第3話
4月7日
入学式の次の日百合ヶ丘第三高校では委員会の取り決めや校内案内そして部活紹介に全校生徒対象の健康診断が行われている。
よって本格的に高校の勉強が始まるのは土日を挟んで月曜日からである。
よし!
なんだかんだ昨日は友達出来なかったから今日こそ誰かに話しかけるぞー!
俺は心の中で気合いを入れ、1組の教室に行った。
「みんな!おはよう!今日はいい天気だな!」
俺は元気よくドアを開け、開口一番で挨拶をした。
よし!ここからみんな話しかけてくれて会話のキャッチボールが展開されていくぜ!
しかしクラス一同、一瞬だけ俺の方を向いてくれたがすぐにみんな仲の良い人たちとの会話に戻ってしまった。
え?
マジかよ!みんなぁ!
こんな元気よく挨拶したのに誰も返事してくれないのかよ!
まぁいい、計画通りにいかないのが人生というものだぜ。
俺は自分を無理やり納得させて、席に着いた。
「おはようございます。朝から元気ですね。
春木君は。」
「え?」
そう言って話しかけてくれたのは席が隣り且つ昨日座る席を間違えていた俺に優しく教えてくれた女子だった。
「すいません!…急に話しかけて、気持ち悪かったですか…?」
彼女は顔を赤くしながらそう言い、下を向いてしまった。
「いやっ!違う!急に話しかけてくれたから反応が遅れてしまっただけだよ。
そんな、気持ち悪いなんて思うわけないじゃないか!」
「そうですか…あの、ありがとうございます。」
「いや、むしろ感謝してるのは俺の方だよ!
昨日わざわざ席のこと教えてくれてありがとう!助かったよ!」
「いえ、そんな大したことはしてないですよ。」
彼女はそう言い、鞄から本を取り出し読み始めた。
確か昨日この子趣味は読書って言っていたな。ものすごい集中力で本を読んでるぞ。
すげぇ
そう考えていると、ふとクラス全体を見渡して見るとおかしなことに気づいてしまった。
あれ?おかしいぞ!これ
なんか俺と隣りの確か冬月さんと新入生代表を務めた秋元さんって人以外はみんな仲良くクラスのみんなと談笑をしているぞ。
ちょ、待てよ!
学校始まってまだ2日目だぞ!
なんでこんなみんな仲良くなってんだよ!
てかそんなに速く仲良くなれるのなら俺も会話に混ぜてくれや!
「そういえば、差し支えなければ聞きたいのですが、春木君って南中学出身ですよね?
この学校に南中から来る人なんて滅多にないですよ。」
「え?そうなの?」
というかこの子なんの気配も前触れもなく急に話しかけてくるな。
「はい。百合ヶ丘第三高校は大体は北中や西中出身の生徒たちだと思いますよ。
家から近いですし。」
「マジかよ。だからみんな2日目からこんな和気あいあいと談笑しているのかよ!」
「はい。そうだと思います。このクラスは西中の人が多いですが、チラホラ中学の時に見たことのある顔の方もいるので」
そういえば中学の担任の先生が「なんで、わざわざ百合ヶ丘第三高校に行くんだ!こっちの方が家から近いし、偏差値も高くないだろ」って言ってたな。
「あっ!でもそういえば新入生代表を務めた秋元さんも北中や西中ではなく東中でしたね。東中の人はたまに少人数ではいるみたいですがこのクラスだと秋元さんぐらいかもしれませんね」
「たしかに昨日、先生が「東中の生徒2人に南中の生徒1人なんだか先生珍しいクラスを受け持つことになったなぁ〜」って言ってたな」
ん?待てよ。
昨日の自己紹介の時ほとんどが北中や西中の人たちばっかりだったぞ。
南中が俺、そして東中が秋元さんともう1人は誰だ?
「なぁ、冬月さん。
秋元さんはわかっているけどもう1人の東中の生徒って誰だ?」
「あっ!それはおそらくですがまだ学校に来ていないようですが春木君の前の席の人だと思いますよ。確か名前は……」
ドォーーン!
その瞬間勢いよくドアが開いた。
「みんな!おはよう!今日も元気かい?」
担任の野坂先生が勢いよくドアを開け、今日もはつらつとした笑顔で挨拶をしてきた。
「先生がもうきちゃいましたね。
この話の続きはまた後でにしましょう。」
冬月さんは静かにそう言い、視線を教卓の方に向けた。
てかマジかよ!
せっかくこの高校に入れたけどほとんどが中学からの知り合いだったら入れる隙がねぇじゃねぇか!
いや、まだ諦めるには速い!
とりあえずここから徐々にみんなと仲良くなっていこう!
そう心に誓い、俺も冬月さんと同じに教卓の方に視線を向けた。
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