第49.5話
その日の晩、私はまだ自分の気持ちを理解できていなかった。
自室で今日のことを振り返る。
約1年ぶりに聡太の顔を見ることができた。
嬉しかった反面、自分のとった行動に懐疑的だった。
今日、私がしたことは正しかったのか…。
私は何もできなかった…。
中学の時と変わらない。
春木くんが来なかったら、私はどうしていただろうか…。
それは考えるまでもないことだった。
最終的に春木くんのおかげで聡太もどこか心境に変化をもたらしたと思う。
私はどうしたらよかったの…。
いつもそうだった…。
私は聡太を傷つけてばっかりだ。
上手く言葉が出てこない。本当はただ聡太の力になりたいだけなのに…。
ベットの上で仰向けになりながら私は思考をめぐらせる。
私と春木くんの決定的な違いは一体何か?
聡太との付き合いなら比べるまでもなく私の方が長い。
物心ついた頃から一緒にいるからお互いの良いところも悪いところも全部理解し合っていると思う。
対する春木くんは出会ってから1ヶ月程度なのに何であんなに仲良くなってるの?
多分ドア越しで話しているから顔だって今日見たのが初めてのはずよ!
分からないわ…。
どんな手段を使えばあんなにすぐ仲良くなれるというの?
い、いや別に羨ましいとかそういうわけじゃないけど…!?
一度落ち着きまた考えをまとめる。
けど春木くんの認識を変えなければいけないわね。
春木くんの第一印象は正直あまり良いイメージではなかった。
澪に向けられた陰湿な嫌がらせを助けたという一点だけをみたら彼の印象は良いものだ。
だけどそれは澪だから助けた。私はそう思っていた。
澪は同じ女性の立場から見てもものすごく綺麗な子よ。
澪の好感度を稼ぐために打算的に動いたものと思っていた。
だけどそれは私の勘違いだとすぐにわかった。
聡太の家にも何度も行って話したり、この前の香奈美の一件もそうだ。
彼は打算的なことなど考えてない。
誰かのために動くことができる人間なんだ。
これが私と春木くんの決定的な違い…。
私が何かをする必要なんて無い。
春木くんに任せていたら聡太だってまた前を向いてくれるはず…。
これ以上私が何かしても余計なことになってしまう…。
思考がまとまり私は瞼を閉じる。
これでいい…そう思いかけた時、彼の言葉が頭によぎった。
『難しく考えなくていいんだ。委員長の気持ちを真っ直ぐに伝えたらいいよ。』
その瞬間、私は即座にベットから出てスマホを手に取って聡太に電話をかけた。
不登校の僕の家にクラスメイトがやってきた 降谷蒼一郎 @huruyasouichirou
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