第21話 脳筋じゃなかったよ!
「おい…」
んあ?
「おい…ヴィンセント。大丈夫か?」
「あ、お祖父様?」
実験の事を考えてボーッとしてたや。
あれ?そう言えば初めて名前を呼ばれたよ。
「体調が悪いのか?」
「あぁ、大丈夫です。すみません、レベルアップの条件は何か考えていました」
「そうか。何か気付いたのか?」
祖父にさっき考えた、クラスによってレベルアップに必要な経験値が違うと言う仮説を伝えてみる。
スキルのあるなしや、スキルを使う時と使わない時の差なんかでも違うかもと言うと、心当たりがあるみたい。
ちなみに経験値って思わず言ってしまったが、どうやら経験値があると言う学説はあったみたい。
難しい言葉を知ってるなと褒められた。
前世知識ですみません。
祖父のクラスは宰相…ではなくて政治家なんだって…なんか微妙だね。
いや、日本でも政治家が大臣や首相なんだから、おかしくはないがファンタジー世界で政治家って、何か違和感があるよね。
文系職や生産職は魔物を倒さなくても、クラス関連の行動でレベルアップするから、クラスによって経験値が違う可能性は昔から言われてたらしい。
もちろん文系職や生産職でも、魔物を倒す方がレベルアップをしやすいんだって。
その為には結局、攻撃スキルの多いクラスの方が有利なのは仕方がない。
それで祖父の経験上、スキルがある方がレベルアップしやすいみたい。
祖父が初めてスキルを覚えたのがレベル3の時で、説得力と言うパッシブスキルだからオンオフが出来ないんだって。
けれど、レベル1から2と、2から3に上がった時の日数より、3から4に上がった時の方が短かったんだって。
元々、文系職のレベルは上がり難いんだそうな。
クラス関連の行動がほぼ勉強と同じだから、スキルを獲得するにも時間がかかるんだって…まぁ知識がないと政治なんて出来ないよね。
国会で質問に答えられないような、恥ずかしい政治家も時々いるけど。
前もって出された質問書について、秘書や部下が用意した文書を読むだけで、知識なんて無くても誤魔化せるものだよ。
それ以外は「聞いてません」や「覚えてません」ばかりで、何も把握してないのも同然なのに、よく偉そうに出来るなと思ってたよ。
祖父は他のスキルもほぼパッシブスキルで構成されてるから、スキルのあるなしで実験は出来なかったそう。
祖父もやっぱり実験好きなんだ?
なるほど、だから父は祖父に実験をお願いしたのかもね。
父は言っては何だが、見た目と違って脳筋タイプだ。
チマチマと検証するのとか向いてないんだろうな…
どちらかと言うと文系職が多いシャガーリオ家としては、異色のクラスだそう。
伯父もガタイも良いし脳筋かと思ったら、クラスは統計学者なんだって…意外だよね。
実験に向いてるクラスなのに、性格的には一緒にやりたくないね。
祖父も、そこがネックで最初は一緒にするつもりだったが、差別的な言動を見て止めたらしい。
「アヤツもいつまでもルーベンに囚われてないで、自分のクラスに向き合えば良いのだがな」
なるほどね。
父に嫉妬してるのか。
確かに聖騎士は上級クラスとしても珍しいが、統計学者だって決して悪くないと思う。
特に祖父が宰相であるなら、補佐に向いてるんじゃないか?
ほら、国の
エコノミストとかアナリストとかって統計学っぽいイメージだよね。
この世界の学問のレベルがわからないから、何が出来るか知らないけど。
「伯父上は、お父様がお嫌いなのですか?」
「いや、そうではないのだ。アヤツは身体を動かすのが好きで、攻撃職のクラスを願っておったのだが、叶わなかった事でガッカリしてな。侯爵家は攻撃職があまり出ない家系と言う事で、一度は納得して頑張っておった所に、ルーベンが聖騎士だったのがショックだったのだろう。しかも王太子殿下に請われて近衛騎士になる時に、伯爵位まで譲った事を恨んでおる。だからこそ、侯爵家の次期当主と言う事に拘ってしまったのだよ」
「お祖父様は伯爵と子爵をお持ちだったとお聞きしていますが、どうして伯爵の方を譲られたのですか?」
「ふむ。聞いても難しいと思うぞ?」
「お祖父様のお話は解りやすいですよ?」
「そうか?まぁ何故かお前と話していると子供とは思えなくて、ついつい難しい事まで言ってしまったが…」
ドキッ!ちょっと子供らしくなかったか?
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