第4話
「はーい!ではこの時間は委員会を決めていきたいと思いまーす!」
野坂先生はそう言い、チョークでいろんな委員会の種類を黒板に書いていった。
クラス委員長、風紀委員、体育委員、保健委員、放送委員、図書委員、etcである。
「みんな!これらの中から興味があるやつに立候補してね!」
野坂先生は何種類の委員会を書き終えた後、俺たちに決定を促すようにいった。
委員会かぁ、正直やりたくないなぁ。
いやめっちゃやりたくない!めんどくさい!
俺とそう思っていると周りからもいろんな声が聞こえてきた。
「委員会なんてそんなだるいことするかよ笑」
「だよなー。俺が運動部入るし。」
そんな感じの声がめっちゃ聞こえてくる。
なるほど。みんな考えていることは同じなんだな。俺は1人でそんなことを考えていたが意外にもみんな興味のある人は挙手をし、だんだんと委員会は決まっていった。
「う〜ん。困りましたね。やっぱりこの2つが余りましたね。」
先生が困ったように黒板を見て言った。
黒板にはクラス委員長と図書委員だけが残っていた。
他の委員会は委員会会議などで他クラスや先輩たちとの交流が出来やすい、そして仕事内容もさほど責任重大と言うわけではない。
しかしクラス委員長はクラスの代表として生徒会会議やクラスの指揮を取らねばならない。
図書委員は内容自体は難しくないが、この百合ヶ丘第三高校は授業が終わって放課後の18時まで図書室が開いている。つまり放課後当番の人は18時まで自ずと学校に残り、図書室の当番をしなければならない。
拘束時間が長すぎる。
これだけは絶対にしたくないな。
「えーと、図書委員は一旦おいとくとしてクラス委員長を決めますか!誰もやりたがる雰囲気ではないので、申し訳ないのですが、先生の名指しで決めさせてもらいます!」
先生はばつの悪そうな感じで、クラス全体を一瞬だけ見てパッと指をさした。
「秋元さん!クラス委員長お願いできるかな?」
「私ですか?」
秋元さんは一瞬間を開けたが、すぐに返事を返した。
「分かりました。先生のお願いであるならばクラス委員長をやらせていただきます。」
「ありがとう!秋元さん!先生助かるよ〜!」
こんな感じでクラス委員長も決まったがめんどくさいのはここからであった。
それから5分、10分と経過したが、誰も図書委員をやりたがらないのである。
「困ったわねー。この後は健康診断、そして部活紹介をした後は教科書購入だけどあと10分でチャイムがなるから時間がなくなってきたわね。」
決まらなかった場合は、健康診断などが終わった後に放課後決まるまで残らないといけないだろう。
さすがに今まで無関心だった人たちも焦り始めたようだ。
「マジかよ!俺放課後部活見学すぐ行きたいからそんなことで残りたくねぇよ!」
「もう誰でもいいからさー、さっさと誰が立候補してよー」
そんな声が聞こえてきた。
というかみんなすげぇ自己中心的な理由じゃねぇかよ!
そんな時に1人女の子が心細そうに手を挙げた。
「あ、あの…私、やります…。」
「本当!冬月さんありがとう!すごく助かるよ!」
先生はそう言い、図書委員のところに冬月さんの名前を記入した。しかし図書委員は2人なのであと1人誰か立候補しなければならない。
「うお!あの根暗、高校でも図書委員するのかよ笑」
「てかアイツが図書委員するんだったら俺らもうやんなくてよくね!アイツが1人ですればいいじゃん笑」
クラスの奴らのそんな会話が聞こえてきた。
あいつら正気かよ!せっかく冬月さんが誰もやりたがらない図書委員をしてくれるって言ってるのにその言い方って。
なんだか無性に腹が立ってきた。
クソ!これは仕方ねえな。
「はい!先生!俺も図書委員やりたいです!」
気がついたら俺も図書委員に立候補していた。
「本当!春木君までありがとね!いやーよかったわ!これで無事委員会は決まったわね!」
先生は安堵したかのようにそう言った。
「うお!マジかよ。あの根暗と一緒に図書委員するなんて物好きだな笑」
「てかあいつ自己紹介で料理得意とか言ってたやつじゃん笑」
クラスの奴らからそんなヒソヒソ話が聞こえてきた。
まぁこの流れで立候補したから仕方ないか。
