第48話 命懸けだよ!
待ち合わせ場所に馬車は来てなかった。
まぁ配達が結構早く終わったから、侯爵邸まで往復する時間を計算すると後30分程度は待たなければならないだろう。
これはこの辺のお店を見ても良いよと言う思し召しなのでは?
と言う事で、近くの雑貨屋っぽい店に行きたいとおねだりしてみた。
「そうですね。少し時間もありますから、これも勉強になるでしょう。大通りにある店ならば、庶民向けであっても品質の良い物を取り扱っていますからね」
セルバスも反対しなかったので、早速そちらに向かう。
お店の外観は白い壁にレンガ色の屋根は周りと同じだけど、壁の一部にタイルの様なツルリとした色石がお洒落に貼られている。
隣の店は
こうして差別化されていると、迷わなくて良いね。
セルバスが木目がいかされた無垢のドアを開けると、ドアベルがカランと鳴る。
「いらっしゃいませ」
店の奥のカウンターにいる女性店員は、ちょうど接客中のようだ。
ドアベルの音に反射的に声を出したみたいだけど、全くこちらを見ていないよ。
間口よりも奥に広い作りの店内は、色んな物があるため雑然として見えるが、並べられた商品はきちんと埃も払われているため、先生が言ったように品質の良い物を取り扱っている良い店のようだ。
今生では初のお店にテンション漠上がりの僕は、キョロキョロと商品を物色する。
布が巻かれた状態で棚に入っていたり、並べられた綺麗な瓶や櫛や髪飾りなどの小物からして女性が好みそうな店なのかな。
少し奥に進むと革製品が並べられた棚があり、祖父がくれた財布に似た物やナイフの鞘やカバンなんかが置いてあるから、女性向けの店ではない様でホッとした。
「ありがとうございました」
どうやら先客の買い物が終わった様で、こちらを向いた若い男性と目があった。
ビクッと固まった男性が見てるのはルーカスさんみたい。
まぁ騎士丸出しの人がいたらビックリするよね。
ルーカスさんが警戒するように見てるから恐がってるみたい。
特に危険人物ではないと判断したのか、ルーカスさんがドアの前を開ける位置に動く。
金縛りが解けた様に動き出した男性がそそくさと出て行くのを見て、やっぱり今度はお忍びモードでお願いしなきゃと思ったよ。
ちなみに店員は貴族の応対をした事があるのか、驚いた顔は一瞬だけで神妙な顔をしてこちらに近付いて来た。
「いらっしゃいませ。お探しの物がありましたら、お手伝いさせて頂きます」
「質問があれば呼びますので、そちらで仕事をしてくれて構いません」
セルバスが店員に対応しているので、あまり時間もないし物色する方を優先しよう。
店の奥にはランタンやコンロの様な物が置かれたキャンプ用品コーナーみたいな感じの一角がある。
生憎と前世でキャンプをした経験は、中学校で行ったオリエンテーリングだけなんだよな。
宿泊なしならバーベキューでテントを張ったり飯盒炊爨もした事はあるけど、キャンプが趣味とかじゃないから道具を見てもよくわからないや。
「これはダンジョンや野営用の道具ですね」
僕が繁々と見ていたせいか先生が説明してくれたよ。
ダンジョンによっては真っ暗な洞窟タイプや、地上と同じ様に昼と夜があるタイプなんかがあるから、必ず光源になる物を用意しておくのだとか。
生活魔法のライトは使い続けたら疲れるし、魔力を感知して寄って来る魔物もいるから、魔力を使わない道具を用意するのは常識なんだとか。
コンロっぽい見た目の道具は、そのまんまコンロだった。
焚き火用の薪が手に入らない場所なら便利なんだけど、持ってない人の方が多いんだって。
貴族の子女は料理が出来ないから、せいぜい固形のスープを溶かしたりお茶を入れるくらいしか使わないし、魔法に長けた人ならお湯を沸かすくらいなら簡単に出来るからだとか。
その横に置かれた手の平サイズの四角い箱は結界の魔道具で、使用すると直径3m程の結界が張られるから休憩する時などに使用するんだって。
これは強い魔物には効果がないけど、7級ダンジョンくらいまでなら問題ないそうだ。
もっと強い結界が張れる物が欲しいなら、魔道具店に行く方が良いそうだ。
テントはターフの様に屋根だけ張るタイプしかなかった。
と言うかテントじゃなくて、荷馬車などに雨避けとして張る用の布だった。
設置型の物は魔物に襲われて逃げる時に捨てる事になるから、マントだけで寝るのが普通だとか。
温度調整付きのマントが開発されてからは、野営が快適になったんだって。
うん。僕の思ってるキャンプとは別物だったよ。
この世界では魔物対策が第一に来るのだとわかった。
全てが命懸けになっちゃうんだね。
娯楽でキャンプする人は、狂人扱いされるかもね。
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