第16話
5月11日
6限目の授業を終え、俺は帰りの支度をしていた。
今日は図書委員の仕事の日なので、放課後図書室当番に行かないといけないが明日からテスト週間に入るのでついでに勉強させてもらうつもりである。
「なぁ、冬月、明日からテスト週間だから図書室当番の時に勉強教えてもらえないか?」
「いいですよ。どの教科を教えたらいいですか?」
冬月はよく俺に勉強を教えてくれる。
これは非常に助かることである。何度かあった小テストの時も冬月が勉強を教えてくれたおかげでなんとかなったことも少なくない。
「古典とか教えてほしい。まったくわからない。このままいったら赤点確定だ。」
「分かりました。でも春木君の場合古典以外も赤点になる恐れがあるのではないですか?」
「え?そ、そ、そんとなことないよぉ。」
急に冬月にいたいところをつかれてしまった俺は情けない返答をしてしまった。
だが、確かに古典以外もやばい。
特に理系科目がな!
「とりあえず、今日は古典と余裕があれば英語とかも教えましょうか?」
「宜しくお願いします!」
俺と冬月が話していると野坂先生が終礼のために教室に入ってきた。
「みんなー、席に着いてねー。終礼始めるよ。」
野坂先生の号令により、みんな席に着き始めた。
「はい!では終礼を始めます!明日からテスト週間だからみんな—」
野坂先生が俺たちに連絡事項を伝え始めた。
この先生は普段はふんわりした感じだが意外にも先生としてクラスをまとめ上げるのが上手い。授業もすごく分かりやすいし、男女問わず生徒から人気である。
それにまだ学校に一切来ていない夏川のこともすごく気にかけている。
はじめの実力テストの時もクラス最下位だった俺のことを気にかけてくれたし、間違いなくいい先生である。
「じゃあ、連絡事項はこれぐらいにして今日は解散にします!」
野坂先生が話を終え、みんなが帰ろうとした時に野坂先生はもう一言加えて話し始めた。
「あっ!ごめん!みんなちょっと待ってね。明日からテスト週間だというのはさっきの連絡事項で伝えたけどまあ1つ言わないといけないことがあったわ。」
野坂先生が話を続けた。
「テストが終わったら今年第1回目の球技大会があるからね!あっ、あと1年生のみんなには直接的には関係ないけど生徒会選挙もあるから。とりあえずみんな今回のテストにむけて勉強頑張ってね!」
野坂先生がそう言い終わったあと俺たちは教室を出て図書室に行った。
冬月と話しながら廊下を歩いていると目の前に1人な生徒が歩いているのが目に入った。
「よ!委員長。」
「春木君と冬月さんね。どうしたの?」
「俺たちは今日図書室当番だから一緒に図書室に向かってるんだよ。」
「そう。私も図書室に向かうところよ。」
俺たちは図書室に着いたのでドアを開けて入った。予想通り放課後の図書室には誰もいない。
「秋元さんは何か本を借りられるのですか?」
冬月が委員長に話しかけた。
「いえ。今日は本を借りるためにきたのではなく、勉強をしに来ただけよ。」
「そうなんですね。テスト週間に入る前から勉強を始めるなんて秋元さんはさすがですね。」
「別にテスト週間に入るから図書室で勉強をするわけではないわ。それに私と一緒のあなたも成績上位の人は基本的に毎日勉強はしているものでしょ。」
「たしかに勉強は毎日習慣的にしていますね。」
うわぁ、あれが成績上位者の会話か。
眩しいぜ。てか勉強って毎日習慣的にするものなの?てっきりテスト間近になってするものだと思っていたよ。
「てか委員長も勉強するなら一緒にしようぜ!」
「あなた、何を言っているの?勉強は1人でするものよ。」
確かにその通りだ。
俺の誘いは無惨にも断られてしまった。
その後は黙々と俺と冬月は図書室のカウンターで勉強をし、委員長は読書スペースです勉強をしていた。
時刻は18時になった。
学校全体の下校時間なので俺と冬月は帰りの準備をして下駄箱の方に向かった。
下駄箱で靴を履き替えながら俺と冬月は会話をした。
「春木君、日頃からちゃんと勉強をしているみたいですね。古典はまだしも英語はちゃんとできてましたよ。」
「マジで?ありがとう!」
すると横から委員長が俺たちの会話に入ってきた。
「あなたの場合日頃から勉強してないと進級するのすら危ういレベルだものね。」
「うるせえよー。まぁ今回のテストはなんとかなりそうだぜ。ちゃんと苦手な理系科目も勉強してるからな。」
俺がそう言うと委員長は怪訝そうな顔で俺を見てきた。
「あなたの場合、自力でなんとかできるレベルではないでしょう。」
こいつ、めっちゃ失礼だぞ。
「まぁ、でも春木君も頑張っているのでこの前の実力テストのような結果にはなりませんよ。……多分。」
「おい!そこは確信を持って言ってくれよ!」
そんな会話をしながら俺と冬月、ついでに委員長と一緒に途中まで帰った。
途中で冬月と別れ、俺と委員長は2人で帰っていた。
「あなた、今日も夏川君の家に寄るつもりなの?」
「ああ、そのつもりだけどそれがどうかしたか?」
「別に問題ないわ。」
「てかたまには委員長も夏川の家に行ったらどうだ?しばらく来てないだろ?」
「どうしてそんなことを知ってるの?」
「いや、夏川がそう言っていたから。」
以前、夏川との会話で委員長の話になったが最近家に来ないと言っていた。
2人に何があったかは知らないが今は気まずい様子のようだ。
「悪いけど遠慮させてもらうわ。」
「そうか。」
そんな会話をしているうちに夏川の家に着いた。
「じゃあな!委員長。また明日!」
「ええ。あなたも気をつけて帰るのよ。」
そう言って俺は秋元と別れ、夏川の家のチャイムを鳴らした。
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