第35話 テンプレだよ!
祖父と先生が遅れてやって来た。
話が弾み過ぎて後少しと言いつつ、なかなか部屋を出なかったみたい。
「待たせたな」
「お待たせして申し訳ございません」
謝ってるけど、祖母の雰囲気が母が怒った時に似てるよ。
「時間を忘れるほど、楽しそうで何よりですわね」
「その、ヴィンセントの事を聞いていたからな。大事な事だから時間が足りなかったのだ」
「まぁ、ヴィンスの事ですか。では私にも教えて下さいますよね?」
「あぁ…もちろんだとも」
祖父は先生と同じで、妻が絡むとポンコツになるのかな?
祖母の言葉にタジタジな祖父を見ながら、本当にこの国の宰相なのか疑問に思った。
「ん?ヴィンセント、そのペンダントはどうした?先ほどは着けていなかったよな」
「お祖母様に頂きました」
「祝福の儀のお祝いですよ。可愛い孫のために用意するのは当然ですわ」
祖母の
「…もちろん、私も後で渡そうと用意はしておるからな。後で部屋に来なさい」
「お祖父様、ありがとうございます」
祖母に対抗してるのか、本当に用意してたのか不明だけど、貰える物は貰っておくよ。
「さ、それでは食事を運んでちょうだい」
祖母の言葉に、待ち構えていたのか、次々と料理が並べられていく。
飲み物は僕以外はお酒だけど、その他は量を変えて僕にも同じ物が出された。
冷たい緑色のスープは、ホウレン草じゃなくてレンホー草って…微妙過ぎる名前に笑いそうになったよ。
メインはダンジョン産のクジャックと言う、尾羽が派手な鳥だそうな。
雌の方が色は地味だけど美味しいんだって。
この世界の名前は転生者の悪ふざけなんだろうか?
それとも、ジャガイモの語源はジャカルタ芋が変化した結果みたいな感じで、語源は転生者の言葉とか?
そうじゃないと、前世の名前に似すぎてるよ。
最初は、偶々この国の発音が前世の名前に似てる物があるんだと思ったけど、知れば知るほど似てる名前が出てくるよ。
僕と言う転生者の証拠がある訳だから、他に転生者がいたとしても驚かないよ。
ショコーラのケーキを食べながら、他の転生者に出会った場合はどうするか考える。
王道主人公なら、ライバルとして敵対した後にラスボスを一緒に倒したり、闇堕ちした親友を助けて黒幕を一緒に倒したりだよね~。
王道ヒロインなら、魔王に拐われた所を助けたり、流行りの悪役令嬢ならざまあを手伝ったりかな?
駄目だモブの僕には、死亡フラグしか立たない予感しかない。
どちらかと言うと、王道主人公の仲間になって魔王軍の四天王に殺られるか、闇堕ちした親友に殺されるキャラだよ!
王道ヒロインも勇者の当て馬にされたり、悪役令嬢なら一緒に断罪される未来しか見えない。
万が一見つけても関わらない様にしなきゃ。
「ヴィンス?口に合わなかったかしら?」
「ふえ?」
「美味しくなかったかしら?さっきから難しい顔をしているわ」
「あ、いえ美味しいです。ショコーラとかの名前って、誰が付けたのか考えていました」
「まぁ、ショコーラの名前?私は考えた事もなかったわ。ヴィンスはやっぱり天才じゃないかしら?」
いや、祖母バカはやめて下さい。
「僕は天才じゃないです」
「いやいや、謙遜せずとも良い。その歳で名前の語源について考えられるなんて、凄い事だぞ」
「ヴィンセント様は、前から子供とは思えない程の聡明さを感じさせていましたからね」
祖父や先生まで止めて!
噂になったりして、転生者だとバレたくないんだよ。
それに平凡な僕に期待しないで欲しい。
今は前世の記憶で子供の割に賢いかもしれないけど、大人になれば只の人なんだから。
何とか天才だと持ち上げられるのを必死で止めたけど、前世っぽい名前を付けた人や語源は誰も知らなかったよ。
デザートを終えたら、祖父の部屋に行ってお祝いを受け取る事になったよ。
本当に用意はしてたみたい。
この前は言い出せなくて渡せなかったんだって。
乙女か!?
プレゼントはブローチで、これも攻撃をされたら結界で弾く魔道具だそうな。
これはパーティー等でもタイピンやマント留めとして使えるから、ちゃんと着けておけだって。
流石はツンデレの年季が違うね。
渡される前に、我が家にあった使ってない魔道具だから、お前のために買った物じゃないから気にするなって、テンプレの言葉を頂きました。
でもブローチに使われているオレンジ色のファイアオパールは、明らかに僕の髪の色に合わせているから。
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