第8話
職員室を後にした俺たちは1組の教室で勉強をすることになった。
「それにしても意外だったよ。まさか委員長が勉強を教えるのを引き受けてくれるなんて。」
「あなた、前にも言われたけどその委員長って呼び方やめてもらえない?気に入らないんだけど。」
「なんでだ?なんかイメージと合ってる感じするんだけどな!」
「もういいわ、好きにして。それより時間がもったいないわ。すぐに始めましょう。」
俺は自分の席に座り、委員長は俺の隣りの冬月の席に座った。
勉強を教えるのは1時間の約束なのでとりあえず1番悪かった数学を教えてもらうことにした。
「本当に18点なのね。こんなひどい解答用紙は初めて見たわ。」
「面目ないです。勉強はちょっと苦手なんですよ。」
「これはちょっとなんて問題じゃないけど、とりあえず今日は数学を教えるけど一応国語と英語も見せてもらってもいいかしら?」
「分かった。」
俺はそう言って国語と英語の解答用紙も渡した。
「国語…25点…。」
「いやー、国語も苦手なんですよ!」
俺は開き直って、陽気に言った。
「はぁ…、数学だけ異常にできないってオチを期待していたけどどうやらどの科目も苦手のようね。」
「いや、本当にすいません。」
「英語は55点なのね。もし私がこんな点数を取ってしまったら絶望して家に塞ぎ込んでしまうけどあなたからしたらこれは高得点じゃないかしら?」
「いや、どうしてそんな皮肉げに言うんだよ!
そこは頑張ったねって褒めてもいいじゃん!」
「55点は褒められる点数ではないわ。」
まさかのマジレスに俺は言葉を失ってしまった。
というか俺この人の教え方についていけるかな?めっちゃ不安になってきた。
「まぁ、おしゃべりはこれくらいにして勉強をしましょう。あなたは自分の解答用紙と解説プリントを出して。」
「了解です!委員長先生!」
「あなた、ふざけているのかしら?」
「いえ!至極真っ当です!」
「はぁ…、一応参考程度に私の解答用紙も出しとくわ。」
委員長はそう言って鞄から自身の数学のテストの解答用紙を出した。
数学 98点
え?なんだよこれ。めちゃくちゃ高得点じゃねぇか。ここまできたら俺とは逆でどこを間違えたかが気になるな。
…なんだかそんなこと自分で考えるなんて悲しくなってきたな。
「なぁ?委員長。数学の点数が良かったのは分かったんだけど国語と英語はどうだったんだ?」
俺は純粋に気になり、委員長にそう聞いてみた。
「別に私の点数を見てあなたの成績が上がるわけではないけど見せてあげるわ。」
そう言って委員長は俺に国語と英語の点数を見せてくれた。
国語 96点
英語 93点
こいつやっぱり本当に頭がいいんだな。
すごすぎる。
「点数は置いといて、あなたは英語が得意で数学が苦手だと解釈してもいいわね。」
「たしかに3科目の中なら英語が1番得意かもしれないな。」
「そう。私は正直英語に苦手意識があるから羨ましいわ。」
「そんなこと言いながら高得点を取っているじゃないか。なんだ?嫌味か?」
「別にそんなつもりで言ってはないわ。」
そんな感じで俺は1時間委員長に数学を教えてもらった。
委員長は思ってたより、優しく丁寧に教えてくれた。おかげで分からなかった問題が分かるようになってきたぜ。
「まぁ、今日はこんなところでいいと思うわ。あなた、私が思ってたより意外に物分かりがいいわね。」
「フフフ、これが俺の本来の実力だぜ!」
「だったら次のテストは最低でも90点は取れるわね?」
「すいません、嘘です。ごめんなさい。調子に乗りました。」
「急に態度が変わるわね。せっかく私が教えたのだから次はそれぐらいは取ってくれないと困るわ」
「まぁ、今日はありがとう。確か明日も見てくれるんだよな?」
「ええ。2日間、1時間の約束だから明日までは教えてあげるわ。そのかわり英語と国語の両方を明日教えるのは時間が足りないからどっちか1科目しか教えられないわ。」
そうだな。明日までで今日みたいに1時間ならどちらか1科目じゃないと無理だな。
正直どっちでもいいが英語なら国語よりはまだ点数を取れてるから楽かもな。
「分かった。じゃあ明日は英語を教えてもらってもいいか?」
「英語ね。分かったわ。それで残った国語はどうするつもりなの?まさかそのままほったらかしにするつもりではないでしょうね?」
委員長は鋭い眼力で俺に質問してきた。
てか怖いよ!委員長!なんちゅう顔してんだよ!
「えーと、国語は隣りの席の冬月にでも教えてもらうよ。あいつ国語が得意って言っていたし。」
「そう。その冬月さんって人も大変ね。国語25点の人に勉強を教えないといけないなんて。」
「おいっ!お前喧嘩売ってんのか?てかなんでそんな俺に委員長は勉強を教えるのを引き受けたんだ?」
「別に大したことではないわ。あなたには一応ストラップを見つけてもらった借りがあったからそれを返したかっただけよ。」
「俺は別にそんなつもりでストラップを見つけたわけじゃないけど、ありがとう!すごく助かったよ。」
1時間って言っていたけどだいぶ時間が経った感じがした。
「てか、今何時だ?」
俺はそう言って教室の時計を見た。
時刻は17時10分だった。
すると委員長は驚いたような顔をしてこっちを見て話しかけてきた。
「ちょっと待って。もうこんな時間なの?私今日は17時30分に行かないといけない場所があるのに…。まさかこんなに時間が経っていたなんて。」
「悪いな…。委員長、俺に勉強を教えていたせいで。今から行って間に合うのか?」
「ええ、だいぶギリギリになると思うけど急いで行ったら間に合うと思うわ。」
委員長は俺にそう言いながら、急いで机にある解答用紙などを鞄の中に片付けた。
「それじゃあ、私はもう行くけど、あなたは家に帰ったらもう一回私が教えたところを復習するのよ。分かったかしら?」
「了解です!」
本当はめんどくさいからしたくないけどやらないでもし次のテストで変な点数を取ったらなんて言われるか分からないから一応しとこう。
そして委員長は急いで教室から出て行ったのであった。
委員長がいなくなった教室で俺は1人取り残されてしまった。
「なんか、教室って誰もいないと寂しいな」
俺は1人残された教室でそんな独り言を呟いた。
だけど今日はすげー委員長と話したな。
無愛想で近寄りがたい人だと思ってたよりいたけど話してみたら意外に優しかったな。
「よし!俺も家に帰ったら今日教えてもらったところの復習でもするか!」
そう言って、俺は誰もいない静かな教室で帰り支度をするのであった。
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