第65話 カレンは偉大だよ!

 ステータス画面から他の使い方があるか試してみたけど、特に新しい発見はなかった。


 でも、魔法がお財布に入るのを見せた時の先生の興奮具合は、部屋に来たカレンが呆れた程だった。


 暫く放置しておくしかないと、お茶を入れて去って行くカレンの背中から、不穏なオーラが見えた気がしたが、きっと気のせいだよ。


 お茶を飲みながら、ブツブツと呟き空中を見てる先生を眺める。


 ステータス画面のポテンシャルを引き出そうと頑張ってるらしい。


 前にもやってるから、流石にこれ以上は出て来ないんじゃないのかな。


 そう言えば先生のクラスとスキルって何なんだろう?


 魔道具が作れるんだから、そっち系のスキルがあるんだよね。


 例えば、スキルに錬金術があるなら、ステータスに錬金画面とかあって、材料を入れたらピカッと光って出来るとかはロマンを感じるよね。


 ゲームだと持ち物の中から作れる物が表示されたり、足りない物が解ったりするんだけど、そんなのが現実にあれば凄い便利だよね。


「おぉお!」


「うひゃっ」


 いきなり先生が叫ぶからビックリして変な声が出ちゃったよ。


「先生、どうかしたのですか?」


 空中を見たまま固まっている先生に声をかけるが、反応がない。


 ただの屍…ゲフンゲフン。


「先生、カレンが怒っていましたよ」


「えっ!?カレン?」


 キョロキョロと見回す先生に、やっと声が届いたようだ。


「先生、何かわかりましたか?」


「ああ!そうでした!ヴィンセント様!聞いて下さい!」


 聞いているので、お茶でも飲んで落ち着いて欲しい。


 カップを差し出すと、まだ興奮しているようだけど、少しマシになった先生の話に僕も興奮を抑えられなくなるとは思わなかったよ。


 その内容とは、ステータスを色々と弄くっていたら突然画面が変化したそうだ。


 つまり、僕のステータスみたいに次のページが現れたんだって。


 画面には魔道具と書かれていて、先生が今まで作った事のある魔道具のリストがあったんだとか。


 更に魔道具名の横には作成に必要な材料も書かれていて、家にある材料と持っていない材料が色分けされているらしい。


 ほあ?それって僕がさっきイメージしてた錬金術の画面に似てるような…


「転生者であるヴィンセント様だけが、スキルに関するステータス画面が出るのだと思っていましたが、私のステータスにも新たなシステムが出て来たと言う事は、全ての人に新たな可能性が出たと言う事ですよ!これは世紀の大発見です!くぅ、他の人のステータスも確認したいですね!そうだ、カレンに協力してもらいましょう!夫婦の共同作業です!これは素晴らしいアイデアだと思いませんか!?」


 またもや興奮し出した先生の撃に、今度ハリセンでも作っておこうかと想った。


 カレンを呼んで落ち着かせて貰ったよ。


 改めてカレンの偉大さを痛感したよ。


 多分さっきの興奮状態を見ていたから、対処方法を考えて来たのだろう。


 まさか、離婚届を突き付けるなんて荒業だとは思わなかったけど。


 泣き出した先生に僕はドン引きしたけど、カレンは冷静に椅子に座って話しを聞けと言ってた。


 やはりカレンを怒らせる事だけはしないでおこうと心に誓ったよ。


「グスッ…ヴィンセント様、申し訳ございません」


「いえ。先生が落ち着いたのなら良かったです。ほら、カレンも本気で離婚するつもりはないでしょうし、ね、カレン?」


「いえ。主に迷惑をかける伴侶など必要ありません。今回はヴィンセント様の寛大なお心に添ったまでです」


 ちょっとカレン!?

 また先生が泣き出したじゃない!

 そう言う重い責任を主に押し付けちゃダメ!


 僕は離婚しろなんて言ってないからね!?


 ワチャワチャしたけど、やっと話が出来る状態になった。


 で、まあ、先生とカレンは夫婦だから、クラスやスキルをお互いにある程度把握しているので、協力して貰える事になったよ。


 なんだかんだ言っているけど、カレンは先生のお願いに弱いのかもしれない。


 しかし、僕がステータスにこんな画面があればなんて考えたら、似たような画面が現れるなんて、ただの偶然なんだろうか?


 何だか気付いてはいけない事に気付いてしまったような……


 いやいや、これは単なる偶然だよ。

 僕の想像が実現するなんて、あり得ないよね。


 それなら、もう少し便利な機能があっても良いし、色々試したけど全部は実現してないし。


 とりあえず、先生も落ち着いたみたいだし、ステータスの検証をやろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る