第31話 馬に乗ったよ!

 と言う事で厩舎にやって来たよ!


 ジェロームは栗毛の牡馬ぼばで目が可愛いよ。

 父が近付くと嬉しそうにいななく。


「よしよし。ジェローム」


 じっと父が目を見ると、ジェロームもいつもと違う雰囲気を感じたのか、静かに見つめ返す。


 父がスキルを使ったのか、ジェロームがほんのり光った。


「おおっ!成功したぞ!」


 凄い、本当にテイム出来るなんて!

 ジェロームも凄く嬉しそうに鼻筋を擦り付けているよ。


「お父様、どんな感じなんですか?」

「そうだな。いつもよりジェロームの気持ちがハッキリ判るぞ。体調もなんとなく判るな。これはかなり使えるぞ」

「良かったですね!」


「これは面白いですね。聖騎士に従魔術があるのは、馬との連携が必要と言う事なのかもしれません。もしかしたら、新しいスキルを覚える切っ掛けになる可能性も…興味深いですね」


 先生の病気が始まった。

 新しい事を知ると、そちらに意識が向いてしまって、周りの事を時として忘れるからなぁ。


 早速ジェロームを馬場に引き出して跨がってる父も、大概ですけどね。


「おお~ジェロームそうだ、いいぞ」


 障害物をヒラリと飛び越えたり迂回したり、凄いスピードだね。


 一頻り走らせた後、こちらにゆっくりと走って来るジェロームが心なしか大きく見える。


「これは凄いぞ。手綱で指示をしなくても、思った通りにジェロームが走ってくれる。なぜ今まで従魔術を試さなかったのか、勿体ない事をしたな」


「ジェローム凄かったです!僕も乗せてくれますか?」


 あまりにも父が軽々と乗ってるのを見て、僕も乗りたくなったよ。


「おお、いいぞ。ジェロームも乗せたいって言ってる」

「わ~い」


 オリバー先生が持ち上げた僕を、父が受け取って前に乗せてくれた。


 おお、前世の修学旅行でオジサンが引く馬に乗ったくらいの経験しかないが、思っていたより高く感じるのは、子供になったからかな。


 観光用に持ち手が付いてた鞍と違って、掴まる所がない。

 父が腹に手を回して支えてくれてるが、不安定に揺れるのが怖い。


 父の腕を掴んでいると、笑いながら落とさないから大丈夫って…フラグじゃないよね?


 ジェロームもなるべく揺らさないように歩いてくれてるって言われて、漸く落ち着いて来たよ。

 少しして揺れに慣れたら、楽しくなって来た。


「お父様、ジェローム、ありがとう。凄く楽しい!」

「そうか。ならヴィンセントの馬も買うか」

「本当ですか!?」


「ああ、と言っても子馬を買って育てるから、乗れるまで2年くらいかかるがな」

「僕も子馬のお世話をします!」


「子馬の頃から育てたら信頼出来る馬になるから、ちゃんと世話をするんだぞ」

「お父様もジェロームを育てたのですか?」


「そうだ。15歳の時に家にいた馬から生まれたジェロームを見て、絶対にこいつだと思ったんだよ」

「わ~素敵です。僕もそんな子と出会いたいです」


「お前なら出会えるさ。さて、そろそろ出掛けないと、父上が癇癪かんしゃくを起こすな」

「あはは、お祖父様はツンデレですから」

「なんだ?そのツンデレとは」


 しまった!つい気が弛んでいたよ。

 しどろもどろに、普段はツンツンして厳しい人が、時にデレデレと優しくなると言う概念を説明したよ。


「なるほど、ツンデレか…ヴィンセントは面白い事を考えるな。テイムの事といい、うちの息子は天才かも」


 いやいや、ツンデレは僕が考えた訳じゃないから…

 親バカは止めて欲しい。


 面倒だけど、このまま出掛ける訳に行かないので着替えに戻る。


 ヒラヒラ多めのシャツに、膝下くらいのハーフパンツとハイソックスにローファーと完璧なお坊っちゃんだよ。

 ハーフパンツはサスペンダーでずり落ちないように止める。


 サスペンダーはゴムみたいに伸び縮みするけど、これも魔物素材らしい。

この世界にゴムの木はないのかな?


 玄関に向かうと両親がイチャラブしていた。

 どうやら仲直りしたみたい。


 両親がお見送りしてくれて、オリバー先生とセルバスと一緒に馬車に乗る。


 二度目の侯爵邸に向けてレッツゴー!

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