得出来ない。


「カレンにも念のため口止めをしておきます」


 貴族の邸で働く従業員は、契約魔法で情報を漏洩しないように縛られるんだとか。


 ステータスは契約魔法の範囲になっているはずだけど、念のために必ず口止めするか、誓約を立てさせるようにするんだって。


 さっきの女神ルミナマイアに誓いますってヤツだね。


 何もかも秘密にするような契約にしてしまうと、必要な仕事も出来なくなるため、主人に不利になる事を禁止するとか、口止めされた事を喋らない様にするんだって。


 だから、もし重要な話をする場合は、先に口外しない様に言ってから話す様にするんだって。


 先生は立場上、僕が口止めしても両親には相談出来る契約だから、自分で誓約して契約を発動させたんだって。


 契約を解除するには父と契約者の両方の同意が必要だから、両親には暫くは内緒にしておいた方が良いってさ。


 と言う事で実験終了です。

 羽根ペンは、出したいと思ってクリックしたら出たよ。


 後は勉強の続きをしてお昼になったから、今日は先生とサロンで昼食になったよ。


 お昼は軽食で済ませる文化なので、軽く摘まめるサンドウィッチやスコーンみたいな感じだよ。


 飲み物は僕はオレンジに似た果物を搾ったもので、先生は最近流行りのコーヒーだ。


 コーヒーが最近までなかったのは、産業革命前の近世ヨーロッパな感じだから、長距離輸送の手段が少ないからみたい。


 魔法や魔道具で生活面では現代と同じような部分もあるから、そこまで不便を感じないのは良かったよ。


 上下水道があるから、お風呂もあるしトイレも水洗だよ。


 それにしても先生も何気に優雅に食べるよね。


 緑っぽい黒髪を肩の下まで伸ばし、髪より明るい緑色の眼で、父よりは線が太いがイケメンだよ。


 カレンは明るい栗色の髪を結い上げ、淡い琥珀の眼はツリ目気味でキツく見えるが、キャリアウーマン風の美女だ。


 貴族って美男美女率が高いな。

 まぁ僕も超が付く美男美女から生まれたから、自分で言うのも何だが美幼児だよ。


 オレンジに近い金髪は緩くウェーブがかかり、父譲りの紫紺の瞳はくりっとした二重で愛らしいよ。


 チートと言えるのは顔だけかも…


 体力も人並み程度だし、ラノベを参考に魔力を増やす方法を色々試したけど、全く成果はなかった。


 と言うより、魔力を感じなかった。

 例えば、赤外線やX線や放射線なんかは眼で見えないよね。

 筋肉を動かす時の電気信号なんて感じないし、息を吸った時に血液に酸素が入る瞬間もわからない。


 きっと魔力はそんな感じの物なんだと思うよ。

 そこにあるけど感じない、だけど魔法を使おうとすれば使えるんだから、魔力を感じなくても使えるって事だと思う。


 ただし魔力を調べる魔道具はあるから、魔道具を壊すチートイベントはあるかも?


 それこそ体力や筋力みたいに地道に使っていると、それなりに鍛えられるだろうから、自分では感じないけど凄い魔力を持ってるとかさ。


 それから知識で内政チートとかも、この世界で内政チート出来る程の知識なんて僕にはないよ。


 チェスに似た物もリバーシに似た物もあるし、トランプっぽいのもあるし、簡単な物なんて誰かが思い付いてるって事さ。


 それにチートで楽が出来るなら嬉しいけど、単に目立つだけなら面倒なだけだから、平凡に生きていけるのが一番だよ。

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