第40話 商売上手だよ!
レストランに到着してセルバスに降ろしてもらうと、色合いは周りと同じだけど貴族の邸宅の様な造りの建物だった。
あれ?これがレストラン?
そうだよね~貴族が行くレストランだもの、前世のファミレス的な場所な訳がなかったよ。
玄関ポーチのある入口にはドアマンがいるし、中はホテルのロビーみたいだね。
執事のような格好の人がニコヤカに近付いて、恭しく貴族の礼をする。
「いらっしゃいませ。シャガーリオ侯爵様。お部屋にご案内致します」
流石はオーナー、顔パスだよ。
しかもあっちに見えているテーブル席じゃなくてお部屋なんだね。
2階に上がり、中庭が見下ろせる広い窓のある部屋に案内された。
上品なグリーンを基調にした壁紙に風景画と静物画が飾られ、シャンデリアも小さな物が2つの落ち着いた内装だ。
侯爵家の食堂を見た後だと地味なくらいだが、ここは色んな貴族が来るレストランだから、豪華にし過ぎても駄目なんだろう。
直径3m程のテーブルは、大理石の様な模様の緑色の石で、グリーンロックタートルの甲羅なんだって。
オークションで手に入れて、王都でも名のある職人に加工してもらった逸品だそう。
さっき豪華にし過ぎてもとか言ったけど、このテーブルだけでお釣りが来る金額かもしれない。
僕が甲羅の金額に遠い目をしてたその時、オリバー先生が部屋に案内されて来た。
「お待たせして申し訳ございません。本日はお招きに預かり、光栄でございます。侯爵夫人も昨夜は失礼致しました」
「ああ、オリバー君か。さぁ座りたまえ」
「ふふ。昨夜はエドヴァルド様が引き留めてしまったのですもの。お気になさらず、楽になさって。今日は私にヴィンセントの事を教えてちょうだい」
先生がテーブルを見て固まってるよ。
前に話してくれたものね。
グリーンロックタートルが、王都のオークションに出たって事を。
ロックタートルは魔物としてはおとなしい為に乱獲されてしまい、見つけようとするなら、魔境と呼ばれる王都の北東にある樹海に行かなければならない。
奥に行くほど強い魔物が生息し、ミスリル以上の冒険者じゃないと入れないと言われているくらい、危険な場所なんだって。
更にロックタートルは育つのに非常に時間がかかる上に、取り込む鉱石によって甲羅の色が変わるため、大きくて綺麗な色や模様が出ている物は特に希少になる。
そんな希少な3m以上のグリーンロックタートルとなると、オークションで大金貨5千枚は下らないとか言ってたよね。
最低でも5億円以上って事か…しかも加工賃を入れたら一体いくらなんだろ?
そんなテーブルで食事とか落ち着かないよ!
庶民感が抜けない僕と、希少な素材に感動している先生が、プルプルしながら席に着くと、祖父がグリーンロックタートルのオークションについて話してくれたよ。
大金貨1万枚で落札出来たんだって…
ひぃっ!10億円だよ!
これでも1頭丸々の値段の割に安かったんだって。
冒険者は丸ごとオークションに出したけど、素材を別々に出せば倍くらいの値段になるそうだ。
運ぶには時間停止付きの大型マジックバッグが必要なので、ロックタートルが丸ごと出てくる事は滅多にないらしい。
大抵は現地で解体して甲羅等の時間停止の必要がない部位だけを持ち帰るため、鮮度が命の内臓等の素材が出る事が少ないらしい。
肝臓と血は合計で大金貨5千枚くらいで売れるだろうけど、これは薬にしていざという時用に保管しているって。
手足の先くらいの欠損なら直せる中級エリクサーが20本も作れたから、10本を薬師ギルドに大金貨5千枚で売ったんだって。
腎臓や目玉も薬の材料になるから纏めて大金貨千枚で売って、薬の作成代を値引きさせたとか。
薬師ギルドはエリクサーを倍の値段で、個人や国に売ったらしい……1本1億円…
ちなみに心臓は色んな人が欲しがるから、オークションに出して大金貨3千枚で売れたんだとか。
なんでも毛髪や肌が若返る薬になるんだってさ。
…それは一部の人が熱狂的になる素材だね。
皮や骨とか爪なんかは武器や防具になるから、職人ギルドに売ったついでに、テーブルの加工賃をまけさせたんだって。
肉や胃腸類は食べられるから、一部はレストランにキープして残りは商業ギルドに売ったそうだ。
魔石は魔道具ギルドに売って、これで全てのギルドへ恩を売れたとか。
祖父のクラスは実は商人じゃないの?
めっちゃ商売上手だね。
侯爵家の財力を感じながら食事を終えたよ。
この後はいよいよ冒険者ギルドだ。
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