第7話
実力テストの翌日、朝のホームルームの時間に採点された実力テストは返却された。
中学までの基礎を確かめる試験だったのでまる1時間使った解説などはなく、国語、英語、数学を一気に返され、詳しく解説されたプリントを各科目渡されるだけという簡略的な感じだった。
よし!俺は昨日やるべきことは全てやったぜ。例え高得点ではなかろうと恥じる事のない成績のはずだぜ!
俺は淡い期待を胸に先生から返却されたテストの点数を確認した。
国語 25点
数学 18点
英語 55点
どれも100点満点のテストである。
「なるほど。うん!勝負は時の運だ。今回は調子が悪かっただけだ!次は問題ない!切り替えていこう!」
テストの点数から目を逸らし、現実逃避をしていた俺に横からテストを覗き見してきた冬月が話しかけてきた。
「いいえ、春木君!これは調子どうこうの問題ではないですよ。ちゃんとテストの点数と向き合ってください。」
「ぐっ、そんなはっきり言わなくても…
もう少し優しい言葉をかけてくれたっていいじゃないか。」
「さすがにこの点数だと優しくする余裕がありません。」
「グハッ、冬月…今の一撃は…効いたぜ。」
俺と冬月がそんなたわいも無い会話をしていると野坂先生が教卓で説明を始めた。
「今回はテストはみんなの基礎力を確かめる試験だったから、なんの連絡もなく、抜き打ちで実施させてもらったわ。みんな、受験が終わって少し気が抜けてる時期だから今回の試験で思ったより悪かった人はこの先、気合いを入れて勉強しないとダメよ!」
野坂先生はいつものように笑顔で淡々と説明をしていた。
まぁ、俺も少しは気合いを入れ直せということか。
「ちなみに今回のテストは成績に反映されないけどあくまで基礎を確かめる試験だったから最低でも70点以上は取れるように作られていたはずよ。だから正直50点を下回ってしまった人は本当に気をつけないとこれからの勉強についていけないわよ。」
え?マジで?俺3教科全部70点行かなかったんだけど。それどころか2教科50点を下回っているんだけど…。
「まぁ、でも!みんなはまだ1年生だからまだまだこれからよ!いくらでも挽回ができるわ!点数が悪かった人もあまり落ち込まずに切り替えていくのよ!それじゃあ、ホームルームはおしまい!みんな今日も一日頑張ってね!」
野坂先生はそう言って、ホームルームは終わった。
先生の言うとおりだな!あまり気負わずに切り替えていくぜ!
俺が心を切り替え、1限目の準備をしようとした時、教室から出ようとした野坂先生が最後にこう言い残した。
「あ!それと春木君!先生今日一日時間が取れないから申し訳ないんだけど放課後になったらちょっと職員室にきてね!」
先生はそう言い残し、教室から出て行った。
え?俺なんかしたか?
