第5話
健康診断や部活紹介などを一通り終えて教室に戻ってきた。
教科書購入もさっき済ませてもらってきたけど、高校の教科書ってすごく量が多いな。
教科書と一緒に紙袋も渡されたが、こんな重たいのを持って帰らないといけないようだぜ。
「高校は中学の時より教科書が増えますね。」
そう言って話しかけてくれたのは記念すべき高校の友達第一号の隣りの席の冬月だった。
「だな!正直この量を家まで持って帰るなんてめんどくさすぎる。半分くらいは机の中に置いて行こうかな。」
「それはダメですよ!春木君!普段からそんなことしていると使いたい時に学校に忘れてしまうことになりますよ!」
「たしかに冬月の言うとおりだな。分かったよ。」
そんな感じで他愛もない会話をしていたら野坂先生が教室に入ってきた。
「みんな!今日は忙しかったね!おつかれ!とりあえず今日はこれでおしまいです!
来週から授業が始まるのでくれぐれも忘れ物はしないでね!それと教科書が重いからって机の中に置いて帰るのはダメよ!」
マジかよ
てかやっぱり俺と同じことする奴は毎年いるんだな。
「それとみんなに1つ連絡があります!
来週の月曜日には国語、英語、数学の3教科の実力テストをする予定だから少しぐらい中学の復習をしとくのよ!」
先生は笑顔でそう言った。
え?
マジかよ。受験も終わってやっとひと段落していたと言うのにまたテストするの?
ふざけんなよ!
「はい!では今日は解散!みんな気をつけて帰ってね!」
先生はそう言って教室から出ていってしまった。
チクショォー
さすがに少しぐらいは勉強しないとこれはまずいぞ。
俺が1人でそう考えているの冬月が話しかけてきた。
「テストって聞いてすごく困った様子ですね。春木君がよろしければこの後喫茶店にでも寄って一緒に勉強でもしますか?」
「え?マジで?すごく助かる。というか家に帰っても絶対勉強しないし。てか分からないところとか教えて欲しいです!」
「私でもわかる問題だったらいいですよ。」
これぞ、持つべきものは友だぜ!
助かった!ありがとう!冬月!
俺と冬月が教室を出ようとした時だった後ろから3人の男たちから話しかけられた。
「待ってくれ。冬月、そして春木だったよな。」
こいつらさっき冬月をバカにして俺と口論になった奴らじゃねぇか。
気まずいぜ。帰りたい。
とりあえず返事ぐらいするか。
「どうした?」
「さっきはその悪かった。ごめん」
3人は俺と冬月に謝罪をしてきた。
あまりにも急な出来事だったので俺も冬月も唖然としてしまった。
「なんだよ、急に」
「俺ら冬月とは中学から一緒なんだけどいつも1人でいてどんなにいじっても何も言い返してこないから調子に乗っていたよ。本当に悪かった。ごめん」
3人の謝罪にすぐに言葉が出なかった俺だったが冬月は違った。
「別に怒ってなんかいませんよ。私がずっと1人でいたのは事実ですのでこれから私とそして春木君と仲良くしてくれるなら嬉しいです。」
冬月は3人に優しくそう答えた。
こいつあんなにバカにしてきた奴らをすぐに許してしまったぜ。
やっぱりすごいな。冬月は
ここは俺も冬月の意を汲むべきだな。
「俺も感情的になっていたよ。悪かったと思っている。ごめんな。」
「いや、こっちこそありがとう!
俺は竹本って言うんだ。よろしくな!
春木!」
「おう!こちらこそよろしく!」
俺たちは無事に和解した。
これこそ雨降って地固まるってやつだな。
〜〜〜〜
俺たちは玄関の方に行き、靴を履き替え帰ろうとしていた。
「あの!ちょっと待ってください。さっきから気になっていたのですが、春木君なんでそんなに荷物が少ないのですか?」
「いや、これはやはり分けて持ち帰る方が効率的だと判断したに過ぎないんだよ。」
「ただ持って帰るのがめんどくさくて机の中に教科書を置きっぱなしにしているだけですよね?」
そう言って冬月はジト目で俺の方を見てくる。こいつ意外に真面目ちゃんだな?
これは仕方ないぜ。
「分かったよ。取ってくるから少し待っていてくれないか?」
「分かりました」
そう言って俺は教室まで教科書をとりに行きちゃんと教科書を回収して冬月のいる玄関に向かうところであった。
職員室のところを通る時に野坂先生の声が聞こえてきた。
「ごめんね!秋元さん!わざわざ夏川君の教科書まで持って帰ってもらって。」
「いえ、問題ありません。夏川君とは家が近いので」
そう言って秋元さんは職員室から出てきた。
自分の分でさえ重たいのに秋元さんわざわざ2人分の教科書を持って帰るというのか。
「優しいな。委員長!わざわざ休んだ奴の分の教科書を持って帰るなんて」
俺はそう言って秋元さんに話しかけてみたが秋元さんは一瞬俺の顔を見て知らぬ顔で俺の前を通り過ぎてしまった。
「いや!ちょっと待ってくれよ!なんで無視するんだよ!」
俺はすかさず秋元さんに話しかけた。
「その委員長って私に話しかけていたのね。
気づかなかったわ。」
「今廊下にいるの俺と秋元さんだけだろ。」
「たしかにその通りね。それで話したい事はそれだけ?私、もう帰りたいのだけど。」
「いや、ごめん。引きとめるつもりはなかったんだよ。てか先生が夏川君って言っていたけどたしか夏川って俺の席の前の人だよね?」
「そうね。」
「昨日も学校にいなかったけど風邪かなんかで休んでいるのか?」
「あなたには関係のない事よ。悪いけど、私はもう帰らせてもらうわ。」
そう言って秋元さんは何もなかったかのように俺の前を通り過ぎていった。
なんというか。秋元さんって気難しい人だな。それが俺の秋元さんの第一印象だった。
「てか、やば。冬月をずっと待たせているんだった。急がないと」
そう言って、俺は冬月が待つ玄関の方に向かうのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます