第37話 空耳だよ!
こちらの挨拶に対する反応を待っていると、伯父以上に偉そうな挨拶を頂きました。
「私はシャガーリオ侯爵家をいずれ継ぐ事になる、ピエール・ドニ・シャガーリオだ!」
「まあ、何ですかその挨拶は!ピエールは挨拶のお勉強をやり直した方が良いですね。その様な有り様では、御披露目会も出来ませんよ。それに、シャガーリオ侯爵家を継ぐとも決まっていません」
「な、何を言っているのですか、お祖母様!?私が跡継ぎだと、お父様もお母様も仰っています!」
「それは、貴方の両親が言っているだけです。跡継ぎである嫡男だと、侯爵家当主が国に届けなければ認められません。それまではいくら身内が跡継ぎにすると言っていても、対外的には只の侯爵家の子供です。ヴィンセントの挨拶を聞いたでしょう?貴方が正式な名乗りをする場合は、"オーギュスト・フォン・シャガーリオが長男ピエール・ドニ・シャガーリオ"です」
「でも、ソイツは只の伯爵家で…」
「お黙りなさい!その様な事をお茶会やパーティーで言ってご覧なさい、貴方や貴方の両親だけでなく、侯爵家が躾も出来ない貴族として恥をかくことになります!ましてやヴィンセントは、貴方の従兄弟であり庇護すべき分家の長子です。それが解らないならば、私は貴方を嫡男にさせない様にと、エドヴァルド様に進言致します!」
「そ、そんな!お祖母様、私は間違っていません!お母様が身分は尊いものだと、いつも仰っています!私は只の侯爵家の子供ではなく、王家の血も継ぐ、皆が頭を下げるべき存在です!」
あちゃあ…こりゃ伯母は身分至上主義のガチの差別主義者みたいだね。
何か見えて来たぞ。
祖父母がこんなに優しくて出来た人間なのに、伯父があんなに偉そうなのは、どうやら伯母の影響のようだね。
息子も英才教育で、絶賛差別思想発動中だよ。
祖母も気付いたみたいで、無表情で怖いオーラを出しているよ。
「どうやらエドヴァルド様と、早急に話しをしなければなりませんね。ピエール、貴方は部屋へ戻りなさい」
「お祖母様!私は…」
「黙りなさい!貴方が身分を笠に着るのならば、私は現国王の妹であり、現侯爵の正妻です。私の指示に従えないならば、侯爵家から出ていきなさい!」
涙目になったピエールが、僕を睨み付けて走り去って行った。
どうやらフラグは折れなかったようだ…
またも坊主憎けりゃ…で、僕に八つ当たりするメンバーが増えた予感。
存在感がなかったけど、ずっと着いて来てた侍女に祖父への面会を伝えに行かせた祖母は、疲れた様なタメ息をついて表情を切り替える。
「本当にごめんなさいね。ヴィンスには会わせない様に気を付けていたのだけれど。庭に居るのが見えたのでしょうね」
「お祖母様、僕は気にしていませんから大丈夫です」
「ああ、本当にヴィンスは良い子ね!」
またもふかふか攻撃に撃沈されたよ。
説明してくれた所によると、ピエールの母親は、現国王の同腹の姉の娘なんだって。
つまりお祖母様にとっても姪ではあるが、伯父の婚約者になるまでは、ほとんど交流のない人だったそうな。
で、姪の婚約者を決める時に侯爵以上の家で年齢が合うのが、伯父か父しかいなかったので婚約の打診があったが、父はご存知の通り母と婚約したので、自動的に伯父になったと。
王家に貸しを作ると言う事で、祖父もシブシブ受けた話しだそうな。
これを断ると、後は10も年下の侯爵家の子息か、別の侯爵家の後妻になるから、国王に猛プッシュされたら断れなかったらしい。
家格は下がるが伯爵家なら、いくらでも選べたのにと祖母が怒りを燃やしている。
国王の姉は王家の血筋なんだから侯爵以上じゃないと相応しくないと、伯爵以下を見下してるような人だってさ。
小さい国の王族も見下してるから、国の恥をさらす事になるため他国にも出せない様な姉王女に、前国王も手を焼いていたんだって。
そんな事をぶっちゃけて良いの?
しかも、その姉王女は豊かなシャガーリオ侯爵家に嫁ぎたかったらしくて、祖母に並々ならぬ対抗心を感じてるらしい。
でも行き遅れと呼ばれる年齢になるのもプライドが許さなかったから、フェルメーリオ侯爵で妥協したらしい。
祖父が姉王女より年下で良かったね。
でも結局は伯父の婚姻で、フェルメーリオ侯爵家と親戚付き合いをしなければならないから大変なんだとか。
分家のどこかから養子を貰って育てようかしらと、不穏な言葉が聞こえた気がしたけど、僕は知らないよ、きっと空耳だよ。
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