第19話
委員長の家で勉強をすることになった俺と冬月は委員長の家に向かっていた。
「今日は家に妹がいると思うけど大丈夫かしら?」
委員長が俺たちに確認を取るために話しかけてきた。
「私は大丈夫ですよ。」
「俺も大丈夫だよ。」
「そう、ならよかったわ。」
委員長はそう言って、話が終わると思ったがすぐに冬月が委員長に話しかけた。
「秋元さんは妹がいるんですね。」
「ええ、今年で小学2年生になるわ。」
「けっこう年が離れていますね。」
「そうね。末っ子でお母さんや姉さんに甘やかされて育ったからすごくわがままで大変よ。」
委員長は淡々と話しているが、いつもに比べたら少し大変そうな感じがするのでそれなりに苦労しているように思える。
「姉さん?ってことは委員長姉ちゃんもいるのか?」
今話していた内容で気になったので俺は聞いてみた。
「私とは7つ離れた姉がいるわ。」
マジか。姉ちゃんと妹がいるのか。
兄妹がいない俺は妹や弟がどんなものなのか分からない。正直少し羨ましいと思ってしまう。
すると委員長が立ち止まり、目の前にある一軒家を指差した。
「着いたわ。ここよ。」
「ここって…。」
歩いて方向的に薄々気づいていたが、ここからだと本当に夏川の家が近くにある。
歩いて5分もかからないだろう。
俺がそんなことを考えていると、いつの間にか冬月と委員長はドアを開け、家に入ろうとしていた。
「あなた何をしているの?早く来なさい。」
「ああ、悪い。」
俺はそう言って、委員長の家にお邪魔した。
家に入ると、家の奥から1人の女の子が勢いよく走ってきた。
「おかえり!お姉ちゃん!」
「ただいま、香奈美。」
委員長はしゃがんで目線を女の子に合わせてそう言った。
すると女の子が俺たちの存在に気づき、話しかけてくる。
「お姉ちゃん、この人たち誰?」
「この人たちは私のクラスメイトよ。」
委員長が女の子にそう説明していると、また家の奥の方から1人の女性が来た。
「あら、おかえり。香恋、それとそこにいる2人はどちら様かしら?」
見た感じ、委員長とは違い物腰が柔らかい感じの人だった。見た目もすごく綺麗だ。
そしてどことなく委員長とそこにいる女の子に顔が似ている。
なるほど。さっき委員長が言っていた姉さんっていうのはこの人だな。
よし!ここは先手必勝で元気に挨拶をしていくぜ!第一印象が大事だからな!
「はじめまして!いいんちょ、間違えた。秋元さんと同じクラスの春木桜です!本日は秋元さんに勉強を教えてもらうためにきました。宜しくお願いします!お姉さん!」
俺はそう言って元気よく自己紹介をした。
よし!完璧だな。
すると委員長が横から話しかけてきた。
「あなた、お姉さんって誰に言っているの?」
「え?いや、目の前にいるこの綺麗なお姉さんにだよ。お前のお姉ちゃんだろ?」
「あなた、この人は姉さんではなく私のお母さんよ。」
え?マジで?嘘だろ。
すると目の前にいる女性が両手を頬に当て嬉しそうに話しはじめた。
「あら、もしかして私のことを香恋のお姉ちゃんだと勘違いしていたの?やだねー、すごく嬉しいわ。私もまだまだ捨てたもんじゃないわね。これでも私3人の娘がいるのよ。」
やたらテンションが高いこの人はどうやら本当に委員長のお母さんらしい。
信じられない。すごく若く見えるぞ。
「お母さん、そんなことはいいから私たちは部屋で勉強するからもう行くわよ。」
「あらちょっと待ちなさい。まだ自己紹介が終わってないわよ。」
そう言って、先程までテンションが上がっていた委員長のお母さんは落ち着いた様子で自己紹介を始めた。
「香恋がいつもお世話になっています。香恋のお母さんの秋元香帆です。これからも娘と仲良くしてください。それとここにいる子は香恋の妹の香奈美です。ほらちゃんと挨拶をしなさい。」
委員長のお母さんはそういうと後ろにいた女の子は自己紹介をした。
「秋元香奈美(あきもと かなみ)です。宜しくお願いします。」
「ああ、よろしくな。」
俺が返事を返すと後ろから冬月が話しはじめた。
「あの、すいません。話すタイミングを逃してしまって言うのが遅れました。冬月澪です。宜しくお願いします。」
「ええ、こちらこそよろしくお願いします。」
俺と冬月の挨拶が終わると、委員長はお母さんに話しかけた。
「私の部屋で試験勉強をするから特に気を使わなくて大丈夫よ。」
委員長はそう言い、俺と冬月は委員長の後ろについて行こうとすると香奈美ちゃんが委員長に話しかけた。
「お姉ちゃん、もう勉強するの?一緒に遊ぼうよ。」
「この前も言ったでしょ。今は試験週間で勉強をしないといけないの。また今度にして。」
「え〜、嫌だよ!この前は我慢したんだから今日はいいじゃん!」
どうやら香奈美ちゃんは委員長と遊びたいようだ。だけど明日からテストだし、今日勉強教えてもらわないと俺がやばい。
しかし香奈美ちゃんは食い下がる様子は無さそうだった。
「遊ぼうよ!お姉ちゃん!」
「ダメよ!いい加減にしなさい。今日は私だけじゃなくてクラスメイトも来ているのよ。」
委員長が少し強く言うと、香奈美ちゃんは黙り込んで俯いてしまった。
「お姉ちゃんは無理でもお母さんが一緒に遊んであげるから今日は我慢しようね。香奈美」
「うぅ〜。」
それを見終えた委員長は何事もなかったかのように自分の部屋に向かった。
なんだか、香奈美ちゃんが少し可哀想だがたしかに今日は勉強をしにきたから仕方ないか時間が少し余ったら後で一緒に遊んであげるか。
俺はそんなことを考えながら委員長の部屋に向かった。
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