第17話

 テスト週間に入り、いよいよ気合を入れて勉強をしようと思ったがまったくやる気が出ないぜ。やばいな。

 小テストがあった文系科目(英語、世界史)は冬月に勉強を教えてもらっていたからなんとかなりそうだが他の科目は正直きついぜ。って今までの俺ならそうなっていたが今回は違うぜ!!

ククク、今回は苦手な理系科目をテスト週間に入る前から夏川に教えてもらうように頼んでいたから問題がない!

しかも俺がわからない問題があったら夏川がわざわざ解説した動画をビデオメッセージで送ってくれるからめっちゃありがたいです。

これぐらいの出来なら間違いなく成績アップする気がする!

今回のテストの1位は俺がもらったぜ!


「あなた、何ニヤニヤしてるの?」

「え?」


 委員長の言葉により俺は現実に戻されてしまった。


 いけない、いけない。ついつい自分の成績が急上昇していきなり学年1位になって無双するという妄想をしてしまっていた。


「やる気がないなら私教室に戻るわよ」

「待ってくれぇー、やる気はあるから戻らないでからよぉぉ」


 時刻は13時、今はちょうど昼休みの時間である。

そして、俺は今委員長に図書室で勉強を教えてもらっている。


「昼休みが終わるのが13時30分だから、5分前には教室に戻らないといけないからおおよそ25分間ってところね。」


 なにやら、委員長が考えている。

昼休みに冬月とゆっくり談笑しながら昼食をとっていたというのに急に委員長に図書室に呼び出されてしまった。


「今から25分間でこのプリントを解いてもらうわ。」


 委員長はそう言って、プリントを差し出してきた。

プリントを見てみると数字の羅列が目に入った。


 これって今回のテスト範囲の問題じゃないか?てか今から解くの?うそでしょ?

昼食は?俺まだ食べ終わってないよ。


「なに?何か文句でもあるの?」

「い、いえ!まったくもってありません!直ちにプリント解かせてもらいます!」


 委員長の圧に負けてしまった俺は数式を解き始めた。


「言っておくけど制限時間は15分だから、急いで解きなさい。」


 え?短くない?

てか問題数多いぞ。こんなの15分で全部解けるわけないだろ。しかも分からない。

解ける気がしないぜ。この因数分解…。


 あっという間に15分が経過して委員長が俺が解いたプリントを採点し始めた。

採点し終わった委員長は俺をジト目で見つめてきた。


 そ、そんなに見つめられたら照れてしまうよ(笑)


「あなた、今回の数学のテストどうするつもりだったの?」

「自力で勉強して高得点を取るつもりでいました!」

「このプリントは今回のテストで主に出題されそうなところを私がまとめて作ったものだったのだけどあなた半分も解けてないじゃないのよ。」

「すいません。まったく分かりませんでした。」


 俺がそう言うと委員長は呆れた様子でプリントを見ていた。


「てか委員長なんで急に図書室に呼び出してプリントを解かせたんだ?」

「あなたが今回のテストをちゃんと突破できるかを確かめるためにしたのよ。」

「マジかよ。てかいきなりだな。」

「正直に言うと昨日夏川君に頼まれたのよ。あなたが今回理数系で試験を突破できるか不安だったみたいだから私に直接教えてやってほしいって言われたのよ。」


 夏川…。お前、俺があまりにも理解力がないからってまさか委員長に頼むとは。


「本音を言わせてもらうとテスト週間に誰かの面倒見るほど私はお人好しではないわ。だけどまぁ…ここまで出来てないなら仕方がないわ。せめてでも昼休みぐらいなら勉強をみてもいいわよ。」


 あの委員長が優しい。信じられない。

こいつ本当にあの委員長なのか?

てかあの夏川が頼んだらこいつなんでもいうこときくのか?


「あなた、今すごく失礼なこと考えてないかしら?」

「そんなことないよ。勉強を教えてもらえるならありがたいよ。ありがとう!」


 そして間違った問題を教えてもらっているとチャイムがなり、俺たちは教室に戻った。


〜〜〜〜


 放課後になり、下校しようとすると野坂先生に職員室に呼び出されてしまった。


「なんでしょうか?野坂先生。」

「ごめんねー、春木君。急に呼び出してしまって。」

「いや、別に大丈夫です。それでどうしたんですか?俺何か悪いことしましたか?」

「あら?何か心当たりがあるの?」


 そう言って、野坂先生は不適な笑みで俺を見てきた。


「いえ、なにもありません。」

「冗談よ!春木君に1つ頼みがあるのよ。」


 先生がそう言うとファイルから1枚プリントを取り出した。


 なんだ?これ。すごく昼休みのデジャブを感じてしまう。俺嫌だよ。職員室で数学の問題を解くなんて。


「はい!このプリントを夏川君の家まで届けてほしいの。」


 そう言って先生は俺にプリントを差し出してきた。


 なんだ。夏川へのお届け物か。


「分かりました。」


 俺はそう言ってプリントを受け取った。


「ありがとう。こういうことって誰にでも頼めることじゃないからすごく助かるわ。普段なら秋元さんに頼んでいるのだけどもう帰ってしまったみたいで。」


「問題ないですよ。」


 俺がそういうと、野坂先生は安堵した様子で話してきた。


「いろいろと繊細な問題だけど夏川君と仲良くしてあげてね。」

「はい!」


 野坂先生にそう言って俺は職員室を出た。先生に渡されたプリントを夏川の家に届けるために俺は夏川の家に行くことになった。


 野坂先生、ちゃんと生徒のことを思って考えてからているんだな。

俺はそんなことを考えながら、下駄箱の方に向かった。

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