第4話 計算したよ!

 それから然り気無く大聖堂から追い出され、入り口のホールに戻ると、次の祝福の儀に来た貴族とすれ違う。


 どうやら向こうの爵位が下みたいで、端に寄って黙礼するのを横目に通り過ぎたよ。


 次の予約時間だから追い出されたのか…

 あの貴族も大司教が待ち構えてるとは思うまい。


 父も態々教える程の交流もない貴族だったみたいで、挨拶すら交わさなかった。


 それにしても王都とは言え、同じ日に祝福の儀に来る人が思ったより多いなぁ。


 領地持ちの貴族は自領で行う場合が多いと聞いたよ。

 ハズレクラスの時に噂が広まるのを恐れての事らしい。


 だから領地を持たない法衣貴族や敬虔な信者しか大聖堂で祝福をしないから、1日に1人か2人くらいしかいないと聞いてたんだけど。


 確か僕の予約をする時に既に予約があったため、午後からになったって聞いたから、少なくとも3人は来てるよね。


 貴族の中に誕生日が近い子供が、何人もいるのが不思議な感じだ。


 ひょっとして平民の方も、司教や司祭も出払ってるくらい、今日の祝福の儀に来る子供が多かったのだろうか?


 前世で聞いた事があるが、停電があった翌年に出生数が伸びるとか、ブラジル人の一番多い誕生日を遡るとリオのカーニバルがXデーな感じの何かがあるのかもね。


 真っ暗だと他にする事がないとか、イベントで興奮して盛り上がっちゃうとか。


「ヴィンセント、早く来なさい」


 僕がXデーを計算している間に、馬車が横付けされていた。


 既に乗り込んだ父にせかされて、セルバスが僕を持ち上げる。

 お手数おかけします。


「ヴィンセント、気を落とさないで。大司教様でも知らないクラスと言うことは、素晴らしいクラスかもしれないでしょう?」


 考え事をしてる僕が落ち込んでるように見えたのか、母が慰めようとしてくれるのが気まずい。

 まさか両親のXデーを計算してたとも言えないのさ。


「お母様ありがとうございます。そうですね、お父様のお手伝いが出来るクラスかもしれないですよね?」


 もし買い物を頼まれても、着いて来なくても大丈夫だよ?


 1人で出来るもん。


「まぁ、ヴィンセントったら、お父様のお手伝いがしたいなんて良い子ね」


 手伝いがしたいとは言ってないが、変なクラスでも優しく接してくれる母を見ると、どうやら捨てられフラグは立たなかったみたいだね。


「そうだな。ヴィンセントに出来る事を探そう」


 難しい顔をしていた父も、母様の台詞に思うところがあったようだ。


 いつものラブラブ夫婦に戻って、母様の腰に手を回している。


 息子の前で止めて欲しい。



 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 さて家に戻って服を着替えたところで、ステータスについて考える。


 頭の中でステータスと念じると、目の前にステータス画面がでる。


 ゲームみたいにステータスが見えるけれど、HPもMPもなければINTやATKなんかの数値もないシンプルなものだ。


 レベルがあるのが逆に違和感すら感じる。


 ゲームやアプリなら、各項目をクリックしたら詳細が見えるものもあるが、名前とか押してみても何も起きない。


 いや指が突き抜けるから、押す事も出来ないと言う方が正しい。


 これは僕の頭の中にあるんだから、当たり前か…

 あ、それじゃあ頭の中でクリックするイメージならどうだ?


 ほぁっ!?ホントに出たよ!


名前:ヴィンセント・ダン・セザーニア(セザーニア伯爵家長男)


 詳細と言うか肩書き?

 他の項目もクリックしてみる。


年齢:5歳(595年7月27日)

性別:男(人種の雄)

レベル:1(5/10)

クラス:お使い(頼まれ事をこなす)

スキル:お財布(自分と他人の財布を別ける)


 んんん?何か微妙な情報が出たよ。


 年齢の横は生年月日だよね。

 性別は身も蓋もないな。

 レベルの数値は何だろう?

 クラスはお使いの説明か?

 スキルのお財布は、お金を別けるって事か?


 わからない事が増えただけな気がするなぁ。


 そう言えば死んだ時の記憶は曖昧だけど、誕生日の日付が死んだ日と同じ気がする。


 女神様が出てきた割に、死因や転生について何一つ解らなかったけど。


 誰もが祝福の儀で女神様に会うなら、父や先生も女神様への対応について教えてくれるはずだから、転生者だからこそ出て来たと思うのに、何の意味があったのか。


 このクリックした情報が転生者特典で、他の人は出ないとか?

 何かそれって微妙過ぎる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る