物語のごく初期は本筋の展開よりも回想や泣き言が目立つので、「まさかこれがずっと続くのか?」と思って一度は離脱したのですが、改めて挑戦してみるとそこまでではありませんでした。ここさえ耐えれば大丈夫です。
悲劇的な世界だと言われていますが、私には王道的な世界観と王道的な主人公に見えます。ただ、重要なのは悲劇の量ではありません。悲劇をどう照らすか、その描き方が他作品との差別化を生んでいます。
主人公本人は平気でも、周囲の人物が苦しむ姿にストレスを感じる読者もいるでしょう。しかし、誰しも「頭では理解できても、感情では『はい、わかりました』と言えない」経験があるはずで、これはその極端な例と言えるなら、むしろ共感しやすくなり、この作品の入り口は低くなると思います。
主人公はあらかじめ設定された悲劇だけでなく、人間の悪意に対しても怒りを抱いています。これは妥協し切り捨て前へ進むことを重視する、いわゆる“大人の”主人公像とは異なる理想主義者として特徴づけられるでしょう。
悲劇的なストーリーを書いた作者と、その悲劇を実行した人物のどちらにより大きな責任があるのか、どこまでが自由意志なのかを考えさせられます。たとえば主人公が原作の世界だと自覚したのは17歳で、それ以前はただ異世界を満喫して生きていました。つまり過程がどうであれ、原作と同じ状況に“結果として”到達したわけです。
このように、いろいろと考えさせられる、珍しく欠点の少ない良作だと思います。
ただ、その数少ない欠点として、たびたび気になる点があります。それは主人公が神の存在を確定したうえで、その神を原作者と同一視し、罵倒していることです。
もし神がいないなら、この世界が原作と同じなのは単なる偶然ですし、神がいて世界を創造したとしても、それが作者本人である保証はありません。確率的にはむしろ“読者”である可能性のほうが高いでしょう。したがって作者を罵倒するのは根拠不足です。
あるいは「神がその作品を見て世界を創ったのだから作者にも責任がある」と言えるかもしれませんが、それは2Dの人権問題と同じだと思います。もし責任があるというなら、全ての創作者は、どこかの神が自作の悲劇をもとに世界を造る可能性を考慮して創作しなければならず、そんなのは馬鹿げています。まして神なら他者の思考を読むこともできるでしょうから、妄想レベルでも悲劇を思い浮かべてはいけないという話になってしまいます。
いつも楽しく拝読しております。
昨今、ネット小説が溢れかえっている中で、本作を見つけたときは久々に胸が躍りました。
主人公が魅力的なのは勿論のこと、登場人物達がただの舞台装置ではなく生き生きと(病み病みと?)している様は、時間を忘れて読んでしまいます。
更新頻度によって読みたい欲を限界まで高め、読者の頭の中をウォルカで一杯にさせるのは作者様の思惑なのでしょうか。
まんまとハマった私はただただ首を長くして、今か今かと更新を待ち続けます。
これからもこの物語の行先を、出来るだけ長く見ていられますように。
作者様におかれましては、夏の疲れが出やすい時期ですので、どうぞご自愛のうえお過ごしください。
~他作品との違いや独自性
ただの異世界転生ものではなく、バットエンド嫌いな主人公が、それを回避するために必死に行動する物語。代償や犠牲の描写が重く、単純なハッピーエンドでは終わらない点が独特です。
~キャラクターの魅力
主人公は決して逃げず、全滅回避のために体を張る覚悟を持つ。一方、仲間たちは強い依存や執着を抱き、パーティ内の人間関係が複雑でリアル。感情の揺れや葛藤が丁寧に描かれており、キャラクターの心の深みが魅力です。
~世界観や設定の面白さ
主人公が“既知のバッドエンド漫画の世界”に転生しているという設定が面白く、知識を活かした行動が物語に緊張感を与えています。代償の大きさや心理的負荷まで描かれたダークファンタジーとしての世界観も独自性があります。
~読みやすさ
セリフと説明/描写のバランスが良く、スムーズに読めると思います!