俺はそう思い、やり過ごそうとしたがクラスメイトのヒソヒソ話はここで終わらなかった。
「てかあの根暗、中学でも図書委員押し付けられてずっと図書室いたよな。学校に友達がいなくて居場所ないから図書室ぐらいしか居場所ないのか?笑」
「何それ!笑めっちゃウケるんだけど笑」
奴らのイジリは徐々にエスカレートしていった。さすがに度を超えてきたので先生が注意しようとした。
「ちょっと君達!さっきから黙って聞いていたら冬月さんにすごく失礼なこと言ってるわよ!」
「すいませんー笑まぁでも先生、図書委員決まったんでいいじゃないですか!こういうのはやっぱり学校に馴染めてないやつがやるべきですよ笑」
その回答にさすがの先生も少し声を荒げそうになった。
「あなたたち!…」
その瞬間俺は立ち上がって声を荒げた。
「うるせぇぞ!お前ら!」
俺は目一杯怒気を込めて言った。
「さっきから黙って聞いてたらお前ら何様のつもりだよ!」
さっきまで冬月の悪口を言っていた奴らは一瞬きょとんした様子だったがすぐに言い返してきた。
「なんだよ、何マジになってんだよ。俺らは少しあの根暗をいじってただけじゃないかよ」
「まずなんでお前らが冬月をバカにできんだよ!冬月はみんながやりたがらなかった図書委員を自ら立候補したんだぞ!感謝こそされたとしてもバカにされる筋合いはねぇだろ!」
「ハッ!お前そんなにあの根暗の肩を持つなんてもしかしてあいつのことが好きなのかよ!」
まさか誰にも怒られるとは思わないで冬月をバカにしていた奴は動揺しながらそんな幼稚な返答をしてきた。
「だったらどうした?お前らのように自分の都合しか考えていなくて陰でコソコソ悪口を言ってるお前達よりみんながやりたがらない仕事を自分から率先的にしてくれる冬月の方がよっぽど魅力的なんだよ!」
俺の気合いのこもった言葉に奴も何も言い返すことができなくなってしまった。
その瞬間に今まで黙って聞いていた野坂先生が仲裁に入ってくれた。
「はい!そこまでー!2人とも少しヒートアップしすぎよ!」
「すいません」
その言葉で我に帰った俺は申し訳なくなり先生に謝罪をした。
「まぁでも今回は春木君が言ってることが正しいわ!でも春木君も感情に身を任せすぎよ!もっと理知的に言わないとダメよ!」
先生は笑顔で淡々と話してくれた。
「それにあなたたちは高校生でまだまだ子供なんだから自分の事しか考えられないのは仕方ない事だわ。でもね…」
今まで笑顔で話してくれていた先生の雰囲気が一気に変わり真剣な表情になった。
「人に感謝はする事は忘れてはダメよ。
それは子供や大人なんて関係なく人として大切な事だから。」
先生はそう言ってまたいつもの笑顔に戻った。そしてその瞬間チャイムがなった。
「ではみんな!これから健康診断と部活紹介、そして教科書購入だから急いで移動してね!」
先生はそう言って教室から出ていってしまった。
俺も健康診断に行くために席を立とうとした時、隣りの女の子から話しかけられた。
「あの!…春木君さっきは私の事を庇ってくれてありがとうございます。」
冬月さんすごく真っ赤にしながら俺にお礼を言ってくれた。
「別に大した事は言ってないよ。というかごめんね。俺のせいで冬月さんが目立つような形になってしまったけど」
「問題ありません!春木君には感謝してます。
それに春木君はすごいですね。あんな堂々と人前で自分の意見を言えて」
「そんな事ないよ。俺からしたらみんながやりたがらない事を自分からやってくれる冬月の方がよっぽどすごいよ!」
「そんな風に言われたのは春木君が初めてです。ありがとうございます。」
冬月は恥ずかしそうに下を向いた。
こんな恥ずかしがり屋なのにさっきは勇気を出して図書委員に立候補したんだ。
やっぱりすごいな
俺は素直に冬月に感心してしまった。
「これからは席も隣りで同じ図書委員だな!
よろしくな!冬月!」
「はい!こちらこそ宜しくお願いします」
これはもしや友達第一号じゃないか!
よかったぜ
無事に話せることのできる友達ができた。
俺は心の中で安堵し、たった今できた友達と一緒に教室を後にした。
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