第2章 冒険者(仮)になったよ!

第41話 冒険者ギルドだよ!

 冒険者ギルドは大通りに面した場所にあって、王都の中央に近い場所にある本部に来たよ。


 支部は東西南の外門に近い大通りに1ヵ所ずつあって、王都の外に行く冒険者は、そちらを主に使っているらしい。


 レストランは貴族の邸やホテルの様な外観だったけど、冒険者ギルドはシンプルな白壁の四角い三階建てで、玄関はドアが開けっ放しになっている。


 冒険者ギルド王都本部と書かれた看板の絵が、ゴブリンっぽいシルエットに剣が刺さっている物騒なデザインなんだけど…


 冒険者らしく武器や防具を身に着けた人はあまりいないみたい。


 貴族の様なフリフリの服の人がいるのは、僕達みたいに依頼に来てるのかな?


 建物から少し離れた馬車停めで降りて歩いて行く。

 馬車停めは貴族の出入りがある大きな建物の近くには、だいたい設置されているそうだ。


 有料だけど飼い葉や水も置いてあり、世話をする人もいるから、馬を休ませる事が出来る様になっている。


 この馬の世話や馬糞拾いの様な依頼もギルドは出していて、平民の子供がお金を稼ぐ手段として人気らしい。


 街中の依頼は、ギルドに登録しなくても受けられる物もあるから、貧しい人にとっては貴重な収入源になっているんだって。


 確かに誰かが掃除しなきゃ、馬糞だらけで汚くなっちゃうし、虫が湧いて不衛生になるよね。


 ギルドに登録していなくても受けられるって事は、僕でも受けられる依頼もあるんじゃあ?


 ワクワクしながら入ったけど、予約してたから受付でスムーズに2階に通されて、依頼を見る隙もなかったよ。


 部屋は広めの応接室で、貴族に合わせたのか内装も豪華な感じだった。


 先に待っていた四十歳くらいの男性と三十歳くらいの女性が、素早く立ち上がって礼をする。


「シャガーリオ侯爵閣下、侯爵夫人、お久しぶりでございます」


「ああ、久しぶりだな」

「お久しぶりね」


「こちらは私の孫のヴィンセントだ。よろしく頼む」


「ハッ、お任せ下さいませ。ヴィンセント様、私は冒険者ギルド王都本部のサブマスターをしております、バスコ・ドゥ・ローエンです。こちらが契約魔法を担当します、ボナールです。以後お見知りおき下さい」


「ヴィンセント・ダン・セザーニアだ。よろしく頼む」


「ハッ、よろしくお願い致します」

「メイ・ボナールです。よろしくお願い致します」


 ミドルネームを名乗らないから、どうやらボナールさんは平民のようだね。


 オリバー先生は冒険者として同行してるからか、セルバスと一緒に控えている。


 ソファーに座ると、ドアがノックされてお茶が運ばれて来た。


 お茶を出した女性が出ていくと、バスコが今日の依頼について切り出した。


「侯爵閣下からご連絡頂いた内容によりますと、ヴィンセント様とシスレー殿を入れた三者で契約すると言う事でよろしかったでしょうか?」


「ああ、そうだ。ヴィンセントのクラスとスキルについての教育をオリバー殿に依頼するから、その時に知り得た情報を契約で縛りたい」


「では、先ずは契約魔法の内容をご確認下さい」


 契約書を出して来たのを、祖父と先生が確認している。


 祖父が契約書の内容に少し訂正を入れさせたけど、こう言う契約魔法はテンプレートがあるみたいで、それをベースに使う事が多いんだって。


 契約書の清書をしてる間に依頼書を書いて、サブマスターがサインをして控えを祖父に渡す。


 ギルドの依頼書って複写になってるんだね。


 先生が依頼書を確認した後にギルドカードを出す。


 受付と同じ魔道具が用意されていて、依頼書とカードをかざすとカードに内容が登録されて受領した事になり、依頼書はギルドが保管しておくんだって。


 通常は冒険者がギルドに完了報告をするが、護衛等で別の町に行くような場合などでは依頼主が報告するそうだ。


 今回の依頼は長期になるから、依頼解除をしない限りは1ヶ月単位で自動的に依頼完了した事になり、依頼料が振り込まれるんだって。


 更に1年単位で更新を行い、金額や待遇の交渉が出来ると言うホワイトな契約らしい。


 ただ、知り得た僕のステータス情報を三者の合意なく他者に漏らせない、故意に契約を破れば命を奪うと言う一生有効らしい強めの契約魔法がブラックな感じだね。


 それで正式な契約書が作成され、祖父と僕と先生がサインをすると、契約魔法を使えるボナールさんが読み上げる。


 読み上げた文字がキラキラ光って、契約書から剥がれるように空中に散らばって行く。


 わぁ~契約魔法ってこんな感じなんだ。


 全てを読み終わると、散らばった文字がクルクルと回りながら砕け散って、光の粉が僕達の身体に吸い込まれて行った。


 特に身体に異変はないけど、これで契約は完了したみたい。

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