第34話 ふかふか再びだよ!
実験について話が弾んでる先生と祖父は、思った通り気が合ったようだ。
さっきは喧嘩をしてるみたいだったけど、どうやら僕の事をちゃんと考えてくれる人なのか、お互いに確認する為だったようだね。
まだ契約魔法をかけてないから、ステータスの事には触れず、教えても大丈夫なスキルの事などを話しているよ。
相槌を打ちながら聞いていたけど、気が付いたら寝てたみたい。
セルバスに起こされて、顔を濡れた布で拭かれて漸く目が覚めた。
どうやら祖母が帰って来たみたいだね。
部屋に呼ばれたから、熱くスキル談義をしてる2人は放置して出る。
ミュシャに先導されながら、忘れていたステータスを確認すると経験値はレベルが1、クラスが1、スキルが2増えていた。
祖母の部屋に入ると、またもや熱烈歓迎でふかふかだったよ。
アイスティーにオラジンを搾った、オラジンティーを出してくれた。
僕がオラジンが好きだって言ってたからだって。
好きな物を覚えててくれると嬉しいよね。
「ヴィンセント、お手紙を届けてくれて、ありがとう。あの子ったら相変わらず要件しか書かないのね」
「お祖父様へのお手紙も同じみたいです」
「ヴィンセント…いえ、ヴィンスと呼んでもいいかしら?」
「ハイ、お祖母様。お母様もそう呼びますので」
「ヴィンス、貴方のクラスの事を聞きました。貴方のお父様もクラスの事で苦労をしました。例え家族でも、クラスの事で貴方に無理強いをするようでしたら、私達を頼ってちょうだいね」
「ありがとうございます、お祖母様。でも大丈夫です。お父様も初めは驚いていましたが、お母様と一緒に僕の事を考えてくれています」
「まぁ。本当にヴィンスは賢くて良い子ね」
うわ、また頬擦りされちゃったよ。
ふかふかが腕に…これは不可抗力なんだ。
「そうだわ、あれを取ってちょうだい。今日のお茶会は偶々だったのだけれど、魔道具店をやってるお友達だったから、お願いして手に入れたのよ。これを肌身離さず持っていてね」
侍女が差し出した箱を、祖母が僕に渡す。
開けるように促されたので、リボンを解いて蓋を開けると、中にはペンダントが入っていた。
魔道具店と言っていたから、これは魔道具なんだろう。
魔法陣の様な模様が刻まれたメダルに、小指の先くらいの魔石が嵌め込まれている。
「お祖母様、これはどの様な魔道具なのですか?」
「ふふふ。これはね、魔法やスキルによる鑑定を阻害する魔道具なのよ。悲しい事に、余計な事をする人がいますから念のためです」
「え?それって高価な物なんじゃあ」
「大丈夫よ。お友達価格で安くして貰ったのよ。それに祝福の儀のお祝いだから、遠慮せずに貰ってちょうだい」
偶々とか言ってたけど、魔石の色が僕の眼に合わせた紫紺だよ。
こんな色が偶々なんてあり得ないでしょ。
「ありがとうございます、お祖母様。絶対に大切にします!」
「うふふ。喜んで貰えて嬉しいわ」
祖母のふかふか攻撃で窒息しかけたよ。
祖母にペンダントを着けて貰うと、胸の辺りにメダルがくる。
金具をかけたままでも頭から被れば1人で着けれそうだけど、貴族としては駄目だよね。
ペンダントは普段は見せてても構わないけど、お茶会やパーティーの時は服の中に隠しておくように言われた。
お茶会等でこれ見よがしに魔道具を着けているのは、招待した家を信頼してないと喧嘩を売るようなものだからだそう。
隠しているのに誰かが魔道具を指摘したら、自分が勝手に魔法をかけたと自白する様なものだから、誰も言わないんだって。
ややこしいよね、貴族って。
魔道具の魔力は半年くらいは持つけど、魔石の色が薄くなってきたらセルバスが補充してくれるってさ。
夕食の時間になったので、食堂に向かう。
我が家より豪華な内装と、シャンデリアがキラキラしてるよ。
壁は白と金で統一されてて、絵画が何点かかけられている。
これで家族用の小規模な食堂なんだってさ。
絵の中の1つは、シャガーリオ侯爵家の初代である、アルフレッド・エル・シャガーリオ公爵だそうな。
祖父のミドルネームは、初代にあやかってエルを貰ったんだって。
初代は銀髪に近いグレーの髪に紺色の瞳で、確かに祖父に似ているね。
王族は銀髪やグレー系の髪が多いんだって。
瞳も青系統が多くて、祖母の瞳も黒っぽく見えたけど近くで見ると濃紺なんだよね。
この初代のクラスが軍師で、隣国が攻めてきた時の戦争で大活躍して、今の侯爵領が割譲されたんだって。
戦争で得た隣国の一部を含む領地は王都からは遠いため、行き来するのは大変らしい。
でも海もあるし南にある豊かな土地だから、結果的には良かったんじゃないかな。
それも軍師の戦略だったりしてね。
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