第45話 買えるよ!
名前:ヴィンセント・ダン・セザーニア
ランク:なし
ポイント:0
依頼:王都本部P3026
こんな感じに表示されるんだね。
カードの色はランク名と同じになるんだけど、仮登録は白なんだね。
ランクは本登録になるとアイアンの10級から始まるけど、仮登録だから"なし"のようだ。
ポイントは依頼を達成したり、ギルドに貢献したら加算されて、依頼を失敗したり規則違反をすると減算される。
規定のポイントを溜めると昇級するんだけど、7級以上に上がる時は昇級試験があるんだって。
これは一定の強さがないと、7級以上のダンジョンでは死傷率が高くなってくるからだそう。
依頼は、受注したギルド名と依頼書の番号が表示されていて、番号を押すと内容が確認出来る。
同時に受けられる依頼の数はランク毎に違うんだけど、仮登録は1個だけとの事。
試しに依頼書番号を押してみた。
依頼書P3026
依頼者:ジョルジュ・ラダ・ジェリコー
依頼内容:小包の配達(王都東地区)詳細はギルド受付にて説明。
報酬:銅貨3枚
期限:8月4日の6の鐘まで
報酬が日本人の感覚だとメチャ低賃金なんだけど…
物価が違うから解りにくいけど、どうやらこれが普通らしい。
銅貨1枚でフランスパンの様な僕の背丈くらいあるパンが買えるから、銅貨3枚あれば平民なら2~3日分くらいの食費になるそう。
高い物は凄く高いから一概に言えないけど、日本の4分の1から5分の1くらいの物価みたい。
そう考えると郵送料としては高く感じるね。
じゃあグリーンロックタートルも、価値としては10億円どころではなかったと言うことか……
期限は時間で表示すると理解出来ない人もいるから、この様な表示なんだとか。
1の鐘が鳴るのが午前6時で、その後は2時間ごとに午後6時まで鐘がなり、6の鐘は午後4時と言う事になる。
受付の人が見せてくれた東地区の地図によると、配達先は大通りに比較的近い場所のようだ。
平民なら歩いて行くのだろうが、僕の場合は東地区の大通りまでは馬車で行って、路地から歩きで行く事になる。
こんな楽をして良いのかと思ったけど、ギルドとしては依頼を達成すれば文句はないから、乗り合い馬車を使っても構わないそうだよ。
乗り合い馬車は大通り沿いにある馬車停留所からなら、何処でも銅貨1枚で乗せてくれるんだって。
往復しても銅貨2枚だから、銅貨1枚は残るのか…何か割りに合わない気がするけど。
ギルドの案内も終わったし、早速行ってみよう。
サブマスにお礼を言ってギルドを出る。
まだ明るい日差しに空を見ると、今朝はあった雲はどこかへ消え青天が広がっている。
ちょっと喉が渇いたなと思いながら馬車に乗ると、セルバスから飲み物を渡された。
水筒マグみたいなフタ付きの入れ物で、フタの一部が開いてそこから飲める様になっている。
これなら馬車でも溢さず飲めるね。
セルバスの用意の良さが半端ないよ。
祖父母とオリバー先生も、それぞれ渡された飲み物を飲んでいる。
「そう言えば、お祖父様は依頼者の方を知っているのですよね?」
「ああ、ジョルジュは私の同級生でな。気が合ってダンジョン実習でパーティーを組んでいたんだよ」
「ダンジョン実習なんてあるんですか?」
「ああ。貴族の学校に限らず平民の学校でも、10歳になると授業で冒険者登録をするか選べるんだよ」
「そうなんですね。登録するのは全員ではないのですか?」
「やはり危険も伴うからな。女性や攻撃職以外のクラスの中には、冒険者登録をしない者もいるぞ」
「そうなんですね」
「とは言え、8級までは攻撃職でなくとも攻略する事は可能だから、ほとんどが冒険者登録をするんだがな」
なんでも、学校では安全面からパーティーを組んでないとダンジョン実習に参加出来ないため、初めは学校側がメンバーを決めるんだって。
そこで同じパーティーになったのがきっかけで仲良くなり、それ以来の腐れ縁だとか。
ジョルジュさんは子爵家の三男だから家を継ぐ事もないため、クラスが商人だった事もあり、卒業後は商業ギルドに登録し行商から始めて、今では大きな商会になったとか。
そのままだと平民になってしまうのだが、爵位を購入して現在は男爵なんだとか。
爵位って買えるんだ…
領地を持たない貴族だと、官吏や騎士なんかの職につけないと平民と変わらない生活になるから、結構売り出される事があるみたい。
伯爵以上と領地持ちの場合は血筋優先のため、血が途切れた場合は爵位を返上しないといけないから、跡継ぎを作るのは必須だとか。
血筋がわかる魔道具があるから騙す事は出来ないし、爵位を譲る時もチェックされるんだって。
魔道具って凄いね。
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