第5話 試してみたよ!
そもそもクラスって何だろう。
それ程ゲームに詳しい訳じゃないけど、昔やった事があるのは、転職して色んな魔法や技を覚える感じだった。
HPとMPはあったけど、ステータス値の設定はなくて、職業で攻撃力が高いとか魔力が高いという差があるとかだったんだよね。
これと似たようなシステムなら、クラスも転職したら他のスキルを覚えたりするのかなぁ?
でも先生は転職出来るような事は言ってなかったよ。
もう一度クラスをクリックしてみるが、同じ事しか書いてない。
ううん、ダブルクリックとか?
カチカチっとするのは難しいな。
マウスでダブルクリックするのが苦手だったから、そのイメージが邪魔をするのかな。
スマホのタップなら出来るのに…
指を当てるようにして、トトンと叩くイメージをしてみる。
おお、出来た…けど内容が変わらない。
いや、追加で出る項目がある。
クラス:お使い(0/100)
スキル:お財布(0/100)
ここも経験値(推定)があるって事は、レベルが上がるのかクラスアップするのかだよな。
他の項目の表示は変わらなかった。
でも謎が出来た。
クラスアップするなら、皆が知らないはずがない。
なのに先生の説明になかったのは、まだ習う範囲じゃなかったのかなぁ。
それに今まで誰も、クリックやダブルクリックを試してないのかな?
ステータスの説明で言われなかったし、知ってたら不明なクラスやスキルが出たら、絶対に試すよね。
ネットもないから、知っている人が拡散したり出来ないし、僕の周りの人が知らないだけかもだけど。
父か先生あたりに聞いてみるかな。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
お昼寝の後に課題の書き取りをコツコツやっていると、夕食の用意が出来たとカレンが呼びに来た。
彼女は僕に付けられている侍女で、母の乳母であり侍女であるニーナの娘だ。
僕の乳母は、現在は妹のシャーロットの乳母として働いてる。
妹は2歳だから洗礼を終えてないため、頻繁には会えない。
洗礼をしてない内は、他の人の魔力に影響されて悪いものが憑くから、神様に取り上げられるとか言ってた。
なら産まれたすぐに洗礼すればと思うけど、魔力が安定しない赤ちゃんが洗礼を受けたら神様に取り上げられるとか。
つまり幼いと魔力が悪影響して、死んでしまうらしい。
日本でも七五三は子供の死亡率の高さから、お祝いしたり祈願したのが始まりと言うから、こちらでも7歳までは死亡率が高いんだろう。
迷信もあるかもだけど、魔力がある世界だからこその考え方かもね。
だから乳母は、魔力の低い下級貴族や平民にさせるみたい。
僕もまだ子供だから魔力は高くないため、短時間だけど時々は妹に会えるんだ。
カレンの先導で食堂に着くと、母は既に席に座っていた。
「お母様、お待たせ致しました」
「ヴィンセント、今日はお疲れ様でした」
「お父様は、ご一緒ではないのですか?」
「ええ、シャガーリオ侯爵様にお話しがあって、出掛けています」
「お祖父様にですか?」
「ええ。お仕事のお話しだそうで、あちらで夕食は済まされるそうです」
「そうですか。夕食をご一緒したかったです」
「きっと明日はご一緒出来ますよ」
仕事の話と言っているが、たぶん僕のクラスの事を相談しに行ったんじゃないかな?
シャガーリオ侯爵である祖父は、父の実父で宰相をしている。
父は次男だけど、クラスは聖騎士と言う上級クラスだから、第一近衛騎士団で王族の警護をしている。
近衛騎士団の中でも第一は王族警護が主な仕事のため、貴族しか所属出来ない。
そのため例外はあるが、当主か嫡男しか入れないエリート集団だ。
次男以降はいずれ平民になってしまうから、貴族の婿養子にでもならないと第一に入れない。
しかし父のクラスを知った王太子殿下が自分の側近にと言ったらしくて、祖父から侯爵の他に持っていた伯爵と子爵の内の伯爵を譲られたらしい。
この事からも、父のクラスに対する期待値が凄いとわかるよね。
いくら複数の爵位を持ってても、普通は嫡男が全てを継承するし、子爵でも良かったのに伯爵になってるんだもの。
もし祖父に相談して、変なクラスの僕なんか廃嫡しろとか言われたら、どうするんだろう?
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