第18話

 5月18日

 終礼を終え、放課後になっていた。

俺は帰り支度をして帰ろうとすると後ろから委員長に呼び止められてしまった。


「待ちなさい。春木君、もしかしてもう帰るつもりかしら?」

「え?ダメなの?学校はもう終わったんだぞ!」


 俺がそう言うと委員長は呆れながらこちらを見てきた。


「明日からテストよ。しかも1日目の科目は、

数I、数A、物理基礎よ。あなたが最も苦手とする科目全てが全部あるわね。」


 その通りである。

非常にピンチである。まさか1日目に全部盛り込まれるとは思わなかったよ。

一応このテスト週間はまじめに勉強はした。

夏川が委員長に頼んでくれたおかげで直接委員長には勉強を教えてもらえたし、家では夏川がビデオメッセージなどで分からない問題を解説してくれた。

それでも自信がないぜ。それに明日が本番だから今さら根を詰めて勉強しても意味がないと思い、帰ろうとしたんだが何故か委員長に止められてしまった。


「あなたのことだからまだ理解してないところがあるでしょ。今日は最後の追い込みで勉強をするわよ。」

「え〜。別にいいよ。もう数式に支配される日々に懲り懲りしてるんだよぉ〜」

「この1週間しかやってないんだから、別に大した量ではないわ。」

「そ、そんなぁ。厳しすぎるよー」


 委員長が勉強を教えてくれるのは素直にありがたいが俺の予想の10倍以上スパルタなのがネックだぜ。


「まぁ、あなたにとっては明日が1番の山場のはずよ。だから今日まではしっかり勉強すべきよ。」

「たしかにその通りだな。分かったよ。」


 俺が納得してそういうと委員長はすぐに廊下の方を向き、図書室に行こうとした。

俺も委員長について行こうとするの横から冬月に声をかけられた。


「秋元さんと春木君はこれから図書室で試験勉強ですか?」

「うわっ!急に声をかけるなよ。心臓に悪いだろ。冬月!」


 冬月は隣りの席で、委員会も一緒でよく話すがたまに気配を察知できない時があるぜ。

今みたいな感じでいつから近くにいたのかわからない時が多々ある。


「すいません。話しかけるタイミングを逃してしまいそうになったので。」

「そうなのか。今から委員長と図書室で勉強するんだけど冬月も来るか?」

「私がご一緒にしてもいいんですか?」

「俺は別にいいぞ。」

「私も構わないわ。」

「ありがとうございます!」


 よほど嬉しかったのか冬月は満面の笑みでそう言ってお礼を言ってきた。


 図書室について中に入ると普段は全く人気のないが明日がテストということで満席になっていた。


「マジかよ。座れるところないな。」

「普段は全く人がいないのに…、やっぱりみんな考えることは同じなんですね。」


 俺と冬月がそんなことを話していると委員長がある提案を持ち出した。


「仕方ないわね。2人が良ければの話だけど私の家で勉強をするのはどうかしら?」

「え?」 「え?」


 委員長からの予想外の提案に俺と冬月は2人して同時にそんな拍子抜け声を出してしまった。


「何?嫌なの?」


 委員長が不機嫌そうな顔でこちらをみてくる。


「いや!予想外の提案で驚いただけだよ。なぁ!冬月。」


 俺は間髪入れずにすぐにそう言って、委員長の機嫌を損なわないようにした。


「は、はい!秋元さんの家がよろしいのならお言葉に甘えて勉強させてもらってもいいですか?」


 俺の急なパスもしっかり受け止めて、ベストな返答を委員長にしてくれた。

ナイス!冬月!

俺は心の中でグッジョブマークをした。


「そう。なら今から私の家に向かうわ。2人ともついてきて。」


 委員長はそう言って、図書室から出で行って下駄箱の方に向かった。

俺と冬月はその後に続くのであった。

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