第32話
今日は久しぶりの練習がオフの日です。
僕は待ち合わせ場所で香恋が来るのを待っていた。
13時にこの駅前で集合する予定のはずだがもう時刻は13時20分だ。
僕は10分前に来ていたから合計で30分もここに立っていることになる。
あと5分経っても来なかったら電話するか。
そう考えながら、僕はスマホをいじりながら待っていた。
すると目の前から小走りでこちらに向かっている香恋の姿が見えた。
「ごめんなさい。家で少し香奈美とトラブルになってしまって遅れてしまったわ。」
香恋を息を整えながら、遅れて来た訳を説明した。
「いや、別に大丈夫だよ。僕も家を出るのが少し遅れたから今きたところだし。」
僕はそう言って、香恋をフォローした。
本当はけっこう早くに来ていたけど香恋はど真面目だから30分ちかく待っていたなんて言ったら気にしてしまうだろう。
「そう…、ならよかったわ。」
香恋はそう答えて、僕の方を見ためながら話しかけてくる。
「それで今日はどこに行くつもりかしら?場所とかは聡太に任せているから聡太の行きたい場所でいいわよ。」
「うん!行くところはもう決めているよ。ここだよ!」
僕はそう言って、自分のスマホの画面を香恋に見せる。
スマホの画面には香恋が来るさっきまで調べていた記事が表示されている。
「これって今年できたばっかりの大型のショッピングモールよね?」
「そう!前から気になっていたんだけど中学生になってから部活とかで忙しくて行く機会がなかったから。」
「分かったわ。行きましょう。」
香恋はすぐに了承し、僕たちはショッピングモールに向かった。
モールに向かっている最中、僕たちは軽い雑談をした。
「聡太は最近どうなの?」
「どうって何が?」
「勉強や部活動のことよ!相変わらず察しが悪いわね」
「別にそこまで言わなくてもいいでしょ。う〜ん、けどどうかな?これって言って変わったことはないかな」
「そう…」
質問してきたわりには反応が薄かった。
「そういう香恋はどうなの?」
僕は会話が途切れないように同じ質問をした。
「私もこれと言って変化はないわ。相変わらず勉強をする毎日よ。」
「たしかに香恋はずっと勉強を頑張っているもんね。」
「それでもずっと成績はあなたより下よ。」
香恋はそう言いながらジト目でこちらを見てくる。
「だけどこれからどうなるかは分からないよ。2年生になったら香恋の方が僕より成績が良くなるかもしれないし。」
「そうなるようにこれからも努力を続けるわ」
その後も僕たちは他愛のない会話を続けるのであった。
〜〜〜〜
歩いて数十分やっとショッピングモールに着いた。
駅からだとまあまあな距離だった。
「駅からこんなに離れているなら直接モールに集合した方が良かったんじゃないの?」
香恋は少し疲れた様子でこちらを見てくる。
「これぐらいで疲れるなんて香恋運動不足じゃないの?」
僕は思ったことをそのまま口にすると背筋が凍りつくほどの鋭い眼光をこちらを見てくる。
「何か言ったかしら?」
「いいえ、なんでもありません!」
やばい。香恋が不機嫌になってしまった。
失言だったなぁ。これは…。
だけど香恋は少し極端なところがある。
中学に入ってからこれまでにないほど勉強を頑張るようになったけどその代償に部活動はしてないし、学校が終わってもずっと図書室や家にこもって勉強をしている。
こんなこと僕が言えることではないけど中学生や高校生の若い時はいろんなことに挑戦した方がいいと思っている。
もちろん勉強を頑張ることは良いことだ。
だけどそれ以外のことでも学べることはいくらでもある。
部活動や委員会活動、クラスメイトとの交流これらの経験が大人になってからの良い思い出になると思うけどそんなことを同級生の僕に言われてもお節介なだけかな。
まぁ、本当のところは久しぶりに香恋とこうやってどこかに行きたかっただけなんだけどね。
ただ目的地に集合するだけじゃなくてさっきみたいななんてことのない会話をしながら2人で行きたかっただけだ。
「ごめんごめん。本音を言うと久しぶりに香恋と話しながら目的地に向かいたかっただけなんだよ。」
少し照れくさかったが本当のことを言うことにした。
「どう言う意味?」
香恋は意味が分からない様子だった。
「ほら!小学校の時はよく2人で歩いて遊びに行ったりしてたじゃん!最近はそういう機会がなかったから久しぶりにしたかったというか…」
なんだか恥ずかしくなってきた。
「そう…。まぁいいわ。」
香恋はそう言って、モールの中に入るため入口の方に行った。
すぐに顔を背けられたたのではっきり見えなかったが少し顔が赤くなっているように見えた。
モールの中に入ると、あまりの広さに驚いてしまった。
今まで何回もいろんなモールには行ったけどこのモールはレベルが違った。
「すげ。めっちゃ広いし、外見も大きな。」
「ええ、ネットで見た時から思っていたけど実際に行ってみるとなかなかの規模ね。」
このショッピングモールは今年の4月にオープンされ、数百種類の専門店や大勢の人々で賑わっている。
「とりあえず、適当にまわろうか。」
「そうね」
香恋はいつものような口調で話すが、どこかテンションが上がっているように見えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます