第25話

「あぁ〜、めっちゃ疲れた〜」


 今日は5月19日、俺たちにとっては高校生活初の中間テストの1日目だ。

科目は12科目で3科目ずつに分けて4日間で実施される。

1日目は数学1、数学A、物理基礎と言う理系科目が苦手な人を殺しに来ているような日程だった。

 まぁ、一応分かるところはちゃん解いたしできるだけの事はしただろ。


「テストの問題はちゃんと解けたのかしら?」


 そう言いながら委員長が俺に話しかけてきた。


「まあまあかな」

「なるほど。出来なかったのね」


 おい!

なんでそうなる!?


「いや待てよ!なんで今の返事でそう解釈した?」


 俺がそう言うと、委員長はクスッと表情を和らげた。


「冗談よ。昨日教えた限りでは今回はちゃんと理解できてる感じだったわ。」

「マジか!?」

「だけどテストはまだ3日間続くのよ。気を抜かないことね」


 委員長にはこのテスト週間に入ってから結構な頻度で勉強を見てもらった。

本当に感謝している。

もし今回1人で勉強していたら間違いなく理解科目は全滅だったな。


「それと次のテストまでには幸運にも土日を挟んでいるわ。」

「そうだな」


 今日は金曜日だからな。

来週の月曜日、火曜日、水曜日の3連ちゃんで今回のテストは終了だな。


「あなた、この土日は1人で勉強するつもりかしら?」

「ああ、苦手な計算系は今日で全部終わったからな。あとは自分でなんとかなるさ」


 俺がそう言うと、委員長は目つきを鋭くした。


「随分と楽観的な考えね。数学や物理は群を抜いて酷かったけどあなたの場合他の科目だって高得点を取れるほどではないわよ。」

「たしかに高得点はむずいな…」


 自分でこんなことを認めるなんて…、なんだか悲しくなってきた。

 てか委員長どうした?

急に物言いが厳しくなったぞ。


「だ、だからね…そ、その…」


 委員長は急に少し頬を赤らめながら俺に何かを伝えようとしている。


「か、感謝しなさい!今回のテスト勉強、私はもうほとんど仕上がっているから余裕があるのよ。だからもし、あなたが希望するならこの土日も勉強を見てあげてもいいわよ!」


 え?マジで?

その誘い普通にありがたい。

だけど流石にこれは頼りすぎだな。


「いや、それは悪いな」

「え…、どう言うことよ!」


 俺がそう言うと、委員長は困ったような様子で俺に質問してくる。


「だって、俺、今回委員長に頼ってばっかりだからな。残りの科目ぐらいは自分の力で頑張った方がいい気がするんだ。」


 俺が理由を説明すると委員長は少しホッとした様子になった。


「何言っているのよ。あなたはそんな誰かに気を使うほど余裕があるわけではないでしょ」

「うぅ…」


 ぐうの音も出ないほどの正論を言われてしまった。


「香恋、そんな誤解を招く言い方ではダメですよ。素直に一緒に勉強しようって言えばいいんですよ。」


 そう言って委員長の後ろから冬月が会話に入ってきた。


「澪!私は別にそんなつもりで言ってるわけではないわ」


 委員長はそう言うがどうやら冬月は委員長の真意を見抜いているようだ。

それに観念した委員長は俺の方を見て照れ隠しをしながら話しかけてきた。


「あなたには昨日香奈美のことで迷惑をかけたからそのお詫びとして今回のテストの手助けをしたいのよ。」


 なるほど。そういうことなら甘えさせてもらおうかな。正直誰かに教えてもらった方が捗るしな。


「たしかに1人で勉強するより教えてもらった方が安心だな。よろしく頼むよ」

「ええ、私が教えるからには今までみたいな成績は許さないわよ」

「…頑張ります」



 委員長と冬月と俺の3人の勉強会は土日の2日間委員長の家ですることになった。

3人で下駄箱のところまで行って話を続ける。


「春木君、これから香恋とどこかでお茶する予定なのですが春木君もどうですか?」

「それ、俺も一緒にいていいのか?」


 せっかく冬月と委員長が2人でお茶をするというのに俺が入ってもいいのだろうか。


「私は構わないわよ」


 意外にも委員長も問題ないようだ。


 マジか…、めっちゃ行きたいな。

だけど…今日は無理だな。


「お誘いは嬉しいけど今日は用事があるんだ。悪いな」

「そうですか。」

「それなら仕方ないわね。」


 校門前に出て俺は2人と別れ、ある場所に向かった。


〜〜〜〜


 17時50分

 特にやることがなかった僕は学校から届けてもらった数学のプリントを解いていた。

分からないところがあれば教科書を見て解法を確認してまた解くだけである。

勉強をしていると家のチャイムがなった。

家には僕の他に太一がいるから問題はないだろう。

しばらくすると僕の部屋のドアをノックして太一が話しかけてくる。


「兄ちゃん、春木さんが来たよ。」


 春木君こんな時間に来るなんて珍しいな。

いつもはもう少し早い時間に来るんだけどな。


「分かった。ありがとう」


 僕は太一にお礼を行って春木君に部屋の前まで来てもらうように頼んだ。


「よ!元気か?夏川」


 そう言って、春木君は元気よく話しかけてきた。


 







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