第11話

 チャイムを鳴らすと、家のドアが開き出てきたのは小学生の男の子だった。


「どちら様ですか?」


 男の子はそう言って俺に話しかけてきた。


 見た感じは小学校高学年ぐらい雰囲気だった。


 俺は、警戒されないように片膝を地面につけ、目線を男の子に合わせて話しかけた。


「こんにちは。はじめまして。夏川君と同じ高校に通っている春木桜って言います!

君は夏川君の弟かな?」


 俺は優しく語りかけた。

すると後ろから委員長が俺に話しかけてきた。


「この子も同じ夏川なんだから、そこは聡太って言わないとダメでしょ。」

「あっ!香恋お姉ちゃん!こんにちは。今日はどうしたの?」


 顔見知りの委員長を見てホッとしたのか、男の子は嬉しそうにそう言った。


「急にごめんね。この前聡太に渡したプリントの中にこの春木君のプリントが紛れ込んでいたからそれを取りにきたのよ。」


 俺を指差しながら、委員長はそう言って説明した。


 てか、さっきから気になっていたけど夏川の名前、聡太って言うのかよ。

知らなかった…。


 すると男の子が俺に話しかけてきた。


「あの、夏川太一って言います。今日はわざわざお兄ちゃんのために来てくれてありがとうございます。」


 この子すごく礼儀正しいな。

最近の小学生はこんなにしっかりと挨拶できるのかよ。

俺が小学生の時だったら絶対出来なかったな。


 俺が1人で関心していると横から委員長が話しかけてきた。


「しっかりしているでしょ。まぁ、なんと言っても聡太の弟だから納得ね。」

「さっきから思っていたけど委員長、夏川の評価めっちゃ高くねぇか?俺まだ会ったことないから分からないけど。」


そんな話をしていると弟の太一君から案内があった。


「春木さん。お兄ちゃんの部屋は2階にあります。この階段を上がっていって下さい。」

「了解!ありがとな!」


 そう言って、夏川のいる2階に行くために階段を上がろうとすると委員長が話しかけてきた。


「悪いけど、私はここで待っているわ。2階に上がって右側の奥の部屋が夏川君の部屋だから、1人でも分かると思うわ。」

「え?せっかく来たんだから委員長も来たらいいじゃないか?」


 俺がそう言うと、委員長はバツが悪そうな顔になった。


「夏川君とは今は会いにくいのよ。」


 すごく訳ありな感じだったのでこれ以上言うのは野暮だと思い、俺は「分かった。」と言い夏川の部屋まで行った。


 というか、委員長、夏川君やら聡太やらいちいち呼び名を変えてなんなんだ?

俺はふとそんな疑問が頭によぎったが、今はそれより夏川の部屋に行くことを専念した。


 あった。ここか。よし!

俺は夏川の部屋をドアを3階ほどノックした。


「はじめまして!百合ヶ丘第三高校1年1組

春木桜です!夏川君居られますか?」


 俺は元気よく、ドア越しにいるであろう夏川に話しかけた。


「…そんな大きな声で言わなくて聞こえてるよ。」


 部屋から返事が返ってきた。

なんだかすごく大人びた感じのする声であった。


「そうか。今日いきなりきて悪いな!俺君の1つ後ろの席なんだよ。ずっと学校に来てないからまずは自己紹介をしようと思ったんだ!」

「…そう。君が春木君なんだね。」

「てか君は名前なんて言うの?」


 俺がそう言うと、ドア越しの彼からこう言われた。


「君、秋元から僕の名前を聞いてるよね?なんでわざわざそんなことを聞くの?」

「たしかに聞いてるけどまだ本人からは名前を聞いてないから聞いたんだよ。」

「…夏川聡太(なつかわ そうた)、これでいい?」

「おう!よろしくな!夏川!」



 これが俺と夏川のはじめての会話となった。

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