第10.5話

 先週の水曜日の夜に秋元からメッセージがきた。


「(秋元)春木桜君の解答用紙が入ってなかった?」


 入っていた。あの18点の解答用紙の名前の欄には春木桜と書かれていた。


 本人には悪いが少し解答用紙を眺めさせてもらったが点数はたしかに悪いが空白は一切なかった。

つまり彼は分からない問題も分からないなりに最後まで解いたということだ。


 僕はこういう泥臭い人間は嫌いじゃない。

むしろこの解答用紙を見たことで少し彼に好感を持ってしまった。


 だけど今の僕は普通の人と同じように学校生活を送ることはできない。


 昔の僕なら今のような不登校にならずに普通に学校に行って友達を作ってそれなりに楽しい高校生活を送っていたのかもしれない。


「まぁ、そんなことを考えたところで仕方ないか…。


 そして、ふとスマホを開いてみると秋元から30分前にメッセージが送られていた。


「(秋元)急で申し訳ないけど今から春木君と一緒にあなたの家に行って解答用紙を受け取りに行くわ。」


 え?今日来るの?

しかも30分前に送られているってことはそろそろ来てもおかしくない時間だ。


 急なことで僕は少し取り乱してしまった。


 それより、あの秋元が僕以外の人と仲良くなるなんて一体どんなやつなんだ。

あいつは相当気難しい人なのに。

てか秋元以外の人が家に来るなんて何年振りだ?

どうしよう…。家族と秋元以外の人とお話しをするのもすごく久しぶりだ。


 そんなことを考えていると家のチャイムが鳴った。


 この日僕の人生は大きく変わることになる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る