職員室に呼ばれる心当たりが一切なかったので俺は唖然とするのであった。
〜〜〜〜
放課後、俺は先生に言われたとおり職員室に行った。
「あっ!春木君来てくれたわね!急に呼び出して悪いわね!でもどうしても今回、春木君と話し合いたかったの。」
「なんでしょうか?先生!」
「春木君、あなた今回のテスト一体何があったの?あなたぶっちぎりでクラス最下位だったわよ。」
「そ、それは…1組は大変優秀人達が集まったクラスなんですね!」
「いや!他のクラスもみんなある程度はできていたわよ!」
「マジか……。」
「こんな事言いたくないけど春木君!あなたこのままこんな点数をとり続けていたら留年してしまうわよ!」
マジかよ!まあ確かに我ながらこれはひどいな。
「うーん、誰か仲のいい人がいるならその人に勉強を教えてもらう手があるわね!」
先生は急にそんな提案をしてきた。
「春木君だったら、冬月さんと同じ委員会だし、席も近くで仲も良さそうだから勉強を教えてもらうことはできないかしら。」
「え?冬月って頭いいんですか?」
俺は思ったことをそのまま先生に質問をした。すると先生の驚いた感じで返答をしてきた。
「何を言ってるの!冬月さん、今回のテストでクラス順位は2位で学年順位は6位だったのよ!」
「マジか!?仲間だと思っていたのに…」
「ちなみに春木君、あなたの学年順位は何位だったか知りたい?」
野坂先生は意地悪そうな笑みを浮かべてそう言ってきた。
「遠慮しときます…。」
これ以上聞くともう立ち直ることができなくなる気がする。
その瞬間、職員室のドアが開き1人の生徒が入ってきた。
「失礼します。野坂先生はおられますか?」
「あら?秋元さんどうしたの?」
職員室に入ってきたのは秋元さんだった。
「今回の実力テストの問題用紙と解説プリントを1枚ずつ貰っても構いませんか?」
「別にいいけど、どうして?」
「夏川君の分です。テストの時も休んでいたので」
「分かったわ。そう言うことなら用意するわ。ちょっと待ってね。」
先生は問題用紙と解説プリントを取りに行くために席をたった。
「それで、春木君だったかしら?あなたはどうして職員室にいるの?」
秋元さんは俺に話しかけてきた。
「別に大したことではないぜ!ちょっと人生の壁にぶち当たっているだけだぜ」
「何を言っているのか分からないけど、大した事のない理由で職員室にいると言うことは分かったわ。」
「ちょ、待てよ!どうして今の流れでそんな辛辣な言葉になるんだよ。」
そんな感じで秋元さんと談笑(?)をしていると野坂先生がきた。
「お待たせ!って2人とも先生が思ってたより仲がいいのね!」
あん?先生今の流れでどうしてそんな解釈ができるんだ?
その瞬間、先生は俺の予想だにしない言葉をかけてきた。
「そうだ!2人ともそんなに仲がいいのなら春木君!秋元さんに勉強を見てもらったらいいんじゃないの?」
すると一瞬で秋元さんは返事を返した。
「先生には悪いですがお断りさせていただきます。」
「待てよ!断るの速すぎるだろ!」
「どうして私があなたの勉強を見ないといけないの?」
すると先生が秋元さんに話しかけた。
「秋元さん!先生からもお願い!春木君、今回のテストめちゃくちゃ信じられないくらい点数が悪かったの。」
「先生!それはさすがに言い過ぎですよ!
ちょっと悪かっただけじゃないですか?」
「春木君のはちょっとなんてレベルじゃないわ!」
すると秋元さんが俺に話しかけてきた。
「ちなみにどの科目が1番悪かったの?」
「数学の18点です。」
「え?……18点…、信じられない…。」
秋元さんはこの世の物とは思えないような顔で俺を見てきた。
その顔はやめてくれ、本気で傷つくぜ!
「あなた、どうやってこの高校に入学したの?」
「先生もそれは疑問に思ったわ。」
2人とも言い過ぎだろ!
「2人してさすがに言い過ぎですよ!今回はたまたま悪かっただけですよ!」
「その減らず口は少しでもまともな点数を取ってから言いなさい!」
グハッ、俺のライフポイントはもうゼロだぜ。
「はぁ、仕方ないわね。2日間、放課後1時間ぐらいなら勉強を見てもいいですよ」
「本当!ありがとう!秋元さん!ほら!春木君もお礼を言いなさい!」
この先生はなんだよ!俺のお母さんか?
てか意外だな。あの秋元さんが勉強を見てくれるとは。
「そう言うことだから、今から1時間勉強するわよ。」
「え?今日から?マジで?いきなりすぎるだろ。」
「あなた、教えを乞う側の人間なのによくそんな贅沢なことを言えるわね」
「は、はい。すいません。宜しくお願いします。」
秋元さんのなんとも言えない気迫に俺は圧倒されてしまった。
てかこれから俺秋元さんと勉強しないといけないのかよ。
言葉にできない不安を抱えながら、俺は秋元さんと一緒に職員室を出るのであった。
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