第7話 お届けしたよ!

 おはようございます。

 本日は青天なり。

 素晴らしいお使い日和ですね。


 でも今日は家庭教師が来る日だったよ。

 あんまり時間のかからないお使いにしなきゃね。


 朝食は予定がなければ父母と一緒に取るが、父は既に出掛けていて、母はお茶会に呼ばれてるから朝食抜きだよ。


 なんでも、コルセットが拷問器具じゃないかと言うくらい締め上げるから、胃の中身が出ちゃうからだって。


 そこまで締め上げなくてもと思うけど、貴族の女性としてプライドをかけた戦いがあるんだとか…女の世界怖い。


 1人で食べるのは前世で慣れてるはずなんだけど、この広い食卓にポツンと座るのは慣れないや。


 朝食後は家庭教師の先生が来るまで時間があるから、カレンに僕に出来るお使いがないか聞いてみた。


 主人にお使いなんて頼めないと拒否されたけど、クラスの効果が知りたいから多少強引になったけどゲットしたよ。


 料理に使うハーブを庭師のトムから貰って、厨房に届けて来るだけだから簡単だと思う。


 行ってきますと庭に出ると、後ろからカレンが着いてくる。

 クルリと振り返り、着いて来ないように命令する。


 保護者見守り状態はご遠慮願います!


 裏庭に回り、ハーブが植えられてる辺りを探す。

 ちゃんと場所も聞いて来たからバッチリだよ。


「トム爺いる?」


 呼び掛けると、庭に溶け込んでいた茶色い塊が立ち上がる。


「これはヴィンセント坊っちゃん、この爺に何か御用ですかな?」


 前に母と芝生に寝転んだりさせて貰ってから、トム爺と呼ばせてもらってる。


「カレンから、料理に使うハーブを貰って来てって頼まれたんだ!」


 強引に僕が、頼むように頼んだんだけどね。(ややこしい)


「ほほほ、カレン嬢ちゃんがね」


 トム爺は何か納得したように頷いて、手早くハーブを摘んでいく。


「今日はマシューが鳥肉の良いのが入ったと言ってましたから、この辺のハーブが良いでしょう」


 料理長が良い肉と言うなら期待出来るな。


「ありがとう。トム爺またね」

「ほほほ、どういたしまして」


 小さな籠に入れてくれたハーブを受け取り、トム爺に手を振って厨房に向かう。


「おや坊っちゃん、どうかされましたか?」

「マシュー、これカレンから頼まれて持って来たよ!」


「おやおや、坊っちゃんもカレンにあまり無茶を言ってはなりませんよ」


 ぐぅ、皆にカレンに強引に頼んだ事を、見透かされてる気がする。


「いいんだよ。今日のは実験だから、特別なんだよ」

「ほっほっほっ。特別な実験ですか。そうしたら今日の夕食も特別ですぞ」


「特別な夕食って何?」

「それは出した時のお楽しみですな。ほっほっほっ」

「わかった。楽しみにしておくよ」


 トム爺と言いマシューと言い、"ほ"で笑うのが流行ってるのかな?


「では坊っちゃん、ハーブは確かに受け取りました。ありがとうございました」

「それじゃまたね」


 マシューに手を振って部屋へ戻る。


「カレンただいま。ちゃんとハーブはマシューに届けたよ」


「ヴィンセント様、ありがとうございます。でも、もう使用人の仕事をするのはこれっきりですからね」


「わかったよ。今度はお父様かお母様にお願いするよ」


「仕事は止めないんですね。もうすぐオリバー様が来られる時間ですが、課題は終わっていますか?」


「ちゃんと終わってるから、心配しないで」


 宿題の確認をする母親のようなカレンの言葉に、そう言えば母と同じ歳だから、カレンが母親でもおかしくはないのかと改めて驚きを感じる。


 22歳なんて前世の日本では、結婚してる人の方が少なかったのに、この世界では子持ちが当たり前なんだよ。


 カレンも結婚はしてるけど、なかなか子供が出来ないみたいで、僕からしたら、まだまだ若いから焦らなくてもと思う。


 まぁ医療技術が発達してないから、こういう場合に女性の責任にされがちなのは、前世でもあった事だから悩むのも無理はない。


 とりあえずカレンの厳しい目から逃れるために、授業の準備をしてからステータスをチェックする。


 レベルの横の数字が5から6になった!

 お使いの経験値も0から1になってる!


 スキルは使わなかったからか、変動はなかった。

 お財布の使い方が解らないんだよね。


 クラスに関する行動を取ると、レベルとクラスの経験値が入るのかな?


 レベルは運動しても上がる可能性はあるけど、こんなタイミングで上がるのが偶然とは思えないから、お使いをしたからと考えるのが妥当だよね。


 後は1回のお使いで1上がるのか、お使いの難易度で2や3になるのかも知りたい。


 これは実験が楽しみになってきた!

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