第18話 デレが来たよ!
男性陣の危機を煽り、祖母の溜飲が下がった所で祖父が手紙を読み終えたみたい。
「全員、席を外しなさい」
「な、父上、何故ですか?!」
伯父はいい歳して反抗期なの?
さっきから反発ばかりしているね。
「これはセザーニア伯爵家の意向だ」
「それなら侯爵家の私が聞いても問題ないでしょう!」
「お前は、どうしてそう短絡的なんだ。今のお前は侯爵家の人間ではあるが、爵位も持たぬ身だ。伯爵家の当主の意向を無視していい立場ではない」
「な、私は侯爵家次期当主ですよ!?」
「だからどうした?ならば侯爵家当主は私だ。私の命令が聞けぬのか?」
「くっ…わかりました。出ていきます!」
「エドヴァルド様?私にも後で教えて頂けるのですよね?」
「む?うむ、言える事ならば教えるから、ここは席を外しなさい」
「わかりましたわ。でも可愛い孫に酷い事をしたら、判っていますよね?」
「私はそんなに非道な人間ではない。きちんとルーベンとも話しはしてある」
「では今は引きましょう」
「そなたらも外に出ろ」
「「ハッ」」
ミュシャとセルバスも出ていき、祖父と2人となった。
しかし、最初は恐いと思ってた祖父が、祖母には頭が上がらないのを見た事で心に余裕があるよ。
「ゴホン。お前のクラスとスキルについては、ルーベンから聞いている。手紙に昨日はクラスの効果を調べていた様だと書いてあったが、何か解ったか?」
う~ん。オリバー先生が、クリックやお財布の画面については言わない方がいいと言ってたから、この事は言えないよね。
となると、言える事って何もないや。
「いえ、特に何もないです」
「今日もお使いとして手紙を出したと書いてあったが、何も変化はないのか?」
ステータスを見ると、クラスとスキルの経験値が1上がったし、レベルの数値も1上がったけど、体感的には何も変わらない。
「特に何も感じないです」
「お使い中も変わった事はなかったか?」
「いつもと同じだと思います。特に魔力を使う事もないですし、重い荷物を持った訳でもないので、変わったとしても、わからないです」
確か父は剣を持つと身体が軽くなって力が湧くとか言ってたから、クラスに関係する行動や装備で何かが変わるんだろうな。
「なるほどな。では、スキルはどうだ?使ってみたか?」
「え?スキルってどうやれば使えるのですか?」
僕の場合はステータス画面からなら使えるけど、普通のスキルの使い方って聞いてもよく解らなかったよ。
だって使い方は何となく解るって言うだけなんだもの。
「ううむ。使い方が解らないのか?」
「ハイ。それに僕は今日ここに来る時に、セルバスから初めてお金を見せて貰いました。実際には財布も持ってないですし、お金の価値もよくわかりません」
「そうか…少し待っておれ」
そう言って、廊下とは違う方のドアから出ていった。
お茶請けのクッキーを食べよ。
ポリポリ、サクサク。
小さめのクッキーと言うかボーロだから、口を汚さず食べれるな。
さすがツンデレ爺さん。
孫のために小さめサイズを用意してたのかな?
暫くして祖父が何か箱を持って帰って来た。
「この中から好きな物を選びなさい」
テーブルに置かれた箱を見ると、いくつかの革袋と四角い手の平サイズのケースが入っていた。
もしかして財布かな?
セルバスが硬貨を出したのと似た袋だよ。
四角いケースは前世の小銭入れに似てるし。
「これが財布だ。硬貨を別々の小袋に入れてから、大きな袋に入るのが主流だ。同じ袋に入れる者もいるが、多く入れると目当ての硬貨が見つからないから、数枚程度にしておけ。最近はこのケースが人気だな。仕切りがあって、硬貨を別けて入れられる」
やはり思った通りだった。
これなら小銭入れタイプが良いよね。
色は黒っぽい茶色と、オレンジっぽい赤色と、ベージュに近い白色と、ガンメタリックな銀色だね。
こんなカラーバリエーションがあるとか、異世界の技術も凄いね。
と思ったら、茶色はミノタウロスの革で、赤色はサラマンダーの革で、白色はペガサスの革で、銀色はメタルリザードの革なんだって。
ファンタジー素材って、こんなに無造作に使われてるの?
武器や防具を作る事も出来ない端材だから安いんだって。
侯爵家の安いだから、きっと庶民には手に入らないレベルなんだろな~。
メタルリザードの財布にしたよ。
それと小さな革袋も2つくれた。
お金以外も入れられるからって、おまけにキャンディを入れてくれたよ。
お祖父様のデレが凄い。
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