第5.5話

 目を覚ますと時刻は17時30分だった。

就寝した時間は9時ぐらいだったから妥当な時間である。こんな時間に起きたので今日も夜通し起きていることになるだろう。


「やることもないし、気になっていたアニメでも見るとするか」


 机に置いているスマホを手に取って、画面を開いたらLINEの通知が来ていた。


「またお母さん帰る時間が遅くなったのかな?」


 LINEの通知を確認したらお母さんではなく知り合いからの連絡だった。


「秋元からか」


「(秋元)夏川君の分の高校の教科書をもらってきたので、家に届けにきたけど夏川君出て来てくれなかったから太一君に渡しときました。」



 LINEの連絡にはそう書かれていた。


「毎度毎度どうして無駄なお節介をするのか僕には分からないな。」


 僕はLINEの返信をせずにアプリを閉じ、スマホを机に置いた。


 秋元香恋は幼稚園からの幼馴染である。

幼稚園、小学校の頃はずっと何をやるにしても一緒だった。

中学になってからも、小学校の頃ほどではないが1年生の時はよく一緒に勉強したり、登下校をしたものだった。



「今となっては昔の話だな。もうあの頃のようにはいかないんだよ。」



 部屋のドアを開けて外側のドアノブを見てみると教科書の入った紙袋が掛けられていた。

おそらく弟の太一が秋元から教科書を預かって僕に渡そうとしたが寝ていて渡せられなかったのでそのままドアノブに掛けていたのだろう。


 僕はドアノブに掛けられていた紙袋を手に取った。


「重たいな」


 紙袋から教科書を取り出し、机に並べてみた。全部で11冊入っていた。


 情けさや疎ましさを感じながらもほんの少しだけ嬉しくそして申し訳ない気持ちになった。


 僕は複雑な心境のなか届けられた教科書を眺めるのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る